思えば、随分と長い間B'zを聴き続けているものだ。
長く聴いているからこそ、
「この曲が出た当時はまだまだ自分自身が子どもだったばっかりに、歌詞の意味をよく理解できていなかったけど
今になって聴くとなんて味わい深いことを言っているのだろう」
と思うような”再発見”とも言うべきものがあり、その感慨深さは得も言われぬものだ。

この記事では、
「この歌詞、改めてじっくり見てみると言葉選びとか独特で、これがB'zらしさってやつのひとつなんだろうなぁ」
と思うような部分を抜粋してあーだこーだ言っていこうと思う。
いずれの部分もメロディ含めてキャッチーなので、B'zに詳しくない方でも歌詞で「ふふっ面白いね」と思ったら
ぜひ楽曲自体に触れてみてほしい。(例えば去年の紅白で『ultra soul』見てB'zを意識し始めた人とかさ!)


(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)


<シングル>

『LADY-GO-ROUND』
こひしかるべき round, round, round...
わがなみだかな round, round, round...
こひしかるべき round, round, round...
かみのまにまに round, round, round...

サビが終わったのかな? と思いきや唐突な古語。
しかも、「女をとっかえひっかえする」みたいなコンセプトの歌でこの古語というセンスよ。
すごくバブリーな恋愛観の歌詞なのに平安時代。
百人一首的には
恋しかるべき…68番 三条院「心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな」
我が涙かな…86番 西行法師「なげけとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな」
神のまにまに…24番 菅原道真「このたびは ぬさもとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに」
で出てくる言い回し。
百人一首から句を取ってくれば、自ずと5もしくは7音節になるので現代楽曲においても
歌詞で使いやすいとは思う。(私もやったことあるし)


・『LADY-GO-ROUND』のカップリング『Love&Chain』
つのる想いに演技やくを取り違えた 男のキスは多すぎて
あきた女にケリをつけられる 不意をつかれて
(略)
Love & Chain 今ごろ気づいたよ
やさしく縛るのも Love & Free

一方、同じシングルに収録されているカップリング曲のほうでは、
「恋人に対して放任主義すぎた男の反省文」みたいな歌詞が読めるから温度差で風邪引きそう。
この2曲は、3rdアルバム『BREAK THROUGH』にも収録されている。
私個人は、曲として『Love&Chain』の方が好みかもしれない。

さらに、この曲には歌詞カードには書かれていない謎のセリフパートがある。
私の聞き取りでは以下の通り。
女と男が出会ったときに、愛する役と愛される役は決まっている。
それを忘れて過剰に愛を注いだり欲しがったりするとその関係は早く終わることもある。
(そして)愛するというのは信じる(という)ことであっても相手の全てに寛容であるということではない。
束縛された時に感じる愛も(が?)ある。

急にこうやってブツブツ言い出すパートはB'zにはよくある。
ちなみに、歌詞の()付きの部分は、シングル『LADY-GO-ROUND』のカップリングやアルバム『BREAK THROUGH』収録バージョンと、
ミニアルバム『MARS』収録の英語版である『Love&Chain-Godzilla Style-』での差分に当たる。
耳で聞き取ろうとすると、-Godzilla Style-が最も聞き取りやすい。

具体的な違いは以下のような感じ
シングルと『BREAK THROUGH』の日本語版『Love&Chain』の場合
そして愛するというのは信じることであっても相手の全てに寛容であるということではない。

『MARS』収録の-Godzilla Style-の場合
愛するというのは信じるということであっても相手の全てに寛容であるということではない。



『BE THERE』
楽し哀しく歌って踊ってみんな
まとめて寂しがり屋

このへんの歌詞から、本格的な”稲葉節”が滲み出始めたのかもしれない。
たのしかなしくうたっておどって
みんなまとめてさびしがりや

……改めてすごい。なかなかこんなこと書けない。
この曲はサビのメロディとハーモニーが絶品。


・『BE THERE』のカップリング『星降る夜に騒ごう』
傷つくためだけに 恋するんじゃない
別れるためだけに 出逢うわけでもない
僕ら限られた時間をそれぞれ預かってるから
一秒も無駄にせず楽しもう Now come on baby yeah yeah

まず、この『BE THERE』というシングルが名盤であることは言わずもがなである。
「時間を預かっている」だから「楽しもう」って、すごい。
それから、「人と人との縁」についてとにかくさまざまな言い方で何度も歌詞にしていて
これもそのひとつだと思う。この先にも沢山出てくる。
ショーウィンド 映ってる君はMadonna 僕は Superman

というところもまた趣がある。
このマドンナとスーパーマンの部分には、時代によって異なる人物像が当てはめられる部分でもあるから。


『太陽のKomachi Angel』
あの娘は 太陽の Komachi Angel !
やや乱れて Yo! say, yeah yeah !
いざ今宵酔わん I love you, my Angel !
理屈ぬきで Now we can say yeah, yeah !

このサビすごすぎる。
太陽の? Komachi!? A N G E L!?!?
何を言っているんだ?
「やや乱れて」から「Yo! Say」に繋がるところとか、そこから更に「いざ今宵酔わん」と来るあたりは
超展開すぎでは??
この世にこれを書ける人間は稲葉浩志氏しかいなかったと、今では断言できる。
この楽曲リリース時にB'zを知ったうちの父親も当時
「太陽の小町エンジェルだなんて、変わった歌詞だねぇ」
と言っていた。
え……本当にそうだわ……。
(なお、父はラジオで流れたのをカセットに録音してトラック用のカードにタイトルを手書きしていたんだけど、
耳から入る情報でタイトルを書くので「太陽の小町エンジェル」と書いていたと思う。
Komachi Angelだとは思わないわな。)

物を沢山知らないからこそ、「何が変わっていて、何が変わっていないか」という判断基準を持たない子どもだったけど
今ならこれが「独特」であることがわかる。
以前、「B'zの歌詞の一部で曲を特定する」という遊びをしたことがあるんだけど、
元々これを生放送でやっていて、コメントで「太陽のコマチエンジェルが出てくるやつ」って言われて笑ったことがある。
遠回しにせい!w
(それが元でこのハッシュタグを作ったのだ)
【B'z】#漢字三文字でBzのこの曲なーんだ【謎出題】というまとめもある。


『Easy Come, Easy Go!』
昔 卒業の寄せ書きに 書いたことのあるクサイ言葉
『逆境にくじけるな』と 今自分に言い聞かせて
(略)
生涯 最愛のものを手に入れるまで
晴天ばかりは続かない……体が気づいてる
(略)
まだまだまだ 盛り沢山LIFE

卒業の寄せ書きに書いたことのあるクサイ言葉は、「作詞者本人の実体験」であるというところも含めて味わいぶけぇ。
それから、タイトルの「Easy come, easy go」のように諺や慣用表現なんかを取り込むのもうまいと思う。
この曲と出会った中学生の頃は、「Easy come, easy go」のニュアンスがわからなかったけど、
「簡単に手に入るようなものは、喪失も容易である」ということを示しているとわかると
Oh...ますます味わいぶけぇ歌だ……。
このへんから、作詞者である稲葉さんの“人生観”が滲み出ている歌詞が増えてだいぶ面白くなってくるとも言える。
ラブソングも、わかる感じがするのからわからない感じがするものまでバリエーション豊かだし。
それに、「盛り沢山ライフ」っていう言い回しがまたすごいよ……。


・『愛しい人よGood Night』のカップリング『GUITAR KIDS PHAPSODY』
Hold On 捨てきれない情熱を
Hold On 抱きしめたまま
Hold On 受験にぶつかってた Seventeen
Hold On ホンネとタテマエのクロスロード
Hold On 人生はパズル
Hold On 迷いながらもくぐったキャンパスゲート

稲葉さんは横浜国立大卒で、数学教師の教職免許を持っている。
そのバックグラウンドを思うと、「音楽の道にも進んでみたいと迷いながらも大学進学した」みたいな
作詞者本人の人生経験がオーバーラップしてくる感じの歌詞だと感じられてまた面白い。
すべてがそうやって書かれたものじゃないとしても、「経験あってこそ、出てきた言葉なのだろう」と思う部分は色々ある。


『LADY NAVIGATION』
LADY NAVIGATION さあ行こう!
僕らの目覚まし人
貴女は貴女の 僕は僕の地図を見よう
(略)
艷やかな口唇から
こぼれる言葉は すべて貴女だけの詩(ポエム)

「目覚ましびと」って、五輪真弓の『恋人よ』で「マラソンびと」というのが出てきて以来の新人類生み出したのでは!?
歌として聴くと「目覚ましBEAT」にも聴こえるところが面白いけど。
シングルA面らしいアップテンポでキャッチーなポップスで、かなりファンも増えた瞬間だったと思う。
CMタイアップしていたし。
ラブソングというより、女性への応援歌みたいにも読める歌詞なのも良いところだと思う。
こぼれる言葉はポエム、流れる涙はパールだなんてオシャレな考え方だ。

まるで「Y・M・C・A!」とでも言うかのように、NAVIGATIONを
エヌエーヴィアイジーエーティ!アイオーエヌ!
と読んでサビを締めるところも気持ちいい。


・『LADY NAVIGATION』のカップリング『Pleasure '91 -人生の快楽-』
あいつもとうとう親父になった土曜日の夜 電話越しに
おめでとう言いながら 時間の流れに何故か口唇噛んだ
(略)
「もし生まれ変わったら」なんて
目を輝かせて言ってたくない
勝手知ったる少ない仲間と 敵だ味方だと騒いでる
(略)
くだらなかったあの頃に 戻りたい 戻りたくない
恐いものはありますか? 守るものはありますか?

すべてが“リアル”で一定の年代の大人からすると「俺の話してる?」ってなるくらい刺さってくる歌詞。
こういう「まるで自分か誰かの実体験をそのまま書いたような歌詞」がよくあるんだけど、
その生活感みたいなのがB'zらしさでもあると思う。
リリース当時は自分が中学生だったために
「自分も大人になったらこういう感覚をいだくことがあるのかもしれないけど、
今は実感としてはわからないな」
と思っていた。
なかなかこういう生活感ある歌詞を書くポップシンガーはいない……。
70年代フォークソングとかの方がそういう方向性の歌多くて、現代で探すのは難しい気がする。
そしてカップリングでこの“生活感”の火力を出してくるのがB'zの恐ろしいところだと思う。
いっそカップリングやアルバム曲の方が生活感は強いからな。(やっぱシングルA面じゃやりにくいのかなw)
恐いものはありますか? ……って強いて言えばB'zのカップリング曲の歌詞の火力が恐いって話なんだよな。
のちに作られた『Pleasure '98 〜人生の快楽〜』は楽曲のリアレンジと歌詞のリライトがされているのでこれもアルバム編にて後述する。
ちなみに『Pleasure 2008』もある。


『ALONE』
いつか見た空が僕の心を帰すよ どこかに
(略)
ALONE 僕らはそれぞれの花を
抱いて生まれた 巡り逢うために
(略)
誰もが胸の奥によく似た夕陽を持ってる

情景の書き表し方が好きすぎる。
「心をどこかに帰す」だとか、「よく似た夕陽(決して同じではないのだ)」とか、叙事詩的なのに叙情的でもある。
それでいて、タイトルが「ALONE(孤独)」であり、「それぞれの花を抱いて生まれた」というあたりも
なんというか日本語の美しさみたいなものにも改めて気付かされる感じですごく良い。


・『ALONE』のカップリング『GO-GO-GIRLS』
フラれようとしてるその姿勢が
とても女々しいキライ
(略)
「ラブ運は 好調 ラッキーカラーはネイビー」
そんな他愛ないページに少しだけダンシング
乙女の心 これでまた傷ついたのよ Ooh
(略)
オトコ振り返らせりゃ Feel so good オンナだもん

これは、『LADY-GO-ROUND』への“アンサーソング”のようだなと思っている。
稲葉さん時々急に乙女を“降ろして”来て女性目線の歌詞書くんだけど、イタコ作詞家なのか?
物語を書くときに、自分自身にキャラクターが憑依してきて、その言動をそのまま文字に書き起こすタイプの
小説家みたいな書き方してるんだろうか?
例えば秋元康氏やつんく♂氏のように、自身がプロデュースしている女性アイドルグループに歌わせる前提で
女の子目線の歌詞を書くのではなくて、自分で歌っているところが独特である。
しかも、一度や二度ではなく不定期に何度かやっている。


『BLOWIN'』
繰り返しなんかぜんぜんない暮らしをしてるはずだぜ ハニー
なのに 今日もあの娘 喫茶店で「毎日同じよ」とボヤきまくり

稲葉さんの歌詞、「〜だぜ」って言い出したかと思えば、一方で急に「〜ですか?」などと言い出すこともあり、
語尾を見るだに面白い。
「〜まくり」という、至極会話表現的な言い回しも使いまくりだけど、これも他ではあまり見かけない気がするw
「そうか、そういう言い回しも歌詞で使ったっていいよな……別に禁止されてないんだったわ」みたいな、
歌詞というものに対する固定観念とか、「歌詞こうあるべし」みたいな決めつけ・思い込みを
いい意味で壊してくれるところがある。
掟破りというやつだな。
「話しかけてくる」ような歌詞が結構多いので注目してほしい。


・『BLOWIN'』のカップリング『TIME』
こんな晴れた日は 二人で丘に登ろう
港が見渡せる丘に
どんな空が思い浮かぶ 教えておくれ
キスしたい気分さ

二人で一緒に丘に登っているにも拘らず、「どんな空が思い浮かぶ」と問うているということは、
ここに出てくるお相手は目が見えないのではないか? と解釈して、中学の頃にこの曲を元にした
『TIME』という二次創作短編小説を書いた。
もちろん他の解釈もできる。
最後のサビでは
どうすれば時が戻る 今何処で何をしている

とも言っているので、結局のところ「今は一緒にはいない」わけだし、何があってどうなったのかは
聴いている人の想像に任されている。


『ZERO』
今日はいまいち 思いやりに欠ける日だったとか
人の気も知らないで 『おまえは変わった』なんて
簡単に言うやつのうさん臭い顔だとか

空っぽの冷蔵庫開けて いろいろ思い出してると
都会の暮しは やけに喉が乾いてしまう

出た、生活感強めのやつ。
まずこの前段で「さっさと家に帰ろう」ってことで、帰路の描写とともに歌い出すのだが、
そんなわけで疲れて帰ってきて、忙しさのあまり食材を入れたり自炊するような暇もなく空っぽになった冷蔵庫を開けて
何かを取り出したりするでもなく、ただぼんやりと“今日のこと”を思い返していると喉が乾いてくるという歌詞。
この「喉が渇いてくる」のだって、本当に「何か飲みたいな」っていうのだけでなく、
ますます心がクサクサしてくるみたいな暗喩も込められた表現だと思う。

この曲が出た頃は、とにかくノリやすいサビの
「今あいたい すぐあいたい」や「ねむりたい もうねむりたい」みたいなところの気持ちよさに溺れるばかりだったけど、
都会に出て必死に自分なりに生計を立てつつも疲れは疲れとして感じるし、
何もかも投げ出したいときもあるよ……というような気持ちがよく表現できている歌詞で舌を巻く。
「今あいたい すぐあいたい 砂漠の真ん中で」
という砂漠っていうのも都会(東京砂漠)のことなのかもな……と思ったりする。すごい。

また、歌詞ページには書かれないラップを無視してはいけないと思う。
人のすることに 文句ばかりつける ノンキオンナだきゃ避けて通りたいけど、
自分だって悩める人の心情 理解した気で 余裕しゃくしゃく
鏡のぞいてみりゃ 昔と変わらん Same ol’ 田舎者(ヘイ) 冷や汗かき
踊ってる踊ってる. 可笑しいネ。

シングルにもアルバムにもこの部分は記載されていないが、
このテキストはライブでスクリーンに表示されたものなので、公式と言って良い。
なんとこの曲には2番のAメロがなくて、1番サビのあとの間奏に続いてこのラップ部分があり
そのあとは2番Bメロが続くという通常のJ-POPと比較すると変則的な構成になっている。

稲葉さんはよく「ゃ」を使うことで音節を端折っているので、ここにも注目していくと面白い。
例えばここだと「オンナだけは」→「オンナだきゃ」としている。
他にも「すれば」→「すりゃ」や、「ければ」→「けりゃ」などをよく見かける。


・『ZERO』のカップリング『恋心(KOI-GOKORO)』
どうしよう ほかの娘がじゃまする
こんなとき妙に仲がいいよね
これが女の連帯感なのか un
困るね 先生、とても
(略)
松本に相談しようか、でもたぶんひやかされるからやめとこう
(略)
どうしよう 授業の内容は こんなとき
ぜんぜん使えません
きびしいね 人生というのは un
なかなか 先生、とても

『ZERO』との温度差で風邪引きそう
急に「先生」とか「松本」みたいな第三者が登場するところも面白いし、アップテンポでライブでもフリをつけてノリやすく
大人気の楽曲で私もずっと好きなんだけど、
「これA面楽曲でいいだろ」
と思いつつも、それがあくまでカップリングなところが一周回っていいなってなってくる。
思わず一文が長くなるくらい好き。
多分A面楽曲だったら「松本」出てこなかっただろうし。
「松本に相談しようか〜」のバックコーラスが
「まっ ちゃん まっ ちゃん HELP ME」であるところもキーだ。


『愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない』
不安材料 腰にぶらさげた僕の 心にかみついた
(略)
そう信じる者しか救わない せこい神様 拝むよりは
僕とずっといっしょにいる方が 気持ちよくなれるから
ツライつらいつらいとわめいてるばかりじゃ 心にしわが増えるだけ
(略)
今だから 好きなんだから あきらめながらは生きないで
他人(だれか)の血が流れても 一途な想いをふりかざそう

この時代においては破格級にタイトルが長い
この1ヶ月後に、WANDSが『愛を語るよりくちづけをかわそう』をリリースしたりして
一時的にチャートの中にタイトル長めの曲が増えたりした。
それがインパクトになって、また一躍知名度が上がったシングルだった。
これがテーマ曲に使われていた、本木雅弘・宮沢りえ主演のドラマ『西遊記』もすごく良かった。
テレビドラマシリーズとして毎週放映したんじゃなくて、映画みたいな尺の1本きりのドラマだったんだけど。
というのも日本テレビ開局40周年記念企画の番組だったからのようだ。

ここまで、タイアップがあっても自分が目撃したのはCMだけだったから、
初めて自分が見ている前でドラマ主題歌というものとして使われたという点でも思い出深い。
(これより前だと『代表取締役刑事』で『孤独のRunaway』が使われていたが、見ていなかったので)
B'zのシングルCDで初めて買ったのがこれだった。
これより前の作品の方が購入タイミングは後になった。そもそも家にCD再生機器がなかったので。
うちにCD再生機器を導入したときの最新シングルがこれだったというわけ。
そもそもシングル『love me, I love you』までは8cmシングルだけでなく「カセットテープ」も出ていたのだが
思えばシングルカセットは買ったことがない。

ついでにここで音楽メディアについての余談。
うちでは一日中FMラジオが流れていて、しかもデッキが常に「録音一時停止」状態になっているのだった。
で、曲をフルで流してくれる番組は決まっているので、その番組で「◯◯の新曲」と言って曲が流されるときに
一時停止を解除して録音を行う、という手順で作られた「色んな楽曲がごった煮にされたカセットテープ」が
何十本もあり、私や家族はそれをカーステで流しながらドライブや旅行をした。
『太陽のKomachi Angel』も、そのラジオを録音することで作った
「さまざまなアーティストの、その当時の最新楽曲がごった煮で詰められたカセットテープ」の
A面1曲目に収録されていた。
『LADY NAVIGATION』もそのポジションだった。

この歌詞に出てくる「信じる者しか救わない せこい神様」ってすごくないか?
「信じる者“は”救われる」というのは、「信じない者は救われない」ということだ、確かに。
数学の「集合」の話みたいになってくる。
「信じる者は救われる」の対偶はたとえば
「救われなかったなら、そいつは神を信じていなかったに違いない」
などになるだろう。

「他人(だれか)の血が流れても 一途な想いをふりかざそう」というフレーズも結構強烈だ。
ここだけ見るとヤンデレに見えなくもないので。
でも、ヤンデレに必須の「病み」を感じない。この曲、この部分含めてずっと爽やか……。


・『愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない』のカップリング『JOY』
闇をさまよう星が 世界の半分を埋めて

夜が巡り来たことの描写でこんなに詩的でロマンティックな歌詞もなかなかないかもしれない。
夜が来たことを「夜が来て」とだけ言ってしまう方が簡単だし絶対に伝わるから。
「歌詞」というより、「詩」の表現だこれは。すごい。

「するめ楽曲」という概念を私に教えてくれたのもこの曲だった。
シングル曲というのは大抵は表題になっている、いわゆるA面楽曲目当てに買うものだし、
買ってみるまでカップリングにどんな曲が収録されているか知らないでいる。
しかも、カップリングは「A面になれなかった、しなかった、ならなかった曲」なので、
なんか二軍選手みたいなイメージもあったりする。
もちろん、作っている人間からすれば、「A面が優で、B面が劣」みたいな単純な話ではないことを
今の私は理解しているが。

でも『恋心(KOI-GOKORO)』が、私含め多くのB'zファンに「これA面でいけるだろ」と思われているように
もうパッと聴きの印象で「良い!」となるケースだってある。
『JOY』は、繰り返し聴いてくるとじわじわ「これもいいな」となってきて、
私はそれを「するめ楽曲」というのだと後で知って、なるほどなとその味をまた噛み締めたのだった。


『裸足の女神』
街中が裏切りにあふれてると スネるだけのヤツもいるけど
(略)
情けないヤジばかり飛ばすだけの ヒマジンなんかよりよっぽどいいから

女性への応援歌的な解釈もできる歌詞であるという点において『LADY NAVIGATION』と同系統とも言えるシングルA面楽曲。
で、「他にダメなやつなんかいっぱいいるし、君はそいつらに比べたら落ち込む必要なんかない」
みたいな流れで書かれてるので、どういうのが「ダメ」かという稲葉さんの価値観が見えるようで面白い。
「スネるだけのヤツ」とか「ヤジばかり飛ばすだけ」とかがダメの例として挙がっているのでw
前を向いていられる人はそれだけで気高い。
人に文句つけている暇があったら自分で行動できる人の方が尊い。


・『裸足の女神』のカップリング『KARA-KARA』
もうこれ以上耐えられない いい人やるのは
何もはじまらない これじゃなんか損したような気分だ
(略)
生まれかけてた 男女の友情と 刺し違えても良い

この文脈のラブソングで「友情と刺し違える」って言葉を紡いで表現ができるのすごい。


・『Don't Leave Me』のカップリング『Mannequin Village』
これは、また『ZERO』に続いて歌詞カードには書かれていない謎セリフについて。
この曲も2番にAメロがない代わりに1番にはAメロが2回し分あって、
1番後にラップが入って2番Bメロになってしまう構成で『ZERO』に近い作りだ。
ラップ部分は
ハハハ ハハハハ
車も洋服もオンナも 何でも新しいモンに限るなぁオイ
おいおい みんなも遅れんなよもっと速く歩こうぜ速くよぉ
遅れてるヤツほどダサいモンないからなあ ハハハ

と聞き取れる。
これは逆説的に、「こういう価値観の人の方が却ってダサいのでは?」という皮肉を唄っていると私は解釈する。


『MOTEL』
重ねてもはみだす心
安い石鹸のように磨り減らし

「安い石鹸のように」という比喩がすごい。

そして2サビの
ひとりじゃないから
忘れながら生きてる
根雪のよな思い出が夢に出て
こらえきれずに塞がりかけた
傷をまた掻きむしる

ここの詩的さもとんでもない。

時間にしか癒せない出来事ってある。
それって、長い時間をかけてなんとか「忘れながら生き」られるようになって、常日頃から四六時中頭にあるものではないものへと
ようやく昇華させたものだ。
そうなるまでは逆で、四六時中頭の一番目につくところにあって、意識をかき乱してくる。
でも、こういうものは夢には出てくるし、そのあとの寝覚めはだいぶ悪い。
やはり稲葉さんの「夢の見方」は、結構私に近いんじゃないかと思う。
私もよく忘れながら生きてる根雪のような思い出が夢に出て、そのたびに傷掻きむしってるし
夢を見るのをやめたくても自分ではどうしようもない!



・『MOTEL』のカップリング『hole in my heart』
オマエの求めてるものは 僕の担当じゃないよ
好きなことやれる条件を 備えたやつ探しなよ
(略)
安らぎだけ欲しがって
おまえを枕に眠ってた

ラブソングって、なにも「スキスキ大好き!」みたいな歌だけがラブソングなのではなくて、
様々な恋愛模様が描かれているものがあるよね。
例えばこの曲はある種の「性格的相性が合わなかったことが判明したときの歌」って感じなんだけど
お互いのこだわりポイントが完全に背反していて付き合いとしてはうまく行かないみたいなケースを唄っていると思う。
しかも、似た者同士でもあるせいでそこがぶつかり合うみたいなものであり、
「痛いほど気持ちがわかるよつらい」とも唄っているw


『ねがい』
最終電車に揺られて
つかまった手すりがベトつく
(略)
世間をののしりゃご老人
おお オマエの胸で窒息したい
(略)
WOW YEAH かなへたまへ
このねがひ かなえろよ…

稲葉節の煮凝りか?
最終電車のくだりは、『ZERO』にもあった「空っぽの冷蔵庫開けて」ぼーっとしているときのような生活感がすごい。
最終電車で手すりがベトつくという情景描写で、心情は何も言っていないのに何もかもが伝わってしまう感じ、これが表現力というものよ。
「ののしりゃ」と、「ののしれば」を「ゃ」で音便にして音節圧縮している。
そして唐突な旧仮名遣いは、『LADY-GO-ROUND』履修済みのB'zファンとしては
「久々に旧仮名遣いきた!w こひしかるべきわがなみだかな!!w」
であり、謎の歓び(喜びじゃないところがB'z)。


・『ねがい』のカップリング『YOU&I』
きらいだ あなたといるときの僕が
たまらなく情けなくて
(略)
いなくなってしまえ 憂欝といっしょに
あなたがいなけりゃ 楽な気持ちになれるだろ
何もかも 静かになって ああ眠れるよ
(略)
生きてることを 感じられるような
ドロッとした時間を 過ごせる
(略)
いなくなってしまえ 歓びもいっしょに
あなたがいなけりゃ 悔しさに泣くこともない
何もない 思い切り 叫ぶことも
(略)
あなたがいなけりゃ あとは寂しさに
耐えればいい
つまらない毎日を 送ればいい

歌いだしがいきなり「きらいだ」で始まるのでびっくりした思い出があるが、
相手がキライなのではなくて、全体を通して“自己嫌悪”を唄っているとわかって
一気に愛着が湧いてしまった楽曲。
「いなくなってしまえ」で始まるサビも、つくづく素直ではない。
「寂しさに耐えてつまらない毎日を送ればいい」って言ってるけど全然良くないのが丸わかりでたまらん。
最後には「きっと良かったんだろう 僕たちはめぐり会えて…」に収束していくところも含めて
恋愛に不器用な人間の心の動きをうまく描きすぎだろう。

これがまた、ノリがよくてライブでも盛り上がるタイプの曲の雰囲気なのに、カップリングなんだからもう……。
この曲のために『ねがい』のシングルを買えってなっちゃうでしょ!
この頃は、毎回シングルやアルバムを予約して買っていた時期で、ファンクラブにも入っていたんだけど
『ねがい』をいつも通り発売日に手に入れてきて、ワクワクしながら初めて『YOU&I』を聴いたときは感動したよ。
泣いた、泣いたよ!!!
そりゃベストアルバム『The "Mixture"』にも入るよ。名曲がすぎる。
みんな『The "Mixture"』で新しい『YOU&I』を聴こう!


『love me, I love you』
モヤモヤしているのがイヤならフトンを噛んで考えて
なんかあいつに期待過剰なんじゃないの
(略)
都合いいモノだけひっぱりだして自分のウンの悪さを
そいつにべっとりなする癖 ないかい
(略)
消去法でイケることもあるらしい
そのうちまあ、なんとかなる…ヘイ、そうだろう
(略)
Let's give it away けなしてないで
たまにゃ海も山も人も誉めろよ

本当に面白い。
「ねえ、そうでしょう」とか呼びかけてくるところも面白いし、
フトン、なんか、なんじゃないの、けちって、べっとりなする癖、消去法……
言葉選びに個性が出てるところが本当に好き。
もし作詞をするとしてこういう言葉が自分の中から出てくるか? 出てくるとしてすんなり出るか?
そしてその言葉を実際に採用するに至るか? と思考実験していくと
こういうところにこそ作家性というものは出るというのがよくわかってくる。
B'zの歌詞は稲葉さんが書いているからこうなっているのだと誰もがそのオリジナリティを認められる。
私もそんな「自分だから選んだ言葉」で詞や文を作っていきたいと強く思うのだった。


『LOVE PHANTOM』
夢に向かい交差点を渡る「途中の人」はいいね
(略)
少しのズレも許せない
せこい人間になってたよ
(略)
君の背中にすべり落ちよう
(そして私はつぶされる)

7曲目のドラマタイアップシングル曲では?(初稿時、色々抜けていたので修正した!)
1:ハイミスで悪かったネ!での『君の中で踊りたい』
2:代表取締役刑事での『孤独のRunaway』
3:ホテルウーマンでの『ALONE』
4:西遊記での『愛のままに〜』
5:新空港物語での『Don't Leave Me』
6:外科医柊又三郎での『love me, I love you』
7:X-FILESでの『LOVE PHANTOM』
かな? 海外ドラマの日本放映版でのみのエンディングというタイアップだけど、
これまでにないタイアップ形式だったので嬉しかったな。
X-FILES自体が面白かったのもあって毎週見た。

B'zの歌詞ときどき「せこい」出てくるんだけど、「せこい」ってむしろ日常会話の方では
そう頻繁に出くわさないし言わないw
(歌詞にダサイもかなり頻出する)
そういう言葉が出てくるのが面白い。
そして、「君の背中にすべり落ちよう」って言った後に、“君”が「私はつぶされる」って言い出すのも面白すぎでは?
この女性は曲のラストでも「幻をいつも愛してる 何もわからずに」とつぶやき出すし
考えてみるとB'zの中でもかなり独特なものに分類される気がする。
あと、前奏だけで1分19秒もあるところとか、ライブでの高所からのスタントとか含めて
色々言いたいことが多いので、みんなもライブDVDを見よう! 衝撃映像だぜ!

これは、公式が紅白出演後のバズりに応えるような形でアップしてくれた「LIVE-GYM Pleasure’95 BUZZ!!」というライブツアーの映像だ。
BUZZ!! the MOVIEというタイトルでVHSが出たので、私はこれを買って持っているのだが、
繰り返し見すぎてテープが伸びている。
これからは、デジタルで劣化しない映像を楽しもう!
こんなの見たら憧れて、自分も横浜国立大に進学したい! と思ってしまうのもやむなし(結局別の大学行ったけど)。
B'zのライブツアーではよくサポートメンバーとしてベースに明石昌夫さんがいる。
楽曲の編曲でもよく名を連ねている。この間亡くなってしまって残念だった……。


・『LOVE PHANTOM』のカップリング『FUSHIDARA100%』
僕らはもう別れた方がいい
その方が君のためだなんて
ロマンチックな眼で
つぶやかないでふきだしちゃう
(略)
しゃべりなよだれにいくら入るのか
(略)
やりたいようにします…

これも女性目線のカップリング曲なんだけど、「わかってないアナタはダサイオトコかもねホントに」と
カタカナも多い。
タイトルはFUSHIDARAとアルファベットで綴っているけど、歌詞中では「フシダラ」と言っているしね。
一人称は「アタシ」だし。
何食ってたらこんな歌詞書けるんだ。


・『ミエナイチカラ』のTrack.2『MOVE』
まだお若いのに疲れて
世界を全部見てきたよに
リタイヤするのもけっこう渋いと
呟いて半端な同情買うのだけはやめよう
(略)
がむしゃらな日々は報われる
思いやり無きはバチ当たり
時の流れさえついてくる
自分で進みゃついてくる MOVE ON, MOVE ON, BABY

『ミエナイチカラ』は初の「両A面」のシングルとして出た。
だから、MOVEはカップリング(B'zではこれをセカンドビートと呼称している)というとちょっとした語弊があるかもしれず、
Track.2と表現しておいた。
収録順が2番目なだけで、『MOVE』も「A面」なのだ。
(カセットテープではなくなったのだからA面とB面というもの自体がなくなったわけだが)

『ミエナイチカラ』がぬ〜べ〜でタイアップされ、初めての「アニメタイアップ」になって、
『MOVE』の方は進研ゼミのCMで使われていた。

ここでは、「進めば」→「進みゃ」という音節圧縮が登場。
勢いのある楽曲で、「チャンスが降ってきたらビビってる場合じゃないだろ」みたいな歌詞なので
エンカレッジメント〜〜!!! っていう感じで好き。
「リタイヤするのもけっこう渋いと呟いて」というのは、まだ諦めないで頑張っている人を尻目に
“自分は一抜けするぜ、いつまでも夢にしがみついているのもダサいしね
リタイヤっていうのも結構渋いと思うw”
と言ってる人を想像するとわかりやすい。
こういう考え方は一種の防衛機制(すっぱい葡萄)が働いている結果なんだろうけど、
この曲では「そうはなりたくない」と言っている。


『FIREBALL』
僕の命は風前の灯
尻にしかれっぱなし 座ぶとんのような心と体よ
この形勢を逆転したいと からまわりして びんぼうゆすり
がんじがらめといえば そうでもない
(略)
裏切られても コケても アレちょん切られても
いじめられても たたかれても しぶとく生きたい
どんな高級セラピーも あてになんない時代に あと何がある
(略)
だれにも よりかからないで やっていくことは
信用するなとか 友情すてろってことじゃなくて
クジがはずれても ねちねちグチらず 前にすすめるかどうかだろう

すごすぎる歌詞。
これも、一種の応援歌なんだけど『LADY NAVIGATION』とか『裸足の女神』みたいな
「君は間違ってないよ、ステキだよ」風のベクトルじゃなくて、
「心を燃やせ!! グチグチ言ってんじゃねえ!!」というかなりパワフリャな感じで
誰かを奮い立たせることよりも、自戒とかセルフエンパワーメントのエッセンスが色濃いと感じる。
『love me, I love you』でフトンが出てきて(しかも噛んでた)、今回は座ぶとんである。

特に後半で出てくる「だれにも よりかからないで〜」からのくだりがすごい。
人生、新しいことに挑戦したり、狭き門をくぐるために大勢の中に混じって力を競ったりする場面では
絶対に「クジがはずれる」ことがある。
なんなら、沢山挑戦をしている人ほど、何度も何度も繰り返しクジにはずれているのであって、
そのあとでクジに当たる人というのは、そのはずれクジの山を登って登って掻き分けて、
やっと当たりを引いているわけで。
もちろん、運良く少ない挑戦回数で当たりを引ける(評価される)人もいる。
でもそれはレアケースで、普通はすんなり思い通りの展開になったりしない。
もっと泥臭く、地道な下積みをした上でやっと当たりを引ける人がなぜそこへ到達できたかといえば
「クジがはずれても ねちねちグチらず 前にすす」んだからでしかない。
他を蹴落とすとか、スネてやめちゃうとか、そういうことをしないで、とにかく前に進んだからだー!!
クジがはずれたときに「今回はクジがはずれたのだ」と言えるのも、
「当たった人と比べてみたときに、自分の実力だってそんなに劣ってない」と言えるくらい努力を積んだ人だけだ。
そうでなけりゃ、クジを引く前にやるべきことがまだまだ沢山あるって話になるわけだから。
どんなに頑張って自分を磨いていても選ばれないことがあるという話なのだ。
それを「クジ」だと言っているのだ。
そこで腐らずに、まだ前へ進めと言ってくれるのがこの曲なので、何かを目指して足掻いている人には
すごく勇気づけられる歌詞だと思う。

ちなみに、タイアップとしては資生堂の化粧品「ピエヌ」のCMで使われた。
そのため、CMで使われた最後のサビの「魂に火をつけろ」の前に
メ〜〜イク!
という言葉が入っている。これは歌詞カードなどには記載されていない。
「メイク魂に火をつけろ」ということなのだ。
CMではここだけしか使われないので、ここだけ「メイク魂の話にも解釈できる」ようになっているのだ。
曲全体として見れば、上に書いたように「裏切られても(略)しぶとく生きたい」から、
「魂に火を」つけるという歌であるが。


『Calling』
あっという間 時間は積もり 何も見えなくなりそう
(略)
強い磁石に引っ張られているように

曲の構成が好き。
最初と最後の部分だけがまるで別の曲のようにヘヴィな音作りで、それ以外の全体はラブバラード。
おかげで曲中で2回雰囲気がガラっと変わるのが面白い。
時間が積もるとか、磁石に引っ張られるとか、こういう喩えも良い。


『Liar! Liar!』
まっ黄色いシャツ着ちゃって 歌いだしそうな表情さらして
ダンナと仲良く腕組んで 道横切ってんのはオマエだろう
つっこんじゃうぞ アクセルべったり踏んで
(略)
先生はママと 政府は火星人と 警察は悪い人と
僕の知らないとこで とっくに ああナシがついてる
それってダンゴウ社会

おそらく、相手を既婚者と知らずに付き合っていて、
自分が不倫相手だったことを自覚する瞬間から始まる歌なんだけど、
そこで相手に「まっ黄色いシャツ」を着せている描写とか、道を横切っている瞬間を見て
アクセルべったり踏んでつっこんじゃうぞとか言い出す歌詞すごすぎる。
しかも締めくくりは
Oh, liar, liar だれもがliar
愛する人が ハッピーになりゃそれでいいや

と来たもんだ。
「なれば」→「なりゃ」で音節を圧縮することも忘れない。


・『Liar! Liar!』のカップリング『ビリビリ』
気分もりあがる 電話がつづきゃ
(略)
いきつく先にゃ トラブルが待っている
(略)
ビリビリビビってる きもっ玉ちぢんでる
ひとり相撲だよ こりゃはずかしい
会わなきゃよかったなんて思わないけど

どんだけ禁じられた相手なんだろうか。
よほど、付き合ってはいけないとわかりきっている相手なんだろうけど。
「ゃ」もオンパレードだし。

でも最後には
でもどうしてでも 僕は帰ろう
いくじなしやろうに なりさがろう バイバイ

と終わっていて、危険は回避できたっぽいことがわかるw


『さまよえる蒼い弾丸』
風の強い日はアレルギー そんなのかまっていられない
無菌状態に慣れ過ぎ みんなあちこち弱ってる
(略)
チャンネル 次から次へ変えてると もう朝が来た
落ち着く場所ありますか?って そんなのまだいらねぇ

「飛びだしゃいい」「旅すりゃいい」と、「ゃ」も連発。
出た当時は、「風の強い日は晴れる日」って言ってるのかと思っていた。
急に「そんなのまだいらねぇ」みたいな独り言的な言い回しが出てくるところも好き。


・『さまよえる蒼い弾丸』のカップリング『Hi』
仲間はずれの夢を見るよ
寝てるときまで みけんにシワ

こういうときある。
寝たはずなのに夢で疲れてしまうみたいな経験する人じゃないと書けない詞だ。


『HOME』
愛されるばかりが能じゃないだろう
(略)
ありがとうって(Thank you very much!)
思うことの方が 断然多いのに(わかっておくれよWow Wow)
どうしてもっと うまい具合に 話せないんだろう
言葉ひとつ足りないくらいで 全部こわれてしまうような
かよわい絆ばかりじゃないだろう
(略)
あいつをいじめたって そんなのまるで 答えにゃならないよ

欲望はぐるぐる(くるくる回る)
マーブル模様 鏡をのぞけば(テクマクマヤコンWow Wow)

()で書いたのは歌詞カードに記されていないバックコーラスだ。
ほかに、バックコーラスで「テクマクマヤコン」って言い出す曲は寡聞にして知らない。
歌詞に鏡が出てくる歌は無数にあるけど、普通そのバックで「テクマクマヤコン」言いだすことはない。すごい。
「深呼吸をひとつして」という歌詞の後にも「スーーハァ」という呼吸の音を入れていたり、
遊び心があって好き。

それに、これはいくつかある「人と人との縁」を唄った曲のひとつであると思う。
「自分だけのHOME」っていうのは、本当に家のことを言っているのではなくて
安心できるような、そこへ帰りたいと思えるような人間関係やコミュニティのことを暗喩しているものと思う。
(「人間関係はまるで家のようだ」と直接の比喩で言っていないので暗喩)

コロナが本格的に日本でも感染拡大して、「ステイホーム」が呼びかけられていたとき
稲葉さんと松本さんがオンラインセッションで『HOME』を演奏するHOME at Home動画をアップしてくれたのも嬉しかったしステキだったので見て。


「愛されるばかりが能じゃない」という表現もすごいと思う。
しかも、「じゃあ愛される以外に何があるか」というところはリスナーがこれを聴いて各々考える必要があるね。


『ギリギリchop』
僕に似合う服なんかはありゃしないのよ 世紀末の流行色
全部はおまえにゃあわせられないよ
がっかりさせてごめんねなんてネ
(略)
たまに苦しくて痛いのが 気持ちよかったりなんかしたりして
(略)
シマリがないとまたみんなにコソコソ笑われるぞオマエ

アルバム『RUN』に『THE GAMBLER』という曲があるのだが、それとかこの曲とかは
綱渡りみたいな賭博師人生の歌だと思っている。
「気持ちよかったりなんかしたりして」みたいに、意味のない「たりなんか」「したりして」という
曖昧表現を繋げていくところは逆にすごい。
なぜならば、日本語は英語に比べると同じ音節数の中で言えることは限られているから
曲の情報量を増やそうと思うと、音節を無駄にできない。
こういう「なんか」「たり」とかで濁すようなところがあると
「音節がもったいねえ!」
と思ってしまうこともあるのだ。
その音節を使って、何か他の言葉を言えるだろう! と。
でもB'zほど持ち曲が多いと、「いっぱい曲あるんだから、音節の無駄遣いをしてもいい」みたいな
そういう余裕がここに表れているようにも思うw
まさに「大丈夫 僕の場合は。」である。


『今夜月の見える丘に』
たとえば どうにかして 君の中 ああ 入っていって
その瞳から僕をのぞいたら いろんなことちょっとはわかるかも
(略)
ちょっとした違いにつまづいて またしても僕は派手にころんだ

私が強く願って、この曲を合唱団のボーカルアンサンブルで唄ったことがある。
混声男女四部合唱用のスコアが販売されていたので!!
これはやらねばなるまい! と思って、団内のB'z好きを誘って4人のアンサンブルで唄った。
思い返して今の自分と比べてみたら、
「絶対今の方が良い発声になっていて声通るから、より良い合唱にできるだろうなあ。
今ならビブラートだってできるし……」
と思ったりする。
「今夜月の見える丘に」っていうタイトルがまた、小説の題のようで良い。
相手のことが分からずすれ違いを何度も繰り返しながらも、少しずつより深い関係を築いていく曲なんだけど
それを「燃えるような月の輝く丘」とか「あやしい星の潜む丘」に一緒に行くことと表現しているのがいい。すばらしい。


『May』
急に君が夢にでてきてあせった
僕は君の夢にでることあるかい

夢に昔の知り合い(小中高のクラスで数年一緒だっただけの人など)が色々出てくるので、この気持ちはよくわかる。
その人はどうしてるんだろうなと思ったりする。
まぁ、この曲ではかつての恋人のことを唄っていると思うが。
そして私の場合は、Facebookを見に行って古い知り合いは最近どうしてるかな? と見てみるのだが
大体「どうもなっていない」。
誰もFacebookに近況を書いたりしないのでw
稲葉さんは、よく夢のことを歌詞にするので、夢を結構見るタイプの人なんだろうなと思ったりする。
寝て起きて、夢を覚えている人とあまり覚えていない人がいて、結構その個人差って大きい感じがするし。


・『RING』のカップリング『guilty』
あたりさわりない会話
行ったきりのコミニュケーション
いつも一緒にいるようで
てんでバラバラ向いている

家の中がこげくさいのに誰も気づかない

念の為付記しておくが、「コミニュケーション」は私のタイプミスではなく、どうやら原文ママ。
(communicationだからカタカナで書くならコミュニケーション)
でも、ディスコミュニケーションに関する歌だから、コミニュケーションという綴りの誤りは
わざとそうしている可能性も否めない。
「誤ったコミュニケーション」ということでな!

例えば、倦怠期や、子どもを放任した結果モンスターと化してしまったみたいな状況を想像してほしい。
そのうえで、「家の中がこげくさいのに誰も気づかない」ってすごい表現だと思わない?w
家庭内人間関係に「ボヤ」が発生してるのに、誰もが無頓着なのよ!


『ultra soul』
どれだけがんばりゃいい 誰かのためなの?
分かっているのに 決意(おもい)は揺らぐ
(略)
祝福が欲しいのなら 悲しみを知り 独りで泣きましょう
(略)
おのれの限界に 気づいたつもりかい?
かすり傷さえも 無いまま終りそう
(略)
祝福が欲しいのなら 底無しのペイン 迎えてあげましょう
そして戦うウルトラソウル
(略)
希望と失望に遊ばれて 鍛え抜かれる Do it

こんなに克己心とか良い意味での闘争心とか負けん気とかを昂らせてくれる歌もなかなかない。
やはり「そして輝くウルトラソウル!(ハイ!)」という部分がとりわけ知られていると思うが、
「そして」の前が大事なんじゃないかと思う。
何をした上で、そしてなのか。
そこは、もうフルサイズで楽曲を聴いてもらいながら、上のリンクから歌詞全文を見てもらうのが手っ取り早いのだが。

一言で言えば、「負けるな」「挫けるな」「諦めるな」とかそういうことを言ってるんだけど、
その言葉を使わないでそれを伝えようとしているのだと思って欲しい。
しかももっとすごいのが、「悲しみを知り」とか「底無しのペイン」とか、自分からツライことを
どんどん取り込んでいこうとすら言っている。
もはや「失敗が怖いか? いいや恐れるな」とか、
「ときどき投げ出したくもなるよねわかるわかる」とかそういうレベルではない。
むしろ自分から進んでどんどん失敗を積み上げろと言っているに近い。
「希望と失望に遊ばれて 鍛え抜かれ」ろと言ってる。
そして輝くんですよ、ウルトラソウルは。

歌いだしの「どれだけがんばりゃいい 誰かのためなの?」は、反語に近い。
そのあとに「分かっている」って言ってるのは、
「誰かのためなの? いいえ違います、誰のためでもありません それは重々承知です」
ということだと思う。
「こんなことを続けて一体誰のためになるんだ? そもそも誰かのためにやってることなんだっけ?
……いいや、誰かのために始めた闘いじゃない、自分がやりたくて始めたんだったわかってるわかってる
なのに、やめたいとか諦めたいと思ったり、なんなら、それを他の誰かのせいにするだなんてちゃんちゃらおかしい
なんでこんなにも自分の決意は揺らぐのか! 意志が弱すぎる!」
という自問自答と自戒を何度も繰り返している人は、まるで頭の中を覗かれたような気分になること必至。
これまでの人生で、何度「どれだけがんばりゃいい 誰かのためなの?」を繰り返したかわからない。
夢は夢じゃない、現実だぜ!!
なお、カップリングの『スイマーよ2001!!』も名曲すぎるのだが、この曲の初出は
アルバム『SURVIVE』なので、そちらで併せて紹介したい。

それから、上述した“語尾”についても言いたいことがある。
「独りで泣きましょう」とか「迎えてあげましょう」みたいに、
稲葉さんが「ましょう」「でしょう」などを使う場面来ましたね。
歌ではこういう「勧誘」みたいな語尾にしたいとしても、よく使われるのはやはり「〜しよう」だし
稲葉さんももちろんそっちを使うことはある。
でもここで「独りで泣こう」「迎えてあげよう」じゃなくて「泣きましょう」「あげましょう」にするところが良いよね。
だってこの方が歌いやすいもんw


・『ultra soul』のカップリング『ROCK man』
愛しがいもないし 憎みがいもない
もしかしたら僕は そんなに淋しい人

減点されて生きてるような 勘違いばっかしちゃうんだ
(略)
氷のようなプライドを
ほんとはあなたに溶かして欲しいよ
言い出せない ROCK man
(略)
気づいてるんだ とっくに
どなたを守ればいいのか

珍しく3rd BEATも収録されているシングルなんだ。
通常B'zのシングルは2曲のみの収録(カラオケバージョンもなし)なので。

ここでのROCK manは「頑固者」「強情者」を表している。
別に英語にこういう慣用句があるというわけではないと思う。
ましてやカプコンのアクションゲームとも関係がないぜ!

「愛し甲斐も憎み甲斐もない淋しい人」っていう表現面白いね。
「減点されて生きてるような」感じっていうのも面白い。
自己評価低めだけどプライドは高くて、素直になれないから嬉しいはずの場面で相手を傷つけて
でも「変われるものなら変わりたい」という気持ちは持っている人の歌。
『YOU&I』も素直になれない人の歌だったけど、これも面白いと思う。
「どなたを守れば」っていう言い回しも良い。
こういう時、普通の歌では「誰を守ればいいのか」って言うと思う。



(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)

さて、B'zはめちゃくちゃ曲が多くて、私の知るシングルとアルバム曲で語りたい曲すべてを
一記事にまとめると長大な文字数になってライブドアブログの記事文字数上限にも引っかかりかねないし
読む方も大変なので、この記事をシングル編として独立させようと思う。
アルバム曲はアルバム編を別記事として立てるので、おたのしみに!

シングル楽曲は、以下の3枚のベストアルバムでほとんどの楽曲をカバーできるので、ぜひ揃えてほしい。
デジタルミュージック配信もされているので、円盤を買わなくても聴けるYO!
B’z The Best“Pleasure”
B’z
Rooms Records
1998-05-20




B'z The "Mixture"
B’z
RCAアリオラジャパン
2000-02-23