ラボツアーなどには応募しなかった。
今年は、丸1日産総研に割けるのでラボツアーの抽選予約にも応募して、じっくり楽しんできた。
産総研特別公開2024
ラボツアーはなんと全21種もあり、各現場それぞれに◯時〜◯時の部…という風にタイムテーブルが存在する。
申し込み時点では複数のツアーに(時間がかぶっていても)応募できるので、色々なものに応募しておいた。
個人的に本命は昆虫分野だったので、昆虫は複数の時間帯に申し込んだような気がするw
そのおかげか、午後の昆虫ラボツアーに参加する権利を得た!
また、午前中にはボーリングコアの標本倉庫なども見に行けることになったので、早朝から準備して産総研に向かった。
そんなに遠くないのでちょっと気合を入れれば徒歩でも行けるのだが、おそらく一日全体で
沢山立ったり歩いたりするだろうから、体力温存のためにバスで向かったw
昨年は、時間の関係で共用講堂の方へは行けなかったのだけど、そもそも展示が情報棟と共用講堂の2ヶ所で
行われているということに気付かずに帰ってしまった人もいたとのことで、その反省からか
今年は総合受付が共用講堂の方に設けられていた。
昨年は受付が情報棟にあったので正門から受付が近かったわけだけど、その反面
情報棟内のブースだけを見て帰ってしまった人がいたということだね。
↓このツイートの画像1枚目を見てもらうとわかるけど、共用講堂は正門からは奥まったところにある。
トマトジュースが噴火するタイムテーブルw pic.twitter.com/u3NI6OEsbY
— (V)・∀・(V)かにぱん。🦀🍞@つくば (@kanipan666) October 5, 2024
そんなわけでまずは共用講堂へ向かい受付を済ませて、ボーリングコアのラボツアー受付時間まで
講堂内のブースにどんなものがあるか見て回った。
最初に「後発酵茶」のブースを覗いてみた。
2種の後発酵茶の試飲ができるようになっていた。
飲んでみて最初に思ったのは、「ちょっとプーアル茶っぽい」ということだった。
資料を見ると、プーアル茶はまさに後発酵茶の一種だったことを知る。そうだったのか。
後発酵茶の発酵法には3種ありプーアル茶は「好気発酵」という手法らしい。
ブースにあった試飲用の後発酵茶は、プーアル茶よりも飲みやすさを感じた。
これはプーアル茶とは異なる発酵法である「二段発酵」だからなのかもしれない。
Steamでお茶の農園シミュをやっていたことがあるんだけど、これがかなりカスタマイズ製のあるお茶シミュだった。
なんの茶葉の木を育てて、それをどのように、どれくらいの時間乾燥させて、発酵させるか、または発酵させないのか……
という具合に、自分で製法を細かく決めて時間の調整をすることで、世界中の様々な銘柄のお茶が出来るゲームなのだ。
日本語対応がないので英語のまま頑張って色々なお茶を作ったw
後発酵茶のようなものを知ると、このゲームの発酵のタイミングや長さによって銘柄が変わるところはまさにリアルだと思う。
このゲームで、茶の木と気候を選択して茶葉を収穫し、あとは細かい製法を自分でカスタマイズすれば
今日飲んだ後発酵茶を擬似的に生産して、「石鎚黒茶」というふうに自分で名前を付けて
ゲーム内のお茶ショップで売ることも出来るな……wなどということを考えた。
その少し奥の部屋には、上に貼ったツイートにある「宇宙線」「断層」「噴火」「地震」などの研究ブースがあった。
そういえば、私の生まれは栃木の南西の方なんだけど、群馬県館林市に遊びに行くことがよくあった。
館林駅から歩いて行けるところに科学博物館があって、小学生〜中学生の頃、
2ヶ月に1回くらいは電車で遊びに行っていたと思う。
確かそこに「宇宙線」を見ることができる大きな筒が立っていた。
暗い大きな円筒の中に時々プシュっと白い光が降ってくる感じだった。
「これを見てどうするんだろう? 見えたら何かの役に立つのか??」
と思っていたけど、そういう「何の役に立つんだ?」というものを実際に活用しようと研究している機関・部門が
こうして眼の前にあるのだから人類はすごいと思った。
――昨年の特別公開のときから私の考えは変わった。
世の中、「何か目的が先にあって、そのために研究をする」ということばかりではない。
「何の役に立つかがわからないから研究をする」という順序であることもあるし、
そういうことが突然イノベーションを引き起こすこともあるのだ。
例えば、イグノーベル賞を取ったのに後でそれがめちゃくちゃ役に立つことになってしまったみたいな。
昨年、どこかのブースの研究者の方が自分の分野の説明をしているときに次のように語っていた。
「これが何の役に立つんですか? と訊かれることがよくあるけれど、
『それがわからないから研究するんです』と答えている」
と。
そして、これはどの分野にも共通する側面があると思う。
特に「見つかったばかりのもの」だと顕著だろうけれど、「見つかったばかりのもの」というのは
最近発生したという意味ではないのだ。
「元々ずっと地球にあったんだけど、人類にとっては最近になってやっと認識できた対象」
という意味だから、何が「見つかったばかりのもの」になるかはわからない。
「そんな昔から知られている物から新たにそんなものが見つかったのか!」
という発見は沢山あると思う。
そして、そういう新たな発見に対して更に探求を深めていくとき、何か用途が先に決まっていることの方が少ないのかもしれない。
大体は
「何かに使えるのかもしれないけど、何に使えるのかわからないからそれを探ってみよう」
というのが新発見の研究の実態なのだろう。
そう考えると、「役に立つということを説明・証明できなければ予算が下りない」というのは順序が逆な気がする。
役に立つことを証明できることに予算が多く下りるのはわかるけれど、
証明できないから予算が下ろせないということとは同義ではないと思う。
むしろわからないから沢山予算を割いて、どんどん謎を解明してみようということと両立可能ではないだろうか。
小学生だとか中学生の頃は科学館で宇宙線を見ても、「これが降ってきて、それが見えたから何なのだろう」と思っていたし、
そのときの価値観だと「役に立つかわからないものに予算は割けない」ということに同意したかもしれない。
今は、そういったものにもほぼ確実に何かしらの役に立つ使い方があるんだなと思っている。
自分には俄に思いつかないだけで。
だから、「わからないから研究する」ことが、予算のせいで阻害されてほしくないと今は思う。
ボーリングコアのラボツアーの受付時間になったので講堂2階へ移動した。
ボーリングというのは、地中に鉄の筒を挿して土中のサンプルをそのまま回収してくる手法だけど、
ボーリング調査というと最初に思い浮かぶのは、どうしても「地下埋設物の試掘調査」とか
建物建築の前の地盤検査としてのボーリング調査だ。
いずれの場合でも、何か人工物を埋めたり建てたりするために、地面の下を調べるという目的で行うけれど
これを専門に研究するというのは、何かを建てるとか埋めるとかいう目的のためだけではないはずだ。
(もちろんそこにも役立つだろうけど)
地層から何を知り、それを何に役立てたりするのだろう。
ツアーガイドさんの後について講堂を出発してしばらく歩くと大きな車庫や倉庫のようなところに着いた。
建物は大きく分けて二つあり、片方は今まさに研究しているボーリングコアが並んでいる倉庫兼ラボといった趣。
回収してきたボーリングコアの筒を真ん中でパカっと割って中を見るためのグラインダーのような機械もあった。
室内に並んでいたのは千葉県や埼玉県で取ってきたボーリングコアと、そこから作り出した地層図など。
地下350mも掘ることがあるそうだ。
参加者の方が
「どのくらいの深さまで掘れるのですか」
と質問した。
「実現可能性という意味ですか?
そうでないなら……予算次第、ですかね……」
という答えが返ってきてみんなちょっと笑ってしまったw
実現可能性みたいな意味では、今までに行われたボーリング調査歴の中には深さ6〜8km級のものがあるので
そのへんが過去再深度になるかもしれないという話だった。
深海に潜るのも地中を深く掘るのも、月に行くより大変みたいなことも聞いたことがあるなあ。
仮に350m掘った場合、1mずつの筒に切り分けるので、資料は350本になるわけだ。
ここで説明をしてくださった研究者さんは、ボーリングコアの中に含まれる珪藻を主に研究対象にしている方だった。
「珪藻について話し出すと1時間でも2時間でも喋っていられるので、ツアーが進まなくなる」
とのことでなんとか珪藻の話題は打ち切っていたw
ボーリングコアで地面の下にどのような地層が広がっているのかを図解したのが地層図だが、
これを詳細にしていくことで、
「関東平野の成り立ち」
みたいなスケールの大きなこともわかってくるみたい。
タイムマシンがないんだから過去に戻って実際に見てくることはできないけど、
調べれば何万年も前から今に至るまでに、ここでどんなことが起こったかわかるなんてすごいよね。
産総研特別公開では、去年も今年も「研究者カード」という、名刺のようなトレカのようなものを
研究者さん御本人からもらえるんだけど、この珪藻研究の方は
「研究者カードはないけど珪藻化石カードを作った!」
と言って珪藻カード5種のうち2種を取っていいと提示していたw
研究者カードないのかよw
私は、「海の指標」と「汽水域の指標」の珪藻化石カードをもらってきた。
つまる話、ボーリングコアからサンプルとして土壌そのものを取り出して顕微鏡で見ると
この「珪藻化石」というものが土中に含まれていることがわかる。
それを見るだけで、その地層が何年前で、どういう環境にあったかということを推測できるということなのだろう。
「海の指標」の珪藻化石が含まれていれば、その場所が当時海だったことがわかるとか、そういう判断に用いることができるのだ。
次にアーカイブ倉庫の方へ移動した。
こちらは、研究が一通り終わったサンプルを保管するための倉庫だ。
1mのボーリングコアが5本ずつ入った専用の木箱が所狭しとシェルビングに詰め込まれていた。
実際、もうこれ以上保管できる空きスペースがなくて困っているとのことだった。狭いはずだ。
少しひらけたスペースに、同一地点のボーリングコアサンプルが1mずつ並べられていた。

このアーカイブ倉庫担当の研究者さんが、レーザーポインターで指し示しながら
「この部分には、◯◯という貝殻が見られますので◯年前の地層であることがわかります。
一方このあたりには潮の満ち引きがあり、満ちて、引いて、満ちてます」
というような説明をするんだけど、
「え、これ見ただけでそんなことがわかるの!?」
という衝撃がすごい。
しかも、そこはかつて海だったのに、今は何十mも深いところの層に埋まってるのもすごい。
素人目線の私に言わせたら
「泥と……土と……砂利……ですね……」
って感じなのに。
とにかく、全く同じものを見ていても、そこから得ている情報解像度が違いすぎるということがわかる。
これが専門家。
私が、
「ここは保管目的の倉庫だと思うので基本“しまう”だけだと思うのですが、ある時突然、
『いついつどこどこのサンプル出してきて』
という依頼を受けるようなことはありますか?」
と訊いてみたところ、かなり意外な回答が返ってきた。
研究者さん「前にブラタモリが番組収録に来た時に、つくばのボーリングコアを出してくれって言われて出したやつが
あっちに出しっぱなしになってます」
↓これ

これを見てタモリがあーだーこーだ言う回……という放送があったわけだな、と思ったw
タモリは地理とか地層が好きな人なので、地質標本館が主な目的で収録に来たのだろうか?
「間に挟まっている発泡スチロールにツッコミ入れてましたね」
とのことw
ちなみに発泡スチロールが挟まっている部分は、それこそ珪藻化石研究などのようにサンプルそれ自体を
取り出す必要がある研究で持ち出された部分だ。
ボーリングコアとしては層の構造が重要なので途中の数cmを抜き出したからといって、
間を詰めるわけにはいかないから、ブランクを埋めるために発泡スチロールをはめ込んでいるわけだ。
また、「倉庫内にはエアコンがありません」という張り紙があってびっくりした。
(V)・∀・(V)「一定の温度や湿度に固定したりしないんですね!?」
研究者さん「しないですね。暑い日も寒い日も、あるがままの温度と湿度になっていて、夏は過酷です。
向こうの作業部屋みたいなところには一応人間用にエアコンがありますが」
(V)・∀・(V)(特別公開が秋開催で良かった……)
他の参加者さん「サンプルがカビたりしないんですか?」
研究者さん「カビますよ。採ってきたばかりのサンプルはやはり、開けて少しするとカビてきます。
けれど、そのまま更に放置すると今度はカビが落ちついてきます」
カビが落ちついてくるw
カビが落ちついたら研究して順次アーカイブしているのだそうだ。
また、311の東日本大震災のときに液状化現象が起きた場所で、そのままサンプルとして回収してきた
「液状化した地中サンプル」があった。
これは他のボーリングコアのように筒状のものを割った形ではなく、畳1帖分くらいの広さの「面」となって立ててあった。
「ここからぷしゅーっという具合に液状化した土が上がってきたのがわかります。
この上に向かって一直線に登っていってるのが液状化の形跡です」
とのことだった。
確かに、そういうサンプルを採ったり研究したりを繰り返していくことで、液状化しやすい土地を
予めマッピングすることも可能になる。
液状化がどういう場所で、どういう風に起こるのかや、発生しやすさの傾向などを、
蓄積された情報を元に予測することが可能になっていくからだ。
日本という、世界で有数の地震多発地帯に住んでいるわけだから、災害に備えるためには
こういった地面の下の研究が大事だし、一方で地震が起こるからこそ採れるサンプルというものもあるよなぁと思った。
液状化現象の現場を捉えた地層そのものなんて、世界中どこででも採取できるものじゃないとも思う。
災害が起こるから備えなければならないし、災害が起こるから研究ができる。
パッと目に入るところには浅間山のボーリングコアなどが格納されていたが、とにかくラックの数がすごかったので
他の棚にはどこのサンプルが入っているのか気になったw
時間になったので講堂まで戻ってきた。
実は来場してすぐに、講堂の入口、総合受付を過ぎてすぐのところにニコ生のブースがあることに気付いた。
12〜13時頃に、来場者参加型企画をやるというようなことが書かれていた。
私の参加するラボツアーの時間を考えると、その部分はちょうどエアーポケット状態なので
ニコ生が配信される様を現地で見たり、なんなら飛び入り参加でもしてみようと思って様子を見ていると
ちょうどカメラさんやスタッフさんがぞろぞろやってきてセッティングを始めた。
女性のスタッフさんが、「良かったら感想をお話していきませんか」と仰るので2人目の参加者として
感想を言ってきたw
本当は、このブログに書いたような
「研究者と自分のような素人では、同じものを見ていても受け取っている情報が全然違うことに驚いた」
っていうようなことも言いたかったな……と帰り道で思ったので、せめてブログに書くことにしたw
暇時間だったからニコ生に突発出演してきたぜ!#産総研特別公開2024 pic.twitter.com/Aijk4i3U3n
— (V)・∀・(V)かにぱん。🦀🍞@つくば (@kanipan666) October 5, 2024
出演したあと、ブランディング・広報部の方が研究者カードをくださった。
「これ、レアなんです」
とのことだった。
この生放送に出演した来場者くらいしかもらえないんじゃなかろうか。
ブースを出していない方のカードだから!
普通研究者カードはブースに行くか、ラボツアーに参加して研究者からもらうものだからね。
朝は大賑わいで近づけなかった火山ブースの方へ再度赴いてみると、ちょうど「火山灰」の解説が始まるところだった。
火山灰を採取して、それをどのように解析して、そこから何を知ることができるかがわかった。
机には御嶽山噴火時の火山灰現物や、お土産の桜島火山灰があった。
桜島の火山灰プレゼントあった
— (V)・∀・(V)かにぱん。🦀🍞@つくば (@kanipan666) October 5, 2024
研究者さんのYouTubeチャンネルのQRコードもあった
ひたすら噴火眺めてるチャンネルwhttps://t.co/jr8h0OD4Ft#産総研特別公開2024 pic.twitter.com/MR306ufTXB
火山灰を拡大してモニターに映し出すための電子顕微鏡もあった。
レバーを動かすと顕微鏡のレンズ部分を遠隔で操作できて、見たい火山灰の粒をフォーカスすることができ
それを活用して火山灰研究の方が、火山のメカニズムや火山灰とは何かという説明をしていく。
火山の噴火には2種類あって、すごく簡単に言うとマグマがドロドロ出てくるやつと、
地中に溜まった熱気がプシュッと吹き出すマグマを伴わないやつだ。
桜島はしょっちゅう噴火しているけどマグマがドロドロ出ているわけではないから後者なのだろう。
御嶽山の大噴火も後者だったようで、こういった大きめの噴火があったときに
すぐに現地に赴いて少し離れたところに積もった火山灰を採取して解析することで
「今、救助のために噴火口付近に近づいても大丈夫そうかどうか」
ということを判断できるそうだ。
だから御嶽山の噴火のときは、翌日の朝には現地で火山灰を採取して、噴火から24時間以内にはもう国に
調査結果を報告していたらしい。
そのための火山灰を採取するためには、つるっとしていて平らなところに積もっているものを採取する必要があるらしい。
他のものが混ざり合っていない、できるだけ純粋な火山灰だけの堆積物として採取する必要があるということだろう。
例えば郵便ポストの上や墓石の上みたいなところから採ったりするらしい。
そのあと、丁寧に米を研ぐみたいに火山灰を洗うと地中から吹き出してきたつぶつぶしたものが残るので
それを顕微鏡で見ると黄鉄鉱が付着していたりしなかったりするらしい。
これが「マグマが出てくるかどうか」を判断する上では結構重要な違いみたいだ。
Dr.STONEでスカルン鉱床を発見したときに千空が、
「マグマのちからで色んな鉱物ができて固まってる」
みたいなことを言っていたのを思い出した。
黄鉄鉱や方鉛鉱、そして灰重石(タングステン)なんかが登場していたよね。
火山灰研究者の方は、日本の火山噴火発生ペースについても解説していたんだけど、
カルデラ湖が生成されちゃうような破局的噴火と言える大きな噴火は、
日本国内では1万年に1回くらいのペースで起こっているらしい。
地球の寿命や宇宙のスケールで考えると1万年っていうのは結構短いスパンだと思う。
ちなみに、前回発生した破局的噴火は6000年前らしいんだ。
だから、ここから4000年以内にまた起こるかもしれなくて、宇宙規模で考えると1万年と4000年なんていうのは
誤差の範囲内だから……それが今日から4000年後かもしれないし、来年かもしれないよね。
地震よりは、噴火の方が危険度予測が出来るようになっているみたいだから
起こりそうなら事前に予兆を捉えられるのかもしれない。
なんにせよ、研究者さんは自分が生きている間に破局的噴火が国内で起こったら、
危険を顧みず噴火口付近まで近づきたくなっちゃうだろうなぁ、と話していたw
どの研究者さんも、こういう話の端々からその分野に本当に興味があって、研究が楽しくて、
好きでやってるっていうことが漏れ出て来て面白いw
別に隠そうともしていないだろうけど、ポロっと「好きでやってる人ならではの発言」が出てくるのを
私は聞き逃していないぞw
一通りの解説を聞き終わると、火山灰のお土産をもらえた。
そしてYouTubeチャンネルの宣伝もあったので、ここに貼っておく。
ひたすら火山を眺める動画のリストww
午後、楽しみにしていた昆虫研究分野のラボツアーに行った。
産総研の敷地内は研究棟が「群」で分かれていて、生物系は「6群」という建物群なのだそうだ。
外はちょっと雨が降り出していて、傘をさして移動することとなったが、講堂から昆虫系の研究棟まで結構歩いた。
建物が「群」で分類されていたり、やたら広かったりするところは筑波大を思い出す……。
筑波大も「学群」でエリアがある程度分かれていて(といっても柵などで区切られてはおらずオープンワールド!)
教授たちが詰めている「学系棟」も分野が近い学群エリア内に建っている。
昆虫の「共生細菌」を研究してるラボツアー行ってきた!!
— (V)・∀・(V)かにぱん。🦀🍞@つくば (@kanipan666) October 5, 2024
このために来たと言ってもいい!!
数千匹カメムシ飼われてたw
餌ピーナッツ!w
YouTubeチャンネル→ https://t.co/jTRGgVaHNt#産総研特別公開2024 pic.twitter.com/DzQhNCcq56
昨年はラボツアーすべてを諦めたけど、可能なら行きたいラボツアーがあったのだよね。
音響に関するラボとか、昆虫とか。
今年、昆虫研究の環境を見られるのは本当にラッキーだ。
大学の頃、うちのサークルにはなぜか生物学類の学生が多かった。
研究室はどんな環境なのだろうと思っていた。
今回入らせてもらったのは共生細菌を研究している研究棟で、隣の建物には社会性昆虫を研究する部門があって
アリやハチを扱っているらしい。それもすごく面白そうだ。
と、アリ飼育キットでアリの飼育観察を何度もしていた私は思った。
共生細菌というのは、虫に感染していて虫そのものにも影響を及ぼしているものらしい。
私ら人間が、体内に大腸菌を飼っているのと同じようなことなのだろう。
実際、研究で大腸菌を感染させて色々な実験をしているとも言っていたし。
ここではカメムシを沢山飼っていて、その数は数千にものぼるそうだ。
あるカメムシには同じ種類なのに茶色いのと緑のやつがいて、この体色の変化に共生細菌が絡んでいたことが判明したらしい。
昆虫には緑だったり茶色だったりするのがカメムシ以外にもいるけれど、みんな保護色でそうなっているのかと思っていた。
カメムシに感染している共生細菌は、基本的に産み落とされた卵の表面に菌が付着するという形で
親から子へ受け継がれていくらしく、親が感染していると子にも高確率で伝播していくものなのだそうだ。
なんか、人間の「虫歯」のメカニズムみたいだな……。
そんなわけで研究においても、「感染していないカメムシの卵」を用意した上で
別の共生細菌を人工的に塗布したりして条件を分け、比較に用いたりするんだそうな。
難しいのは、共生細菌の感染を制御することよりも、何世代にも亘って人工飼育を続けていくことの方だったと仰っていた。
虫にとって生育に適した環境を用意しているつもりでも、どういうわけか3世代ほど世代交代したところで
全滅してしまうというようなことが、ままあるらしい。
世代交代の中で共生細菌がどうなっていくか、カメムシがどうなっていくかを観察したいのに途中で全滅してしまう。
だから、まず安定的に人工繁殖を続けていくことが最初の課題だったみたいだ。
一部の虫たちは、4人以上の家族が自宅に置いてそうな冷蔵庫みたいなサイズの大きな飼育器の中で飼われていた。
また、その巨大飼育器が十数器並んでいた。
それぞれに色々な種類、条件のカメムシが入っていた。
内側は温度や湿度を設定して保つことができ、明るさも自動で「何時から何時に照明がついて日照の代わりを果たす」
という作りになっているようだ。
爬虫類の飼育ケースみたいだ。
カメレオンなんかは、結構環境に敏感で体質にしっくり来る温度と湿度のケースの中で飼わないと
すぐに食欲をなくして弱ると聞いたことがある。
亀も含めて爬虫類は日光浴が大事なので、爬虫類飼育用の専用ライトが売られているし、
電源ソケットのところに仲介で繋ぐことによってライトの電源ON/OFFを自動で行ってくれるタイマーなんかもあるよね。
うちは、今だと屋内観葉植物に植物用LEDライトが当たるようになっていて、毎日決まった時間に
自動でON/OFFするようにしてあるんだけど、亀にこれを使っていた時期もあった。
昆虫に対してそれをやるためのこんなに大きな専用ボックスが存在することが驚きだった。
しかも、ある飼育器の扉には黄色いマグネットが貼ってあり
「ゴキブリ出没注意!」
と書いてあったw
ゴキブリはゴキブリで、やはり共生細菌の研究に用いられているようで、チャバネゴキブリや
オオゴキブリが今日のラボツアー用に展示されていた。
じゃああの飼育器に貼ってある「出没注意」とは、どういう意味の注意なのだろうか。
「もし、そのへんをゴキブリが歩いていたら脱走ゴキブリの可能性があるよ」なのか、それとも
「もし、そのへんをゴキブリが歩いていたら研究で使うから捕獲しといてね♡」なのか、普通に
「研究用と無関係の野生(?)ゴキブリが出てくることがあるけど、見つけたら退治しておいてね」なのか。
あとはあれか
「この飼育器がゴキブリ用です」という目印としてそのマグネットを使っているだけなのか。
っていうか、なんだあのマグネット。シールか?
これだった気がする……。
ゴキブリ出没注意ステッカーをなんとなく作ったので販売開始!
— 竜洋昆虫自然観察公園【こうしき】 (@_ryukon) October 1, 2017
ゴキブリ愛好家でもそうでなくても一家に一枚あれば安心の代物となっております。
僕はとりあえずりゅうこんと自宅に張っておこうと思います。 pic.twitter.com/P7gZUHTXvM
まさか……昆虫館行ってきたお土産ってだけでは……?www
面白くなってきたぞ。
研究棟の中をぐるーっと回って、研究室に来た。
研究用のトンボのヤゴがいっぱい飼われている。
ヤゴは肉食で、共食いをしてしまうため必ず1匹ずつでケースを分けて飼う。
ピンセットで摘んだイトミミズをケースに入れると、すぐにヤゴが食べた。面白い。可愛い。
参加者みんな「可愛い……」ってぼそぼそ言ってて面白い。みんな虫好きw
研究者の方が
「ヤゴの飼育より、イトミミズの飼育のほうが難しい」
というようなことを言っていた。
あぁ、それは色々な動物であるあるなやつだ、と思った。
さっきカメレオンの話を書いたけど、湿度や温度をちょうどよくしてあげるみたいなことを達成できても
食性の方に課題を抱えてしまうペットは結構いるよね。
例えばカメレオンだとコオロギを与えたりするんだけど、
「カメレオンに与えるための餌用コオロギも同時飼育するか、ないしは生き餌コオロギを定期的に買って来るか
コオロギの缶詰を購入して眼の前で動かして生きているように見せかけて食べさせる」
というようなことをする必要があったり。
フクロウとかの猛禽類だと、餌用のネズミやひよこなんかを冷凍ストックしておいて、解凍して与えたりする必要がある。
そんな風に、その動物にとって生きていくのに必要な食べやすいものを安定的に用意するのが、飼育の上で課題になるケースがある。
前にハエトリグモを飼ったとき、生きたショウジョウバエを用意して与えるのが大変だった。
だから、ネコ・犬・うさぎくらいの「専用ペレットが市販されている動物」は、それだけで
飼育難易度が低いといえる。
亀もそう。亀用の餌が売られているし、亀の雑食は半端じゃないから結構何を与えても食べるし
めちゃくちゃ丈夫で死ににくい。
虫だと、ゴキブリがそういう点で難易度低そう。
多分雑食だし、繁殖力があるから研究用に一定の数を確保するのにも良さそうだし、
温度や湿度などの環境変化にもそこそこ耐えてくれそうだ。
トンボについては、「シオカラトンボ(オス)の体表のワックス」なんかを研究しているらしい。
シオカラトンボは、成虫になると基本*オスだけがあの水色っぽい体色に変化するけど
(*:中には、メスでも同じように体色変化してしまう個体がいるらしい)
そのときオスのシオカラトンボの体表は紫外線を強く反射するワックスで覆われているんだって。
オスだけがそうなるのは、陽の光を遮るもののない池やプールなどで縄張りを主張するためという理由からではないか
などの説があるようだ。
昆虫の中には、紫外線が見えている種が多いとか聞いたことがある。蝶とか。
紫外線は、人間にとっては「目に見える波長の外側」だから紫外線なんだけど、
それが見えるっていうのはどういう感じなんだろうなといつも思う。
紫外線の向こう側にはどんな色があるんだろう。
紫外線を強く反射するということは、UVカットができるということで、UVカット化粧品の成分などに応用できるのではないか
とのことだった。
これまでのUVカット製品に使われていた金属系の成分には、発がん性が認められて使用に規制がかかったものもあるそうで
そういう場合に代替品が求められる。
そこでトンボだ!
…そこでトンボか!?
ここにすごく論理の飛躍があるように見えるが、全然飛躍していないからすごい。
研究者さんは、他にも蝶の幼虫を飼育中だよと言ってケースの中の芋虫を見せてくれた。
多分ツマグロヒョウモンだったと思う。
そしてすぐ近くにあった冷蔵庫から成虫の入ったケースを取り出してきた。
「常に冷蔵しているんですか?」
と尋ねたら、
「常温で出しておくと、暴れて羽が傷んでしまうので冷やしている」
とのことだった。
気温が低いと動きが鈍くなる、つまり冬眠状態みたいにして保管しているのかな。
アリを飼育したときも、捕まえてきたアリを一回冷蔵庫で冷やしてからケースに移したな、と思った。
ツマグロヒョウモンも何かの研究目的で幼虫から飼育しているのかもしれない。
これにも共生細菌がいるのだろうか。
説明がなかったので、ペットの蝶を見せられているような気持ちになってきた。
「これ。今飼ってる蝶。見て」みたいなw
ここの研究部門ではYouTubeチャンネルを運営していて、ここで色々な昆虫の生態や共生細菌の秘密に触れることが出来る。
みんなもどんどん共生細菌の謎に迫ってみよう!
昆虫はいいぞ。
共用講堂を出て情報棟の方を回ろうと思い、道すがらカフェ・食堂コーナーに立ち寄ってみた。
カレー食べてみたかったぜ!#産総研特別公開2024 pic.twitter.com/y72wDyNt1M
— (V)・∀・(V)かにぱん。🦀🍞@つくば (@kanipan666) October 5, 2024
カレーはしっかり売り切れていた!
カフェのハンバーガーはまだあったかも。ただものすごく混雑していた!
昨年は食べ物は何も用意されていなかったとボーリングコアのツアーガイドさんが話していたなあ。
今年は逆にそこに力を入れてカフェコーナーとかオリジナルメニューとか頑張ったみたい。
その結果、カレーは完売! 盛況で良かった。
食べてみたかったね、カレー。
去年、JAXAの社食(と呼ぶのだろうか)でカレー食べたし、産総研のカレーも気になる。
「産総研が機能性分析をしたたまねぎとショウガを使ったカレー」だよ。
食べたいよね?
情報棟の方にもニコ生ブースがあり、こちらもちょうどこれから使われるタイミングだった。
よく見たらヴェルタースオリジナルじゃねぇか! pic.twitter.com/VpnW30kHQk
— (V)・∀・(V)かにぱん。🦀🍞@つくば (@kanipan666) October 5, 2024
研究者の方を呼んで、研究紹介をしてもらったり、自分の研究を一言で表してもらったりしていた。
あとでTSをよく見よう。
情報棟には、昨年も見かけた「ソフトロボ」のブースなどが並んでいた。
他にも「リサイクル」の資源自動選別機とか「人間拡張」のVR、「土壌環境」の浄水実験などなど
その場で「これを使ってこういうことをする研究してまーす」を見たり触ったりできた。
このブースめっちゃ面白そう#産総研特別公開2024 pic.twitter.com/RuuoYWPyUH
— (V)・∀・(V)かにぱん。🦀🍞@つくば (@kanipan666) October 5, 2024
特に「メタンハイドレートを触れた」のは面白かった。
メタンハイドレート触って(摘んで)きた
— (V)・∀・(V)かにぱん。🦀🍞@つくば (@kanipan666) October 5, 2024
冷たいのに燃える!
しかも、指で挟んで耳元に近付けるとパチパチ鳴ってた!
「メタンハイドレート触ったことある」って割とパワーワードでは?w#産総研特別公開2024 pic.twitter.com/WHqcmhXQeg
メタンハイドレートは、近年よく耳にする単語となったけれど、それを実際にこの目で見て
触ったことなんかなかった、当たり前だけどw
映画くらいでしか見たことのない、炊飯器みたいな形の低温保管容器(アイアンマンに出てそうなやつ)みたいなところから
メタンハイドレートの合成ガスハイドレートが出てきて小鉢の上に盛られた。まるで盛り塩のように。
研究者さんは、
「ぜひ、指で摘んで耳元に近づけてみてください。パリパリという音が聞こえます」
というので、言われたとおりにしてみると「わたパチ」を食べているときみたいな音がしたw
そして、パチパチ言いながらいつのまにか溶けて消えていった。
めちゃくちゃに冷やしているだけあって、指で触ったときもかき氷のようなひんやりシャクシャク感があったのだけど、
部屋の灯りをちょっと消して、チャッカマンでガスハイドレート盛り塩に火を近づけると燃えた。
これが「燃える氷」と呼ばれる所以か。
世界広しと言えども、「合成ガスハイドレートをその指で摘んでパチパチ言わせられる場所」なんてのは
産総研特別公開以外にはなかなかないだろうな、と思った。
色々なところを少しずつでも見て回ったつもりだが、ほとんど話を聞けなかったブースも沢山あった。
ラボツアーも当然全部には参加できなかったし、また来年も今年とは違うものを見に来たいと思った。
情報棟内をふらふら歩いていると、カップルの女性が彼氏に
「こういうデートいいでしょ?」
と言っていた。
きっと彼女の方から誘ったのだろう。
「こういうデートはいいよね!」
と心の中で同意しておいた。
私自身はひとりでのこのこやってきたわけだがw
というか、来場者は男女半々くらいの印象で、女性お一人様も結構見かけたから別にそれは珍しくないんだけど
科学とか理系科目とかは男性のものだった時代があると思うので、色々考えるところがあった。
最近、『BOTANY MANOR』っていうゲームをクリアしたんだけど、このゲームがまさにそういう時代に
女性が直面した困難を描いている側面があった。それだけがテーマのゲームじゃないけど。
このゲームには、植物学の研究者である女性が出てくる。
時代は19世紀後期の設定なのだけど、主人公は祖母が遺した植物研究の跡を継ぐ形で
希少な植物を開花させていくというようなゲーム展開になっている。
祖母の遺した資料や手紙のやり取りなどを見ると、植物学者としての祖母が「女性であるがゆえに」
困難に直面していたことが窺い知れるわけだ。
「植物学はお遊びじゃないので、女性は学会になんか参加できませんよ」
と学会から門前払いされた手紙が出てきたりね。
それに反論するかのように、希少な(架空の)植物の情報収集をして、実際に開花させ
最後はその研究を本にまとめて学会に送ると……みたいな話。
それに、これは私自身の経験としてだけど、うちの祖父はそういう時代の価値観の名残を引きずっていて、自分の子供や孫に対して
「男は理系大学へ進め、女は高卒か専門学校」
ということを半ば強制してくる人だった。
父は文系大学に進みたがったが祖父は認めなかったので、父は家を飛び出した。
私の代だと、いとこ全員見渡しても女性で大学進学したのは私だけだった。
私が高校時代、大学進学を目指して親もそれを推進していたとき、実は祖父は反対していたらしい。
「女が大学行ってどうする?」と。
父は自分が行けなかったから食い下がってくれたようだ。
そういうことを考えると、女性だからという理由で知から遠ざけられてしまうことがない
今の状況や環境や時代はいいよなぁと思う。
もちろん、世界にも日本にもまだそういう問題が残っている場所はあるんだろう(私もそうなるかもしれなかった)けど、
今よりもっともっと酷い時代があったんだろうなあと思うことがある。
女の人が、自分で「行きたい」と思って研究所の一般公開に一人で参加しても、
「別にいいんじゃない?」で済む(誰も気にしない)風潮、実は昔に比べたらすごい変化なんじゃないかなと思うことがあるのだよね。
況や、女性の方から誘って参加するカップルをや!
それに、みんな休みの日にわざわざ知的好奇心を満たすために研究所に足を運ぶような人々であり
そういう人たちの中にはマナーが悪い人が全然いない。
知という娯楽、めちゃくちゃ治安良い。
楽しむために来たのに嫌な気分になった、ということがないのだ。
これもすごいことだと思う。
私は産総研の人たちも来場者のみなさんも尊敬する。
こういう素晴らしい場所だから、来年もまた来たいと思える。
無料でこんな素敵な経験が出来ていいのだろうか。振り込めない詐欺じゃん。
という万感の想いで帰宅した。
秋は、産総研のみならず色々な研究所が一般公開日を設けるので、つくば市の秋は知の娯楽で溢れている。最高。
科学マンはみなつくばに遊びに来るべき。
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