術後2週間経過し、ハミング療法を続けながら上皮再生を待つ。
負荷をかけるボイトレまでは遠い。


・6月21日

腫れや炎症なく、15日で術後きっかり2週間を迎えるということで、14日の診察では
「ハミング以外の軽い受け答えもOK」
とされたが、2週間から3週間経過までのこの1週間が、一番活発に上皮が再生するので
負荷を増やさないように心がけるとの注意だった。
そのため14日(金)から21(金)までは、引き続きハミングのみの発声とした。

そして21日の診察、久しぶりに口から入れる高精細スコープ!
どんなに頑張ってもやっぱりえずくことはある!
口から、何かが喉の奥に向けて入っていくと思うだけで、無意識に口を閉じたくなってしまうから
口腔内が狭くなって余計にカメラがえずきやすいポイントに当たってしまうというのもある気がする。
頑張って口を開けているつもりではいるんだけどもw

声帯の動きをスローで見ると、術前と動きが違うのがわかる。
これが、結節に阻害されない声帯本来の動きなのだろうなぁ。
なんというか、結節があると結節が最初に出っ張ってくるような動きになり、
左右対称でないけど、手術で結節を取ったら声帯が左右対称にまっすぐ閉まっていくのがわかり
初めて「正常な状態」を知ることが出来たw
術前と比較で見ることはできるか尋ねてみたら、「あとで動画を送る」とのことで、
帰ってからメールで受け取った。
手術前日の動画と、今日の動画2本、ファイル便で。

それと、病理組織検査の結果が来たということで紙を渡されて説明を受けた。
これは、ポリープなどを切除した後に、実は悪性腫瘍が関係していたというようなことがないかをチェックするために
切除した細胞そのものを化学分析する検査だ。
私の場合は、悪性のものは何も見つからなかったんだけど、興味深いのは、この検査によって
結節がどうして出来上がったかの推測が、より的確に出来るっぽいことだった。
切除したパーツにどんな成分が入っているのかを見ることで、ある程度の長い時間をかけて
凝り固まっていった結節なのか、どこかのある一回のダメージで急激にできたものなのかがわかるようだ。
私の場合は、「フィブリン」という止血のための分泌物が溜まって出来ていることが判明した。
フィブリンは血液の凝固に関わるタンパク質らしい。
この結節は、長年声を使ってそのダメージが溜まったのではなくて、
あるタイミングで声帯から出血するような大きなダメージを1〜少数回受けて
その止血のためのフィブリンが急激に分泌、析出、結節化した……というものらしい。
発声による負荷で結節が出来る場合は、フィブリンの析出ではなく別の反応が見られるみたいだ。
私の検査結果だと、
「上皮に肥厚増生の像は明らかではありません」
って書いてあるんだけど、逆に発声の負荷で時間をかけて結節またはポリープ化した場合は、
「上皮に肥厚増生」というものが認められる結果が出るということなのかもしれない、と思った。
一方、そちらのケースでは「フィブリンの析出を認めます」にもならないのだろう。

なので、私の場合の結節発生経緯としては、おそらく去年の春先に(去年は確か4月7日からだったか)
ヒノキアレルギーによる喘息で咳やくしゃみを連発しているときに、
どこかのタイミングの強い咳かくしゃみにより、声帯が出血するダメージを受けてしまい
その止血のために頑張ったフィブリンくんが、その場にたむろしていたという感じなのだろう。
つまり、再発防止を心がける上では、声の出し方に気をつけるよりも、
手術後みたいに、咳やくしゃみを極力我慢する方が良いと私は思うし、先生もそう仰っていた。
もちろん、声を出す負荷に関しても、ちゃんとケアするに越したことはないけれども、
咳やくしゃみのダメージというのは、看過できないものだなぁと思った。
まぁ、声帯に痛覚神経がないから声帯そのものが痛みを感じることがないとはいえ、
強い咳やくしゃみをしたときに、喉にピシっというような衝撃が走ってしばらく痛みが残ることはあるわけだし
声帯そのものが痛みを感じなくても、その周りが痛みを感じているのであれば
声帯だってそれなりのダメージは受けているだろうね。

この1週間で、どうしても我慢出来なかったくしゃみが2回あったんだけど、
くしゃみも「ダメージの少ないくしゃみ」っていうやり方がありそうだなと思ったw
無理に堪えると、堪えた上でなおくしゃみが出てしまった時に、なんか変な出方をして
「えぇぐしゅ!」
みたいなのが出たりする。
もしかしたら、普通に今まで通り「はっくしょん!」って言ったほうが良いのかもしれないw
「はっ」のときに、一瞬だけ強い発声になってしまうけど、「えぇぐしゅ!」より良さそうと思う。
「えぇぐしゅ!」のときは、「はっくしょん!」よりもなんかあちこち痛くなるしねw
痛いってことは、多分よくないってことだと思う。
あと、単純に、咳も出来るだけしないようにしたい。
喘息のときはかなり難しいことになるけど、喘息の発作が出ないようにすることと、
どうしても出てしまったときは咳を我慢しながら、早く収まるように対処するしかないな。
映像をTwitterにアップしてここにツイートを埋め込もうとしたら、映像がセンシティブ(!)だったのか
正常に作動しないので、ツイートへの直接リンクにするしかないw

等倍速の映像
ファルセットで「エーーー」と発生し続けているときの動き
時々声帯がパカっと開くのはブレス

スロー再生にしたもの
左右の結節が交互に出っ張ってくるのがわかる。
左の結節が出てくる時は、右は引っ込み気味になるから平らに見え、その逆もまた然り。
ここが結節。ここの動きに注意して動画を見ると、ここを起点に声帯が閉まる動作を開始するのがわかると思う。
結節(右)結節(左)

・6月22日

「長時間」と「強い」発声は引き続きアウトなのだが、追々長時間や強い発声に移行していくために
段階的に読み上げのリハビリを始めるべきだと思う。
声帯周りの筋肉もだけど、表情筋が衰えないようにしないといけないし。
ということで、長時間でも強い発声でもない形で『外郎売』を、ゆっくりと静かに、だがしかし確実に読み上げる
というリハビリを開始。
30分に1回のハミングタイムを、「あめんぼあかいなあいうえお」にするのも良いな。
まぁ手術の前も表情筋のために、「あめんぼあかいなあいうえお」は日に数周唱えていたけどな!

ここで、「MOTHERのおんがく。」という、ほぼ日MOTHERプロジェクトによる
MOTHERシリーズ初の公式音楽イベント(オンライン)が開催されて
それを見ていたら、色々歌いたくてたまらなくなったw
もちろん、歌おうにも満足に声が出ないのが今の状況だけど、沈黙療法期間中にこのイベントが開催されなくて
ある意味よかったと思ったw
こんなの口ずさんじゃうよ〜w


・6月25日

ニコニコで活動を開始してから17年目の記念日となる。
私も活動休止中ではあるが、ニコニコはサイバー攻撃でダウン中だから、記念動画を作れないのみならず
仮に作ったとしてもニコニコにアップできない。
数奇な運命だ!

それにしても、喉……というか声帯の乾燥が気になる。
カフェインは摂らないようにしているので、飲み物は水か、お茶だとしても麦茶・ルイボスに絞っている。
あとはスチーム吸入もしているし。

術後10日くらいのときに、ハミングしていたら日に日にハスキーさが取れてきた感じがしていたのに、
最近は、またはハスキーになってきたと思う。
ハミングを減らしたから却って良くないのかな。
かといって、負荷をかけるわけにはいかないので、もうしばらくゆっくりめのリハビリで進んでいく予定。
次の診察のときに先生に質問してみるつもり。

ハミングだけでなく、たまに「あめんぼあかいなあいうえお」を最後まで暗唱したりしているんだけど
ちょいちょい声が裏返るような感じが、手術前と同じなのも気になるが、
これが時間経過で取れていくならよし、そうでないなら……手術した箇所と違うところに異変がある
ということにならないだろうか。
特に「はとぽっぽほろほろ」の出だしの「はと」とかは裏返る感じだ。
キーにもよるけど、強い発声をせずに、ファルセット移行するあたりの音程で「はとぽっぽ」と言ったときに
最初の「は」がおかしなときがある。
毎回ではなくムラがあるのでなんともいえない。


・7月3日

ちょっと用事があって市役所へ行き、担当の人たちと小一時間喋ったんだけど、
そんなに私がメインで喋る感じではなくて、職員さんが喋り、私は聞くか、軽く受け答えをする程度だったのだけど、
それが終わる頃には声がしっかり嗄れたのを感じた。

1時間ぶっ通しで、独壇場で喋ったわけではないのに、嗄れてしまうというわけ。
まぁこれも完全復活していないからだと思うけど、翌日が病院なので一応先生に報告して、
それ自体に問題がないかどうかは確認しておこうと思う。

軽い鼻歌くらいは口ずさむことがあり、これも全然力んでいないんだけど、
音がポーンと急に上がるところとかは、手術直前と同じような、声がビリビリっとなる症状もある。
これについても、気に留めておきたい。


・7月4日

診察の日。
6月いっぱいは、手術から1ヶ月間の期間にあたるので週1〜2回のペースで病院に行っていて
何より交通費がかさんだ……。
往復で約3500円かかるのを、ひとつきの間に6回くらい移動したわけだからなあ。
それに、そういう日は結果的に外食をして帰って来ることもあるから、食費も少しかさんだと思う。
それがやっと2週に1回のペースになったw

とはいえ、今回の診察では「術後1ヶ月目の録音検査」があったので、診察料が高かったw
前回は400円とかだったのに、録音検査の分が乗っただけで6500円に!!!w

でも、この録音検査、手術前日に行ったものと比較できるので、特に息漏れがどのように変わったのかは
私としても興味津々であった。
声そのものは、あと2ヶ月くらいは時間をかけて調子を取り戻していく必要があるので
今の段階で「おお、前みたいに声が出しやすい〜」とはならないのはわかっている。

ということで、手術前日に読み上げたのと同じ原稿を読む。
やはり、何箇所かで声が裏返ったり、息が続かない感じがしたりというのはあったけど、
結節があった間に、
「頑張って息を沢山吐かないと声が出ない」
という状態に適応するため、多めに息を使ってしまう癖がついている部分もある気がする。
単純に、「息漏れがどのくらいしているか」に関しては、読み上げ時の自覚症状的なものを比較するより、
例の「紙の筒を咥えて声を出して息の出を計測する機械」を使った機能検査の方が
数字で如実に表れるからこれを見たほうが早い。

というわけで、これが手術前日のやつ。(再掲)
IMG_1728

そしてこちらが、手術から1ヶ月経過した今日の結果。
見比べるべきは黄緑の枠線で囲った項目「呼気流率」と「呼気圧」。
機能検査手術後02

「楽な発声1・2」において、呼気流率200未満というのが正常の範囲内ということになっているらしい
というのを以前の記事に書いたが、手術前日の検査では200をゆうにオーバーしているので
やっぱり結節の影響で声帯がしっかり閉じていないから、無駄な息が漏れているね、という話になった。
それが今日の検査結果を見ると、楽な発声1・2で呼気流率は191.8と179.0。
200未満の正常値になっている。
それに、「大きな発声」も、手術前は307だったのが今日は243。
むしろこの数値は、手術前の「楽な発声」くらいの呼気流率だ。
つまり、手術前日は、今大きな声を出そうとした時に吐き出すのと同じくらいの量の息を出さないと
楽な発声すら出来ない状態だったわけだな。

呼気流率の下の「呼気圧」というのは、息を出すのにどのくらい力んでいるかの指標みたい。
これも軒並み低下している。
手術前は、声を出すのにすごく力んでいたことがわかる。
力まないと「その声」が出なかったのでしょうがなかったんだけどw
「大きな声」の呼気圧の低下は特に著しい。
なんせ、手術前より「声の高さ」と「声の強さ」が上がっているのに、呼気流率と呼気圧は下がっているのだ。
いかに、手術前、大きな声を出すのに力んでいたか、そして力んだ挙げ句に無駄な空気がダダ漏れになっていたことかw
これを見るとよくわかるというもの。
その他、高い声、低い声などすべての発声において、呼気流率も呼気圧も低下しているので
声を出していてすぐに息が続かなくなるという弊害は解消されたのだと思う。
ただし、今はまだ、声帯が「長い間休んで、筋力が落ちたような状態」だから、息に無駄がなくなったとしても
しっかりした声が出ないけれど。


そんなわけで、先生に、最近の状況を伝えてみると
・ファルセットに移行する上のミ・ファくらいの音階で声がビリビリすることがある。
→一時的なものなのでリハビリしていく中で解消されていくはず。
・声が嗄れやすい。1時間程度、小さな声で軽い受け答えをしていただけで嗄れてしまう。
→今は、喉を長期に休めていた後なので、「やわな声帯」になっている状態。
 徐々に負荷を上げていくことにより、血管が太くなっていき負荷に耐えられるようになっていく。
・どのくらいから、負荷をかけるトレーニングを始められると考えておくべきか?
→術後6週間目までを安静にすれば、そのあとは何をしても大丈夫になると思っていい。

つまり、再来週の頭(7/15)くらいから、ボイトレを始めて「負荷をかけるために負荷をかける」
というのを始めていいという感じだった。
もちろん、いきなりすごい負荷をかけるのではなく、徐々にブーストしていく感じにしようと思うから
今やっている、「強くない、高くない声で30分に1回、1分間のハミングをする」とか
「思い立ったら”あめんぼあかいなあいうえお”を全編暗唱する。もちろん強くない発声で」
というようなのを、再来週の頭以降は「アクティブレスト」扱いにすると思う。
つまり、そのあたりからごく基礎的な発声練習を開始して、ロングトーンの長さを鍛えるとか、
音域を拡張していくとか、ゆらぎのない発声のために土台をしっかりさせるのに必要な負荷を増やしていく。
これは合唱団の頃に、「歌を唄う前に基礎練でやっていたこと」をまた総ざらいしていく感じになると思う。
その中で、筋トレ後のクールダウン用とか、疲労が蓄積している時の休喉の合間に
ハミングや「あめんぼあかいな」をするのが良いと思う。

私は、手術前にも、声をどうにかしたいというより、
「かなり力まないと出したい声が出ない。
それというのも、無駄に息が漏れてしまうため。
手術では息漏れ問題を解消できれば、声そのものに関することは、再度トレーニングして取り返す」
というつもりでいたので、今日の検査で息漏れ問題は手術の結果かなり解消されたことがわかって
ボイトレを始められそうな時期も明確になってきたのが、かなり大きな進展だなと思う。

元々、休業は手術から「最低」1ヶ月半と言われていて、その1ヶ月半が経過するところで
ようやくボイトレが始められるわけだから、その最低ラインである術後1ヶ月半のタイミングで
仕事に復帰するのは、かなり「本調子でない」状態になるであろうことがわかった。
というか、きっとそうなるだろうと思って、取引先には「早くて8月頭の復帰です」と伝えてあるしな……。
それだって、7月15日からボイトレを開始して半月でどこまで「従来通りに案件できますよ!」という
声の状態を取り戻せるかがわからないから、復帰が延期になる可能性だってなくはない。
声帯の手術を受けてリハビリをすること自体が初めてだからねw
それに、個人差もあるから「他の人はこういうペースでいけた」としても、自分も全く同じような
展開でいけるとは限らない。
強いて言えば、元々の結節があまり酷いものではなく、手術も大成功だったのでここまでの経過は
考えうる最善なのだが、それでも初めてのことである以上、経験則から
「ここからこういう展開になっていくってわかってる」
とは言えない。

少しだけ自信が持てるのは、手術後の組織検査の結果
「発声が良くなかったから結節ができたわけではない」
とわかったことかな。
ポリープの出来てしまった人とか、もちろん結節もだけど
「声の出し方が病気の原因になっているから、声の出し方を変えていかないと再発する。
根治のためには、術後に発声そのものを見直しましょう」
って話になる場合もある。
でも私の場合、少なくとも普段の発声そのものは病気を引き起こすようなものではないみたいだから
そこはある程度自信を持って、
「よく通る、負担の少ない発声」
を、取り戻せると思う。
元々やっていたことなのだから。

そんなわけで、あと丸1週間ほど、安静を重視した生活をしたあとは、
なるべく早い業務復帰と歌収録のために徐々に負荷を増やすフェーズに移る予定。
そこでは、また改めて声を録って行こうと思う。
沢山息を出さないと声が出しにくかった期間は半年くらいあったので、
その期間にいっぱい息を使う癖がついてしまったと思う。
まずその癖を抜いて
「最小限の息で通る声を長く出す」
というブレスパフォーマンス向上を重視してやっていく予定w