最近別の記事でも書いたのだけど、9月下旬くらいから声の違和感があって、
それが日を追う毎に、どんどん症状が顕著になってきたため、色々調べたりかかりつけの耳鼻咽喉科に行ったりしたんだけど
ここで一旦、経過と私の分析内容をまとめておきたい。

(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)


・はじまり
自分の声や発声の違和感に自覚を持ったのは、9月下旬に行ったスタジオ案件で出たリテイクだった。
「ティーの息が、鼻から抜けている」
と。
自分でも、なんだか「プスン」と息が鼻や喉や耳から抜けて行ってるような感覚が
(殊、特定の子音の発音のときに顕著に)あって、今までそんなようなリテイクが出されたことがなかったのもあって
「何かちょっとおかしいかもしれない……?」
と思い始める。

その2日後に、生放送で歌枠をやった。
そのときはまだ唄えていたけど、強いて言えば、息は切れやすいと感じた。


・仕事にどんどん支障をきたす
2ヶ月かけて徐々に喋り声や読み上げの方でも「なんだか思い通りにならない」ということが増えた。
「元気に明るくハキハキ」みたいな読みを要求されることが多いし、自分もそれが得意分野のつもりでいたのに
これがものすごく苦痛!
そういう声を出そうとしても、裏返るばかりでハリのある通る声が出ない。
そして、なんとかそういう声を出せたとして、体のあちこちにいつもと違う力を入れて
試行錯誤してやっと出すもんだから、収録が終わると汗だくだったりした。
力むからというのもあるけど、思い通りにならない焦りでハラハラ緊張するような汗も混じっている。

それに宅録の案件で、そうやってやっと録ったものにもリテイクが来ることがあった。
それが読み間違いとかではなくて、やっぱり「どこからか息が漏れている」ことにより
要らぬところでhの子音が入っているような発声になっているから
部分的に直して欲しい、というような内容なのだ。
自分だってそんな風に聞き取れてしまうような発音や発声はしたくないし、
今までそんなリテイクが来ることはそうそうなかった。
例えば、よほど季節的に鼻が詰まるシーズンで、「鼻声のところがある」とかはあったけど
今はそういう時期でもない。
ただなんだか上手く言えないけど、自分の声が突然「掴みどころのないもの」になってしまって
自分で制御できなくなっている感じ、としか言えないのだ。
喉や表情筋で「こういう風に筋肉を動かせば、こういう声が出るはず」と覚えている通りに声を出している”つもり”なんだけど
そのイメージしている声が出てこないのだ。


・歌があきらかにおかしい
11月になって、歌を録ろうとしたときに、思うように声が出ないことに気付いた。
息が次のブレス位置まで続かないし、何よりコロコロ裏返ってしまって音程が取れない。
ハスキーな気もする。
喉の病気といえば、声帯結節やポリープなどがあるが、痛みや発熱、腫れなどの自覚症状は感じていない。
それに、声の仕事をしているといっても、そんなに喉に負担がかかるような過酷な案件を
日々こなし続けているわけではない……。
むしろ一人暮らしで会話の機会は少ないから、自分から積極的に喋ったり発声したり唄ったりということをしないと
喉がなまるのでそちらの方が問題なのではないかと思うこともある。
コロナ禍で、喉の筋肉が弱った人が多いというニュースも見た。
その関係で、耳鼻科には以前に比べて2割ほど、声に関する相談者が増えているのだとか。
その記事では、声帯を閉じる筋肉の衰えを予防・改善するためにこういうことをするといいよ
みたいなものも載っていた。
私は、カラオケでひとしきり唄うなんていうことも最近あまりないなと思って
(家で好き勝手唄うか録るかするので)
自分の喉が衰えた可能性を疑って、カラオケに久しぶりに通い出した。
バンド活動とかも今はしていないしね。
カラオケで時々は強めに声を出すというのがリハビリになればよいし、
そうでなかったらさらに調べたり検査を受けたりしようと考えた。

で、カラオケに行ってみると、やっぱり声が裏返りまくって音程が定まらないし、
息が続かないからロングトーンが伸びないし、高音は疲れて息切れと疲労がすごいしで
「いくらなんでも、9月には歌枠4〜5時間とかやってたのが、
1ヶ月やそこらで、歌う体力がこんなに急激になくなるわけはない」
と思った。
さすがに呼吸器系や咽頭の疾患なのではないか? と。

それで声帯結節がある場合のセルフチェック項目を調べてみたら、息をめいっぱい吸って
「あーー」
と声をできるだけ長く出し続けた時に、喉に異常や疾患のない人なら15秒は容易い
だから逆説的に、15秒以上伸ばせない人は高確率で疾患を抱えている可能性がある
というのを見た。
そこで「あーー」と言ってみたら、どう頑張っても13秒しか出し続けられない。
発声を変えて、ファルセットの小声にして、息をなるべくキープするように心がけても
なんと10秒しか声を出し続けられない。
15秒音を伸ばし続けるようなロングトーン発声を要求される曲なんて、VITASの「ジャマイカ」くらいしかないかもしれないけど
でも、正常な人ならただ「あーー」と伸ばすだけなら15秒は余裕だというし、
かつては自分もそうだったような気もする。
合唱団のトレーニングで、そういう基礎練習はあったので。
じゃあ、声帯結節ということだろうか? と思ったけど、そのタイミングはちょうど病院が休みだったので
1日おいてからかかりつけ医に行ったのだった。


・耳鼻咽喉科で経鼻スコープ入れて診てもらった
とりあえず、結節やポリープのたぐいならば、内視鏡で見ればわかるものなので
病院に行ってスコープを飲んだ。
3回位吐きそうになった。
声帯の撮影だから、胃の内部を見るための内視鏡検査よりはマシなはずなのに……。
喉の、一番吐き気に関わるであろう部分にツンと当たるたびにゲロロと言ってしまった。
絶食してから行って良かった。吐こうにも胃に物が入っていないぜ。

その結果、ポリープも結節もない、という話だった。
そりゃ、声を生業にしていない人と比較したら、若干硬くなっているように見える、とはいうが
でもそれは病的なレベルではないらしく、正常の範囲。
だから結節やポリープによって声の具合がおかしいわけではないという見解になる……。
でもすでに2ヶ月ほど仕事に支障をきたしていることは事実だから、
「気の所為じゃない?」
で終わりにするわけにもいかない。もう問題は起こってしまっているのだ。
この仕事をしている人間でないなら、そこまで深刻でなかっただろうが。
(そして皮肉にも、この仕事をしている人間でないなら、発症しない疾患でもあると思うが)


・「日本語歌唱不安定症」に近い
かかりつけ医から、声を専門にする都内のクリニックへの紹介状を書いてもらうことになった。
それに並行して、自分でも声の病院にはどんなところがあるのか探してみることにした。
どやが、こういうのがあるよと送ってきたリンクのひとつで、気になる項目があった。
日本語歌唱不安定症について」だ。
ここに書いてある症状が、私が抱えているものにそっくりそのままだ。
引用
 もっとも典型的な症状は、歌っているときに声が裏返ってしまうというものです。しかも、地声高音のテクニック的な限界付近ではなく、男性だと真ん中のド〜ミ(C4〜E4)周辺、女性だとそれより半オクターブ高いあたりの、それまでは全く無理なく出せていたような高さを地声で出そうとすると、不安定な裏声になってしまいます。はじめは歌詞の中の無声子音(カ行、サ行、タ行、ハ行)の後に少し裏返る程度ですが、場合によっては無声子音の後や、歌詞をのせない発声練習でも症状が現れるようになります。多くの場合、上昇する音の入りだけに症状が出ますが、長引くと持続音の途中でも症状が出現するようになります。「裏返り」というのは、本来地声で発声するべきところが裏声になるわけですから、内喉頭筋の働き方で言うと、地声を出すために収縮すべき内筋(甲状披裂筋)が、声を高くするための前筋(輪状甲状筋)の収縮との拮抗状態を保てずに弛緩してしまう状態だと考えられます。
 典型的ではない似た症状として、裏返ることは少ないものの、音の入り際に息が抜けてしまう状態になる場合もあります。スタカートが極端に苦手になる状態です。この場合、本来は呼気の開始と同時もしくは先行してに起こるべき声門閉鎖が遅れた状態と考えられ、声帯を開く側筋(外側輪状披裂筋)に緊張が残り、弛緩が遅れた状態と考えられます。


これだ。
ここに書いてある症状すべてに心当たりがある。
声が裏返るのは、以前だったら無理なく唄えていたはずの地声の声域だし、
単語やフレーズの頭は息が抜けて音にならない。
それに、ファルセットはファルセットで出せる。

それから、こういう項目もある。
<イヤモニの普及は根本原因ではない>
近年、ライブコンサートの現場ではインナーイヤーモニターいわゆるイヤモニが普及し、時を同じくして日本語歌唱不安定症も増加しているため、イヤモニがその原因のように語られることがあります。実際、日本語歌唱不安定症の歌手は、モニタリングの状況で症状の出方が大きく変化します。イヤモニをする方が症状の悪化する人もいれば、軽快する人もいます。
(中略)
複雑な運動調節には、単なるアウトプットではなく、感覚フィードバック調節も重要な役割を果たしているということの表れだと考えられます。



・原因として思い当たる節
とりあえず、「日本語歌唱不安定症(仮称)」を今発症していることの原因として、私個人としては
思い当たる節が3つくらいある。

1,椅子の買い替え
2,花粉症シーズン終了後も後鼻漏が続いている
3,部屋の反響がない

1と3は2月の引っ越しに付随して、前の住居のときと比較して変わった点であり、
症状が出始めたのは、この変更点が加わってからちょうど半年経ったとき、と言える。

椅子は、事務用PCデスクから、初めていわゆるゲーミングチェアに買い替えたのだけど、
座面の角度がうっすらと「尻に行くほど低くなる角度」になっている。
背筋をピンと伸ばして座った時に、足の付根の関節が鋭角になるといえば伝わるだろうか。
これだと腹式で発声する時に腹に力を込めにくいと感じる。
そうすると、自然と胸式の発声に傾いて行って、腹式呼吸と腹式発声のやり方を忘れそうだ、と思った。

次に、本題の3で、部屋の反響の件なんだけど、引っ越す前は畳の和室で、引っ越した後がフローリングの洋間だったもんで
引越し前は特に部屋に遮音に関するものを取り付けなくても大丈夫だったのが、
引越し後は「室内の反響が多く収録に乗ってしまっているのでこのままだと案件を飛ばせない」と言われてしまった。
以前の部屋と同じくらいまで反響量を減らしてくれ、と。
仕事がもらえないと死んでしまうわけだから、3月くらいに沢山吸音材を壁に取り付けた。
それについては3月のブログに書いた気がする。
その結果、多分前に住んでいた和室よりも反響を減らすことに成功して、
無事案件ももらえているわけだが、案件がもらえても声がうまく出せないんじゃそれも困る。

上に引用した「日本語歌唱不安定症は”イヤモニが原因”説とその否定」なんだけど、
私は、私のようにスタジオで喋り声や歌を収録する機会が多い人、それにそういう環境に長く身を置く人に
この症状は発現するものなのではないか、と考えている。
問題はイヤモニではなくて、「反響が極端に少ない部屋」という点なのだ。

反響が少ないと、自分の声が「響く声」になっているかどうかが2重にわからなくなる。
まず、響く発声をちゃんとしても、しなくても、部屋の構造上その声は「響かない」からだ。
そして、響いているか響いていないかが「反響から聞き取れない」。
つまり、「現に、その環境内で音が響かない」ということと、「フィードバックが弱すぎる」という2点が重なって
「自分の声が響く発声」のやり方がわからなくなるというスランプに陥る。
前はそれを知っていて、体得していて、現にできていたのに。
これが、この疾患の本質のような気がする。
だから、イヤモニをすることで一時寛解する人もいるかもしれないけど、そうでない人もいるし、
私も、家で何度か調子を確認するために、イヤモニを付けて唄ったり、外して唄ったり、比較してみた。
でも、それではあまり良くなったと感じることはなかったし、しないよりは少しマシになっているかも、くらい。
でも、イヤモニから返す自分の声にリバーブをかけたら、途端に「声が通る歌い方」を思い出してきた。
つまり、「自分の声に反響をつけて、耳にフィードバックしたら」急に、前どうやって声を出していたか
思い出しかけてきたということ。
ただ単に私が部屋でイヤモニを付けてもそれがリハビリや改善に繋がらないのは、
「イヤモニから返ってくる音は、イヤモニをしない場合に比べて”ボリュームが”大きくできるだけで、
部屋の反響のなさをそのままフィードバックしている」からで、
反響の少ない音を大音量にして返しても効果がないということ。
これは「イヤモニ原因説と、その否定説がある」のとも整合性が取れる気がする。

作業部屋ではなく台所とか風呂場みたいな、声の反響が多めのところで鼻歌を唄っているときは
鼻歌程度だからというのもあるかもしれないけど、声が鼻腔に響いている感覚もちゃんとある。
声が通っている。
それに、なんとロングトーンが20秒いける。
部屋が違うだけで!!!
目では見えないけど、それだけ声帯周りの筋肉の使い方が、響く部屋と響かない部屋では異なっていて
響かない部屋だと、自分の声が現に響いていないし聞こえも悪いから、多分息を無駄に使ってしまったり
声帯を閉じる筋肉の使い方がわからなくなっていると思う。
それで無駄に息が漏れてロングトーンができない。
声が響く場所では、変な力み方をしなくても声が響いている実感があるから、無駄な息が漏れないのだと思う。


2の後鼻漏は副次的なものだけど、「慢性上咽頭炎」の症状ではないかと思う。
寝起きなどはよく、鼻と喉のぶつかる地点(口蓋垂のすぐ上あたり)で、粘膜同士がひっつきあい
粘り気の強い鼻水とも痰とも言えない物がこびりついているような感覚があるので
日に1度は鼻うがいをするのだけど、慢性上咽頭炎に対して鼻うがいは良いらしい。
良いといっても、それだけで完治させるほどの効果があるという意味ではなくて、
おそらく悪化・進行速度を遅くするというようなレベルだけど。
まぁそれでも、慢性上咽頭炎なんだけど、多分毎日鼻うがいをするおかげでそんなに酷いわけじゃないという状態で
だからこそ耳鼻科で見過ごされてしまうのかも……。
これを治療するのに効果的な「Bスポット療法(EAT療法)」とか「6スポット療法」とかをやっている耳鼻咽喉科は
限られているようだし。

上咽頭付近に息がぶつかって、それが鼻鳴りというノイズになって収録されることがある。
サ・ザ行で多い。
そしてそれをいちいち録り直しているので、収録に時間がかかる。
これがなければもうこの収録終わっているはずなのに、と思うことがある。
上咽頭のむくみがなくなったら鼻鳴りを減らせるのではないかと思っているし、
鼻腔に声が響きやすくなるので、無駄な息を吐かなくて済む気もする。
それにそもそも上咽頭炎で付近の粘膜がむくんでいるなら、その周辺は空間が狭くなっている。
それを単純に広げるだけで、ナ行やマ行が鼻声っぽくなりやすいのも治るし、
サ・ザ行で鼻鳴りがするのもなくなるし、良いことしかないように思うので
EAT療法は受けてみる価値があるんじゃないか? と考えている。


・まとめ
取引先から
「今後歌案件増える可能性があるって言ったら、どういう範囲まで受諾可能ですか」
と訊かれたタイミングで、ちょうど調子を狂わせることになっていて、
「もしかしてこのあと、趣味の範囲でも死ぬまで歌動画作れないのかな……」
と酷いケースを想像したりもしたんだけど、とりあえず結節やポリープがあるから
手術です、という展開にはならなくてそこは安心した。
でも、今の環境で頑張って声を出そうとすればするほど、喉には良くない負担が蓄積していく気はする。

そこで、しばらく仕事のときや、部屋で歌うときには、返しにリバーブが掛けられるオーディオIFで
反響のある自分の声を聞きながら勘を取り戻すというのをやってみようと思う。
自分にはリバーブがついて聞こえるけど、収録にはリバーブは乗らない、という風に設定すればいいだけだし。

あとは予約が詰まっていて、通院できるのが結構先になるけど声のクリニックで診察とEAT療法を受けてみようと思う。


そして、あまりそういう心配はないと思っているんだけど、壁や天井に吸音材をつけて
部屋の反響を極端に減らしている人、反響の少ない場所で唄ったりする人は、この疾患に注意してください。
気をつけてくださいって言われても、「吸音材を貼りすぎない」くらいしかないだろうけどw

いやー録音のためには反響が多いと加工しにくくなるので、収録ブースは通常反響かなり減らされていると思うんですよ。
前に、赤坂だったかな、私の前の部屋より余裕で反響あるスタジオで収録したことがあって
そのときは「こんなにガンガンに響いてていいんか……?」って逆に戸惑ったんだけど
そっちの方がレアケースな気がするしw
で、反響の少ない部屋で暮らしたり、作業を頻繁に行ったり、声を出したりしているうちに
声の出し方が変わって、喉に負担のかかる、高音の出せない発声法が自然と癖になっていくというのが
この疾患だと思うんですよね!
私は、反響あると仕事請けられないので作業部屋の環境自体を変更することはできません……。
だから、前の声の出し方を思い出していくしかないんですけど。


私としては、一番不安なのは仕事で、次に不安なのは「趣味レベルですら好きに唄えなくなること」なのだけど、
リハビリ方法はしばらく「リバーブをつけた返しアリで唄う」で行ってみる。
次の歌動画はいつ出せるかさっっぱりわからんw