※この記事は2021年10月にブロマガがサービス終了となることを受けて、ブロマガから当ブログへ移行したものです。


この物語は
Twitterでかわいいツイートをする人に1年話しかけ続けたらbotだった
から着想を得たSFショートショート作品です。
登場人物等はすべて架空の人物であり、実際の質問者さん等とは無関係です。




(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)・∀・(V)


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 T氏は、ウェブでTwitterというSNS(ソーシャルネットワーキングサイト)を利用していた。短文を投稿して、お互いにそれを読んだり、自由に話しかけたり、またそれに返答することなどが容易な、交流ツールである。

 そのSNSには、有名人・著名人等も多く参加していたため、T氏も初めはそういった人物の呟きを中心に見て回り、次に自分の趣味や興味関心を元に、ほかの一般ユーザーの呟きも見て回るようになった。
 呟きを閲覧したい人をフォロー・リスト化して、暇な時にそれを眺めるのは、すぐに彼の日課となった。また、自分がフォローした人が、引用・リツイート(再投稿)してくる呟きの中から、興味深い発言を見つけると、その発言者のホーム画面へ行って過去の発言へと遡り、興味が湧くとフォローしてみるということも積極的に行った。

 そうしていく内にT氏は、ある女性ユーザーS子の発言が目に留まり、彼女の発言だけはとりわけ注意深く追うようになった。

 彼女は、どうやら恋愛について悩んでいるようだった。落ち込んでいるような発言もあれば、そんな自分を励まし、読む人の心も動かすような素敵な言葉も並んでいる。悩みながらも、自分らしく生きようともがく姿は、T氏の目に魅力的に映った。T氏はS子を「かわいい人」と感じた。
 T氏は普段、フォロー先に対しては、自分から積極的にリプライを飛ばす方ではなかったが、彼女の呟きを見ていると、自分も一緒に頑張りたいと思ったり、辛そうなときには寄り添ってあげたいと思うようになっていたため、勇気を出してリプライを飛ばすようになった。

 T氏自身は、元々規則正しい生活を好み、マメな性格であるため、自分発信のツイート内容は、挨拶の類や日々の決まりきった日課に関することが多いタイプだった。また自分の発言に対してリプライが飛んでくるときも丁寧に返信をする方だったが、S子だけはなかなかT氏に返答をくれなかった。

「今日はあまり元気がなさそうですね。無理しないでください。」
「その気持ち、とてもよくわかります。一緒に前を向いて頑張りましょう!」
彼女の呟きに、そんな言葉を投げかける。
だが、彼女から返信はない。
いつ、誰にリプライをするか、もしくはしないのか、という判断基準は、人によって異なるものだから仕方のないことだ。T氏はそう理解した。反面、こまめにリプライも続けた。時折、S子は、数日前に見かけたのと全く同じような発言をしているようだったが、T氏は
「気持ちに波のようなものがあるのだろう。」
と解釈し、前回同様に励ましたり、深く頷いて見せたりした。


◆   ◆

 同じくTwitterユーザーのU氏は、会社から帰宅し、パソコンデスクに腰掛けると、あるサイトにアクセスした。ボットジェネレーターだ。

 U氏は、編集するBOTのユーザーアカウントとパスワードを入力して編集画面にログインする。


ユーザー名:***_T_bot
パスワード:pasuwaado


「このT氏ってキャラクター、挨拶と”昼食なう”みたいなことしか言わないから、いくらボットとは言え個性なさすぎるかなぁ…。他の人気ボットに親切に話しかける自動リプライ設定を施してみたけど、これだけではフォロワー数増えないし、どうしたもんか。」

 T氏ボットが特定のキーワードに対して、自動でリプライを送るよう設定を追加したのは、2週間前のことだ。

 今、U氏の会社ではTwitterを利用した広告戦略が課題になっていた。明日の会議に備え、今夜はフォロワー数の増減や、ここ最近のT氏の発言履歴を追わなければいけない。画面の中では、T氏がS子のツイートに健気にリプライを飛ばし続けていた。



◆  完  ◆

文:(V)・∀・(V) 原案:丸い人