SHINDEHAI率いるバンド「StarrySky」のアルバムに作詞と歌で参加しました。
曲のタイトルは『朔夜 -SAKUYA-』、つまり「新月の夜」を意味します。

Starryskyのサイトの該当記事はこちら


英語(In English)
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■コラボレーション形態について

今回は、「一部の作詞(日本語)と、その部分の歌唱をお願いできない?」というお誘いでした。

StarrySkyには、Okkoさんという女性ボーカリストがいらっしゃって、いつもは英語で歌っています。
そしてその際の作詞は、Cyrix(サイリックス)さんという方が行っています。
今回の曲に限っては、私とCyrix氏が共同で作詞を行いました。
彼が英語部分、私が日本語部分を担当し、それぞれ曲の中の半分ずつを作詞する形でした。
そして英語部分はOkkoさんが唄い、私は日本語部分を唄うという形式のコラボレーションなのです。

作詞の共同作業が決まってからしばらくして、SHINDEHAIが、私・SHINDEHAI・Cyrix3人の会議窓を作りました。
Cyrixは、「これまでのStarrySkyの曲で作詞を担当したけど、あれらについてどう思うか正直な感想を聞かせて」と言いました。
私は、StarrySkyの過去作品はすべて聞いたので、
「とても気に入っている。
ただ、作詞について私の好みを言うとすれば、韻を沢山踏むのが好き」
と伝え、日本語と英語の歌詞が交互に現れる構成にも関わらず、私は、日英の言語を跨いで韻を踏みたいとも言いました。
Cyrixが選んだ英単語に則して、日本語の語尾や助詞を変えるだけでそれは可能なことなのですが、
彼らは日本語がわからないので、「そんなことできんの!?」って懐疑的になっていましたがw
「日本語と英語では、音節に差があるよ!?」とw
それも実際そうだけれど、1曲に対して2言語で作詞して、バージョンを跨いで韻を踏ませたこともあるので
多分出来るだろうな、と私自身は考えていました。


■作詞について

沢山の意味を込めました。

作詞も担当するとわかったとき、まずは曲を聴いてから、瞬間的に閃いた何かについて書きたいと思ったので
ラフミックスが来るのを待ちました。

そして、実際にラフが来て、それを聞いてみると、私の中に「月」のイメージが湧きました。

StarrySkyは、「星空」という意味ですから、なんらかの星をモチーフにすることはとても意義があると自分で思いました。
しかし、私は隠喩が好きなので、「月」をメタファーとして用いることで、身の回りのことや、
自分なりの思想を埋め込みたいと思いました。
作詞のときはいつもそういうことを考えています。

それで、まず「月」について一週間ほど思索を巡らせました。

月は、毎日約50分ほど遅れながら昇ります。
そして、その度にその「表情」も変えます。
皆さんがご存知のように、月は昇ってくるたびに形が違うのです。
でも、実は「形」が違うのではなく、「照らされている面積」が違うので、見え方が違うだけなのです。
月自体の形は不変であり、毎日昇ってくることも不変の事実、そして、常に「同じ面を地球に向けている」ということも不変です。
月が誕生したのは45億年前だと言われていますが、おそらく今の形で落ち着いてからの45億年間、
月はずっと同じ面を地球に向けながら、同じペースで周回しているのです。
そして、毎日「表情」を変える。

つまり、月には、刻々と変動する側面と、全く変わらない要素とが同居しています。

これは私たちの、身の回りや、自分の内面についても全く同じことが言えます。
変わっていくもの、変わらないもの、また、変えたいもの、変えたくないものがあります。

月がずっと同じ面をこちらに向けていることに「究極の愛」のようなものも見出すことも出来ます。


月と地球との間に流れてきた長い時間。

月が誕生する前、沢山の隕石や小惑星が地球に衝突して、宇宙にその塵が飛び出していったそうです。
そしてそれが、衛星軌道上でひとつに集まったものが月だという説が現在有力だそうなので、
月は、地球のかつての一部でもあり、同時に地球外からやってきたものでもあり、
パートナーとしての他人、あるいは、家族、その両方であるような、不思議な存在です。

そしてこれからも、人間の人生という尺度では認識しえないような長い時間を過ごしていく地球と月。
星に生命が誕生するために必要なものは、空気、水、温度と考えることができますが、
実は月のような大きなひとつの衛星というのもその条件だったりしないでしょうか。
本当のところはわかりませんし、私には知りようがありませんが。


また月の表面では、絶えず、原因不明のM1〜4の地震が起きているそうなのです。
私はこれは、月の「鼓動」だと思っています。
地球も月も、生きている。


そんなことを思いながら、作詞しました。

Cyrixは忙しい人なので、こちらが機会を窺っているだけでは作業が進まないと聞いて、
自分で上記のようなテーマを決めて、自分の担当部分をある程度固めました。
語尾とかはCyrixが作詞をした後にもう一度韻のために吟味することにして、
作詞した日本語部分に英訳をつけたテキストを、SHINDEHAIとCyrix氏に送ってテーマとコンセプトを説明しました。
ぐっどめたふぁー!!って言って気に入ってもらえて、Cyrixがこのテーマを引き継いで英語詞を書き、
作業自体はその一日の内に終わりました!!


月を表す単語は沢山あり、月齢、月の表情などにも名前がついています。日本語の中だけですごい数ですよね。
そして、「月」という単語は各言語にもありますね。
英語なら「ムーン」、サンスクリット語なら「チャンドラ」、ギリシア語で「セレーネー」などなど。
その一つに「Luna」がありますが、「Lunacy(狂気)」という言葉はやはり月と関連していて、
その根底に「月は人を狂気に追い込む」という考え方や文化があります。

「狂気」とはなんでしょうか。
実は、「普段隠されている本性」だったりしないでしょうか。
裏側だから見えにくいだけで、ずっとそこにあるもの。それが狂気であったりするかもしれません。
また、タロットカードにおける「月」のカードも、どちらかといえばネガティブな意味合いが強いのです。

私たちは、不変と変化に向き合う中で、自分の狂気にも触れることがあります。
これもまた月そのものに通じるところがあると私は思いました。


不変性や変性に絶えず翻弄されながらも、私は「軸」を持って生きなければいけないと思ったのです。
それは、時に、人から見て狂気じみているかもしれません。
変わらないということは執着でもあるからです。

Cyrixは、私が提示したコンセプトに対して、「心を開くこと/柔軟な考え方」というイメージを見出したと言います。
つまり、自分の狂気とも向き合うというのは、ある意味「心を開くこと/柔軟な考え方」だと。
確かに、一言で言おうとすれば、その表現が一番近いかもしれません。
狂気を押し込めるのではなく、自分に素直になる、自分の軸を見失わないということ。
すべてがバラバラで共存しないことのように思いますが、実はこういうことはおしなべてバランスによるもので、
揺らいだり変化したりしながら、ギリギリ共存しているのかもしれません。
私が思うに、嘘偽りのない愛を知る、見つけ出すには、自分の狂気を避けては通れません。
どうしてそういう風に出来ているのかわかりません。
でも地球と月を見ていると、やっぱりそうなのでは、と改めて思ったりもします。



■タイトルについて

作詞が終わった翌日、SHINDEHAIが「この曲には日本語のタイトルをつけたいから、君が選ばなきゃ!」と言ってきました。

私は、当然「月」に関する言葉を選ぼうと思いました。

・SHINDEHAIは、自分のニックネームの「SHIN」の部分に「新」という漢字を充てていること
・私が初めて参加したStarrySky作品であること(始まり)
・楽曲の随所から、古風な「和」の雰囲気を感じられること
・出来るだけ短い音節が望ましい


こういった理由から「新月」を意味する「朔(SAKU)」という文字や音をタイトルに入れることにしました。

ただ、「朔 -saku-」という曲は、そっくりそのまま、既に存在することに気付いたので、
「朔良(サクラ)」と「朔夜(サクヤ)」の2択をSHINDEHAIに提示しました。
サクラならば日本の花木である桜と同じ音になりますし、
サクヤなら漢字は違うものの「コノハナサクヤ姫」のような古代日本の文化(神話)に通じます。
これらのことも説明すると、彼は、後者が気に入ったそうで、『朔夜』が採用になりました。
文字の意味的には単純に「新月の夜」ですが、「朔良(桜)」というようなダブルミーニングは理解されにくいそうなので、これで良いでしょう!


ところで、なぜ私はこの曲を聴いたときに「月」を思い出したのでしょうか。
それは、この曲が持つ「和」の雰囲気は、「日本人から見た日本」ではなく
「海外から見た日本」だったからです。
それは同じ日本ですが、やはり違いがわかるものです。
その、「向こうからこちらを見ているということを、こちらも意識している」というのは
地球から見た月とそっくりだから、私の中に「月」のイメージが湧いたのかな、と思っています。


■歌唱について

今回は、デュエットで、分担の配分もちょうど半々でした。
しかし、「最低でも3テイク欲しい」という依頼だったので、二日間かけて4テイク録りました。
「このデータは使える」という状態のものを複数作るのは、疲れるというより神経を使います。
1曲の半分を担当する曲で、2日かけて4テイク。
これ自体は、普段の収録ペースと変わりません。
つまり、1日当たり1曲(フルサイズ)ってことですからね。

でも、今回は、折角複数の種類作るのだから、発声を少し変えてみようと思って、
少年声寄り(喉の深くから出す声)〜頭響発声風まで、4つのアプローチをしてみたのです。
ですから、似た様なテイクが4つ出来たのではなくて、4つそれぞれが違う声なのです。

SHINDEHAIに、その中から選んで使ってもらうことにしてあったので、
どれか1テイクがフルで選ばれるのではなく、この部分はテイク1だけど、ここから先はテイク3を使おう
というようなミックスになっているかもしれません。
でも、一緒にブースに入って直接のディレクションを受けられない以上
こういう風にいくつかのテイクを用意するしかありませんし、一番理に適っていると思います。
こちらが出来ることは選択肢を増やすことです。

どれがどのように使われても、それは曲を作った人が選んで使った結果なので、
私はそれがベストであると思えるし、まして、もう一人別の歌唱担当者がいるとなると、
その方のパートと重ねる部分などでは、声を調和させる必要があります。
しかし、あらかじめ、Okkoさんの歌唱データを受け取ったわけではないので、
この部分でも、自分がバリエーションを増やすことが、最善の策に思えました。

私自身、この記事を書いている段階では、まだ完成品を聴いていないので、
自分の仕事が上手い具合に作用しているのか、不安な面もありますが、
単純に完成は楽しみに思っています。


また、収録で面白かったこと(?)は、2つくらいありまして、
ひとつは「カセットコンロを使って居間で鍋をしたことによる、酸欠状態になった事件」
もうひとつは、「唄う部分だと思っていなかった部分がまさかのボーカルパートだった事件」です。

「酸欠事件」は、普通に危険なので、皆さんも換気に注意して下さいという注意喚起記事を書きましたね。
あのとき、収録を行っていて、
「どうしてこんなに眠いんだ! 集中力が低い、音感も鈍い! 収録が捗らない!
 でも、寝てる場合じゃない! 早く収録しなければ!」
という気力で、初日は作業を続行して、NPが終わるまで録り続けました。

それで、寝て起きたら続きだ、と思ったのですが、寝て起きてもサッパリすっきりしない!
そこで換気をしたところ、目が冴えて来て「これだったのかー!!」という具合でした。
よって、そこからは、普段の集中力を発揮できました。
これが原因で、初日のテイクも、二日目に結構直したりしましたねw
換気には注意しようと思いました。


「唄う部分だと思っていなかった部分」というのは、一番最初にラフ音源と、
作詞用のパート割り振りテキストが来たときに、2番の後、テキストに「nananana」と書いてある部分があり
音源を聴くと、どうも楽器のソロっぽかったので、「ギターソロ的な部分かな」と思って
あまり深く考えませんでした。
でも、確かにボーカルガイドメロの音色が鳴っているんです…。

作詞が終わって、すぐに仮録をしたときもそこは唄いませんでした。

しかし、収録用のインスト音源が来て、収録スタートとなったときに、SHINDEHAIから
「2分半あたりの、nanananaのところも忘れないで録ってね^^
 速過ぎて唄えなかったらアレンジしちゃっていいからね!」
と言われ、
「あ、あれ… やっぱりボーカルパートだったんだ!」
となり、収録のときに実際やってみると、かなりリズムがシビアなので、
これは確かに「速過ぎて唄えないかもしれないパート」だなと思いました。

――が、普段から「全部蟹」をやっている私としては、これを「アレンジ」して唄ったら負けだと思いました。
多分、SHINDEHAIはこの曲を作る前か、作成中のどこかで私の全部蟹音源のいくつかを耳にしたはずなんです。
時期的に、YoutubeにナイトオブナイツとColorsが上がったし…。
だから、それを聴いてSHINDEHAIが、
「あ、(V)・∀・(V)は、こういうシビアなリズムを口で奏でられるんだ」
と思った結果のあのパートだと思うと、アレンジせずに唄えなければいけない!という使命感がw

ですから、そこは元のメロディ、譜割のままカチっとやりました。
最初は「え、これ声で出来るの?」と思ったのですが、録ってみるとちゃんと出来てて、
自分で噴出したりしましたw
前から、唱えてる説なんですが、私は「聞き取れるものは再現できる」と考えていて、
(主に音程ではなく早口についてです)これもそれを裏付けているな、と思いました。
難しいだけで、実現自体は不可能ではないとは思ったので。
どういう風にミックスされるのか気になるパートでもありますw


以上のようにして、収録は割とサクサク終わったので、2日目の終わりに納品しました!
リテイクも出なかったので、完成・公開待ちの間、これを書いています。
今回は、英訳文も用意したので、海外の方にも、この制作秘話みたいなものを
知ってもらえるかもしれませんね。
初の試みなので、少々不安はありますが!


ちなみに、音源をウェブで試聴することが可能です。
過去の作品もmp3、WAV、FLAC形式で配布されています。
(新作は、CD発売後にDL可能になるようです)


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