Apocalypse

-かにぱん黙示log- かにぱんブログだから略して蟹風呂?

連載小説

【蟹ProRPG】第2章『大衆居酒屋 かにみそ鍋』

マリ王の説明によれば、とある大衆居酒屋に腕に覚えのある旅人たちが集っているらしい。
名簿登記制で、社員の派遣や結婚相談のごとく、相性や能力からパーティメンバーを斡旋してくれるのだそうだ。
腕に覚えがある、ということはすなわち善き人間ばかりということにはならない。
粗暴な人物や、隙あらば悪事を働いてでも名をあげようとしている無法者も訪れることがあるため、
やんごきなき身分であるマリ王本人はその居酒屋へは行かせてもらったことはないのだという。
それを聞いてせらは恐怖しか憶えなかったが、自分が今直面している問題について
拒否や逃亡をできるものではないことは理解していた。

城下町の中でも、殊、治安の悪そうな裏路地に入ると、鍋の形の看板が下がる
店を見つけた。

せら「ここ、かな。。」

店の中からは騒がしい声が響いてくる。

ドアを開ける勇気を振り絞るのに時間がかかって、せらは中の様子を窺ってみたり
通りすがりのふりをして何度も通りかかっては戻り、を繰り返し、本当の通りすがりから
怪訝な顔をされた。
怪訝な顔をされるのもそれはそれで良い気分ではなかったので、せらは意を決して
店のドアを開けてみた。

中は思いの外明るかった。
タバコの煙で白く霞む薄暗い店内を想像していたのだが。

時間的に開店直後のようだが、常連と思われる男たちがカウンターやテーブル席で
新聞を読んだり談笑したりしながら何かを飲んでいる。


せらから見れば、その誰もが怪しげに映った。

せら(こんな人たちの中から急遽、パーティメンバー選ばなきゃいけないんだ。
   現実って厳しいなあ。。人は見かけにはよらないというけれど、
   結局直感に頼るしかないよなあ。)

せらは、マリ王から言われたとおり、まずは店主に自分が勇者に選任されたことを告げ
パーティメンバーの紹介・斡旋を頼むことにした。


せら「あ、あの。。」
店主「はい?」
せら「ここで、パーティメンバーの斡旋をしてもらえると聞いて、キマシタ。
   今日から勇者やってます。せらと申します。」
店主「へー・・」
せら「・・・え」
店主「今回の勇者様は随分、戦いとは無縁そうな人なのね。」


店主は、和服に身を包んだ黒髪の女性。
勇者なりに勇気を出して名乗ってはみたものの、予想外に興味なさそうな視線を浴びせられ、
せらは少したじろいだ。


店主「アタシはこの居酒屋”かにみそ鍋”の店主、かにみそ。よろしく。」

店主の声からはまだ愛想が感じられない。
せらは何と言って話を続けるか迷った。

せら「…えーと。。魔王退治に行かなくてはいけないので、パーティ編成したいのです、が…」

そのとき厨房の奥からタイマーの鳴る音がしてかにみそは早足で引っ込んだ。

みそ「ちょっとまだ仕込が終わっていないから、カウンターで座って待ってて!」


かにみそが奥から呼びかけたので、せらは言われるままにカウンターの一番近い席に座って
店内の様子を改めて見回してみた。


ひとつあけて隣の席でおちょこの酒をすする眼鏡の男性が、こちらを向いたので
思わず目が合った。
せらは、軽く会釈をした。

男性「選ばれてしまったんですね、勇者。大変ですね。」
せら「あ、ハイ。。急な話で何が何だか…」
男性「詳しい事は私もわかりませんが、この国では代々そういうことになっているみたいですね。」
せら「そうみたいです。マリオさんもよくわからないみたいだったけど…」
男性「マリ王陛下と親しい間柄なのですか…?」
せら「あ、幼馴染、デス」
男性「なるほど・・・ あ、焼酎、いかがですか?」
せら「いや、僕はお酒はあまり飲めないので」
男性「そうですか。この焼酎はとてもいいものなんですよ。この国ではこの”かにみそ鍋”でしか飲めない。
   それというのも店主のかにみそさんがハポン国出身なので知人を介して直輸入できるからで…」
みそ「シヴァ谷さん、そのくらいにしてあげなさいな。お酒を褒めてもらえるのはうれしいけれどね」
シヴァ谷「いやはや失礼。あ、申し遅れました。私はシヴァ谷という僧侶です。
     地属性の魔術に長けています。方向音痴は敵です。」
せら「え。。」
シヴァ谷「最後のは冗談ですので聞き流してください。」

かにみそが、この人いつもこうなのよ、と初めて微笑んでみせた。
せらは少し安心した。


カウンターの端のほうでカクテルを振っている店員がいることに気づく。

みそ「彼は”鉄扇の風伯”という風属性の魔術と鋼鉄を操る騎士だけれど、アフター5はこの店のバイトなので、
   パーティメンバーとして紹介はできないわ。」
せら「そ、そうですか・・・」

せらは、内心「ところで属性ってなんだろう」と思ったけれど、他の人たちがあまりにも
自然にその言葉を口にするのでいまさら質問しづらい、と感じたので今は黙っておいた。

そのとき店の扉が開いて、屈強なガタイの男が3人入ってきた。
談笑しながら入ってきたところを見るに、これはこれでひとつのグループを成しているようだ。


みそ「遅刻。減点5。」
男A「みそ姉厳しいーッ!!まだ開店ギリギリじゃんかよー」
みそ「バイトが開店前に店に居なくてどうするの」
男B「どや、みそさんが正しい!」

二人目の男がそう言いながら、ゴネる男の肩に手を置くと、どやと呼ばれた男は舌打ちをした。

男C「なんか、この店に似つかわしくないのがいるな…?」

3人組の中で最後に入ってきた男が、せらに注目した。
見るからに、全員が自分より大きな体をしているし筋肉がありそうだったので、
せらは無意識に萎縮した。
まだ、彼には勇者の自覚など微塵もなかった。


みそ「今度の勇者様よ。」

せらは若干戸惑った。
自分が勇者という肩書きを持ってしまったことを、これほどまでに軽々しくカミングアウトされて
大丈夫なものなのだろうか…?
魔王を倒しに行く前に、自分が何者かに倒されてしまいやしないだろうか!?


どや「朧月の旦那、どうするよ? 勇者だってよ。勇者といえば、魔王を倒すために
   国王が選んだ由緒あるお方のはずだぜ」

せらに注目していた男は朧月というらしい。
朧月はせらから視線をはずし、どやと目を合わせた。

どや・朧月「兄さん!」

せら(きょ・・・兄弟!? にしてもどっちも兄なのか・・・?)


再び店のドアが開いてベルがカランと鳴った。
3人が通路を塞ぐ形になっていたため、かにみそがどくように促した。

みそ「まぐさん、そ こ 邪 魔 。早く厨房へ来て火力の番をして頂戴」
まぐ「了解ッ!!」


まぐと呼ばれた二人目の男は真赤な上下のジャージで、よく通る大きな声を出して厨房へ駆け込んだ。


みそ「今入ってきた3人組もアフター5はうちでバイトなのよ。
   まぐさんは炎と磁力を操る。どやは土と雷ね。ろげちは氷と月の力を使えるの。
   各自とても強い魔力を持っているけれど、比較的平和な世の中だからかしら、
   暇を持て余しているそうよ。」
せら「そうなんですか。」
まぐ「でも、勇者のお供は御免だぜ!割にあわねえ!!」

まぐが厨房から叫んだ。

みそ「このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて。
   ”また”なのよ、ごめんなさいね。仏の顔もって言うじゃない?
   謝って許してもらおうってつもりじゃないんだけど…」
せら「え、僕、お酒は・・」
みそ「そうね、まさかこんなタイミングで勇者出発になるとはアタシも思ってなかったから…
   今うちの名簿にあるメンバーだと、紹介できる人材は――」

かにみそが名簿を開いて見ている間、厨房から3人の男たちの話し声が途切れ途切れに
せらの耳に届いた。

どや「そもそも勇者なんてよ、悪役がいるから善人ぶっていられるっつーのに
   感謝の意がたりねえよな」
朧月「悪役って一旦なるともはやつぶしはきかないしねー」
まぐ「でも、バイト禁止じゃなくて良かったじゃなーい!とりあえず食い扶持は見つかったもん!」


せら(やっぱり勇者なんて、誰からも応援されるばっかりとは限らないみたいだ…。
   あんなに強そうな人たちが選ばれないんじゃ妬みとかも買っちゃうよね。)

せらは、これまでの人生でもっとも先行きが不安になった。

-------------

今日の登場人物

かにみそ 大衆居酒屋「かにみそ鍋」でパーティーメンバーの斡旋をするが非協力的。
シヴァ谷(しばたに) 地属性の僧侶。方向音痴なせらに対してそれなりに協力的。

風伯(ふうはく) かにみそ鍋のバーテンダーらしい。通り名は「鉄扇の風伯」風と鋼鉄の属性。
まぐ 磁力と炎の属性。
どや 土と雷の属性。
朧月(ろうげつ) 氷と月の属性。通称ろげち。



文:(V)・∀・(V)
原案:蟹Projects

【蟹ProRPG】第1章『せらのくせに生意気だ』

その朝、なんの前触れもなくせらの元に城から伝令の者がやってきた。

『暇だから遊ぼうぜ!!   ――マリオ王』

マリオ王は若くして王に即位したこの小さな国の王様で、せらとは幼馴染なのだった。
伝令の者は巻物を広げてその文書を淡々と読み上げると、すぐに回れ右をして
城へ帰って行った。

城下町の片隅で絵描きをして暮らしているせらは、今日は仕上げたい絵があったため
伝令の者が帰っていくのを、少し途方に暮れながら眺めていたが、
城に呼び出されることに関しては別段珍しいことでもなかったので
とにかく出かける準備をすることにした。

せら「もう、マリオさんは相変わらず自由だなあ・・・」

せらは意味のない英文の書かれたTシャツを適当に着ると、特に使う予定もない雑貨が
山盛りに入ってぎゅうぎゅうのリュックを重たげに背負って家を出た。

城下町を歩けば城はすぐそこに見えてくる。
まるで丸いキノコのようなお城だ。

せら「いつみても立派なお城だなあ。。」

天気は快晴。
青空にそびえるまぁるい城から、せらは何故か言い知れぬ威圧感を感じた。
それはその日の青空におおよそそぐわぬイメージだった。
歩幅が縮まる…。
しかし、すぐにその嫌なヨ缶を頭から振り払う。

せら(今日は一体どんな目に遭わされるのか、いや、そんなことを考えるのはやめよう。
   マリオさんと一緒に食事をするハメにならなければ、それなりに平和なはずだ…!)


小さな頃から城に出入りしていたせらは、顔パスで城門をくぐり王室へ向かう。
番犬のチップがじゃれ付いてきた。
せらは現実逃避のためにチップとしばし遊ぶことにした。
しかしその結果、園庭に植えられた大きなポプラの木に激突してしまい、おでこにコブができたので
自分を戒めながら、再度王室を目指した。



王室ではマリ王が絵を描いて遊んでいた。
せらとマリ王は幼い頃から絵を描く時間を長く共有してきた。
せらも絵描きをやっているが、この国の美術館や画商はマリ王の絵を広く扱うため
せらの方といえばなかなか注目こそされないものの、一部コアなファンを獲得する感じで
なんとか生活は成り立っていたが、実は副業のほうが時々盛り上がることがあった。


マリ王「今描いたその絵、街で50000マイリスで売ってきて!」

マリ王は家来に命令した。

せら「あ、こんにちはー。おじゃましーます」
マリ王「あ、せらさんじゃん!遅いよ!」
せら「ご、ごめなさいっ! 今日もお絵かきして遊ぶの?」
マリ王「ああ、実はそうしようと思ったんだけど予定が狂ったんだよ。
    ちょっと魔王を退治してきてくれないかな」
せら「へっ?」
マリ王「魔王だよ、魔王、知らないの?」
せら「あぁ…ちょっと、今まで無縁な世界に生きてきたっぽくて知らないです…」
マリ王「えー説明めんどくさいなあ!
    いろいろ端折るとね、国王になったら国から一人勇者を選出して、魔王退治に
    行かせなきゃいけないっていう法律があるの!今日締め切りだってさっき思い出したの!
    せらさんは僕を違法者にしたいの?」
せら「えーそんなこといきなり言われてもなー。魔王ってなんなの?」
マリ王「そんなの僕は知らないよ、勇者が自分で調べなよ!
    せらさん今から勇者ね!」
せら「えー!今日仕上げようと思った絵があったのに…」
マリ王「画材持って魔王退治に行けばいいじゃん」
せら「それって両立できるものなの!?」
マリ王「せらさん次第!!」


こうしてせらは、得体の知れない「魔王」とやらを退治する旅に出なければいけなくなったのである。

マリ王が言うには、旅の支度は城下町で整うらしい。
せらは一人では心細いのでまずはパーティを組まなきゃな、と震えながら心に誓った。
そして有り金で武器や防具、道具を揃えよう、と考えながら、大変なことに巻き込まれたっぽい割には
現実的な自分について客観的に分析していた。

気がつけば日が暮れようとしていた。


-------------

今日の登場人物

勇者せら 無属性・無力・無知
マリオ王 勇者せらの幼馴染。通称マリ王。魔王討伐の勇者にせらを個人的なわがままで無理やり任命。




文:(V)・∀・(V)
原案:蟹Projects
かうんたぁ
かにぱん。とは

(V)・∀・(V)

ネトラジDJ・かにぱん。と申します。
以後、お聞き知り置きを…
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