Apocalypse

-かにぱん黙示log- かにぱんブログだから略して蟹風呂?

連載小説

【蟹ProRPG】第9章『まぐなかるた』

砂漠のオアシスでの夜が明けた。
水と食料、アイテムを補給、そして元気も回復してせらたち一行は南風に礼を言って、
太陽が南中に達するより早くオアシスを出発した。
オアシスの池には変わらず雨が降り注ぎ虹がかかっていた。
南風は「使えない勇者さん、またきてね!」と手を振って見送った。

日暮どき、城門に着いた。
中も外も、一面が見るからに寂れている。
城門の格子も錆びきって一部崩れ落ちているし、レンガ造りの家々も
すべての窓と扉がなくなり、ただの穴となったそこから風と砂が吹き抜ける。

せらたちは城のほうへ向かった。
何もかもが砂まみれだった。

しかし、城の前の広場につくと少し人の気配がして、せらは立ち止まった。

せら「あれ…? 遠くから音楽がきこえる」
かに「ああ、踊り子の館だな。旅芸人たちがテントを張って廃墟の一部を旅の中継地点にしているんだよ。
   寄ってみるか?」
せら「こわいひとたちですか」
かに「別に怖くねえよ!」

かにぱん。は笑い飛ばすと踊り子の館の方へ向かった。
それは城前広場から少し東へ逸れたところにあった。
そこも広くひらけた地形で元々建物がなかったらしく、テントがいくつも張られている。
奥に公会堂のようなものが見える。
まるでそこだけが、別の町のカット&ペーストのように明るく賑やかだった。
かにぱん。は公会堂の事務所窓口へ声をかけた。

かに「モスコーいるかー?」

すると、事務所の扉が開いて中から男性が出てきた。

モスコ「かにさん、久しぶり!」
かに「やあ! マリオ王国の勇者様ご一行がまぐなかるたへ寄るというから一緒に来たとこさ」
モスコ「へぇ!! あ、皆にも会ってってよ!」

公会堂の中もテント周辺でも、旅芸人たちが芸の稽古に勤しんでいる。
モスコと呼ばれた男性は踊り子たちから「モスコミュール師匠」と呼ばれる、旅芸人の一座をまとめる者だ。
公会堂のリハーサル室周辺を歩いていると、マスクを被ったメイド服の男が
カクカクとした動きで飛び出してきて、突如脱ぎ始めたりしたのでせらは面食らった。

モスコ「イマオカさん、小さい子を驚かせちゃだめでしょ」
イマオカ「あ、どうもすいません」
せら(小さい子…)

モスコ「そうだ、13と凶ちゃんが婚約したよ!」
かに「前から夫婦とからかわれていたもんなぁ。でも13って永遠に13歳の秘術をかけられてるだろ。
   13歳のまま結婚すんのか。」
モスコ「んまぁ、そうじゃない? あ、マユリさーん、かに姐きたよー」

モスコが呼びかけると、アフロヘアーで青いつなぎの大柄な男がにっこりと近寄ってきた。
そしてその奥から更にちょびヒゲの男がマユリを追って出てきた。

かに「おお、監督ー! 新しいクソミソダンスは開発できたのか?」
監督「いやはやもうちょっとなんですけどねえ、これが完成すれば次の巡業で大ウケの予定ではあるんですが!」
かに「楽しみにしてるよ!!」

モスコ「ところでなんで勇者せらはまぐなかるたに?」
せら「あ、えーと…丸い人さんから”まぐなかるたにいけば封印された力を解放できるかも”と
   言われて来ました。」
モスコ「あぁ…四天王か……けれど、1500年も前に封印されたきり、その封印を解いたやつなんて
    今までにひとりもいないとも聞く。封印に必要な”9つの鍵”を集めた者はいまだかつて…」
前菜「9つの鍵… さすがに厳重な封印ね…」
かに「そんなものが必要なのか! めんどくせえなぁ、もしかしてそれ集めてから出直しか?」
梨姫「(。i _ i。)」
イマオカ「その9つの鍵っていうのは、当時まぐなかるたに攻めてきた帝国の黒の騎士が使った封印魔法のかけらで
     封印が完了した際に世界中に飛び散ったと聞くが」
かに「その黒の騎士ってやつに聞けばいいのか?」
イマオカ「1500年も前の人物だから、もしかしたらもう死んでいるかもしれん。」
かに「そうか… そいつを探し出すのと鍵を9つ探し出すのとじゃ、どちらもめんどくさそうだ」

マユリ「ところで気になってたんだけど、ニコパイが左肩にしているタトゥーはわざわざおそろいにしたの?」
こたね「ああ、これね、偶然なの。それにタトゥーではないみたい。どちらかというとアザ…?」
だっしゅ「物心ついたころにはあったぜ。っつっても800年くらい前だけどな!! ハハッ」
マユリ「汽車だけは水色、黄色、白の3色…あとは、かにぱん。が赤、だっしゅは緑、こたねがオレンジで、
    オメがんが青、梨姫しゃんはピンク、前菜さんが紫か…」
かに「俺たち生まれも育ちもバラバラだけどこのアザみたいなやつだけはおそろいなんだよな!」

モスコ「それってつまり、さぁ…」
せら「今まで何も疑問に思わなかったの!?」
ニコパイ「何が?」

                           ――つづく

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今日の登場人物

モスコミュール 「踊り子の館M」の館長。グラサンを標準装備している。
13 永遠の13歳という秘術をかけられた少年ダンサー。
マユリ 暴君と称されるダンサー。大きい。
 女性ダンサー。13の許婚らしい。
監督 踊り子の館勤務の振り付け師。
イマオカマヤ 仮面のメイドガイ。突如脱ぐ。ここはストリップ劇場ではない。



文:(V)・∀・(V)
原案:蟹Projects

【蟹ProRPG】第8章『雨乞い師』

せらたち11人は、その日は丸い人の村で休ませてもらい
翌朝まぐなかるたへ向けて出航した。

直線距離にしてマリオ王国〜丸い人の島以上の距離があることと、海の潮流の関係で
到達までには数日を要した。
海賊たちはというと…常に歌っていた。


大遺跡、まぐなかるた――

都市としては既に滅んでいるため、港町というものはない。
日に焼けてところどころ穴の開いた桟橋が一本突き出しているだけだ。

そして、見渡す限りの砂地である。

こたね「ここからは炎天下をしばらく歩かないといけないから、各自熱中症対策をしっかりね」
各自「はーい」

特にこの乾燥した気候に弱いのは、水属性のかにぱん。であった。

かに「俺のことはいいから…お前らは先へ進め!!…ガクッ」
だっしゅ「お前ただそういう言い回ししてみたかっただけだろ!」
前菜「でも本当に具合悪そうよ…、早くなんとかしないと」
かに「どっちにしろ会おうと思ってたんだし、南風のところで休むか…。
   まぐなかるたへ先に行くつもりだったが…この状態では…もちそうにない」

一行は予定を変更して、かにぱん。の旧知の友である南風がテントを張るオアシスへ寄ることにした。
ニコパイが持っている特殊な方位磁針を用いなければ、まぐなかるたへ歩いて行く間に
砂漠で道に迷うことは確実だったので、せらパーティだけが先に行くわけにはいかなかったし
ここまで旅を共にしてくれている海賊たちから、方位磁針だけを借りて別行動をとるという選択肢は
せらの脳内には含まれていなかった。

せらたちは、この島の北の船着場で船を降り南東に向かって歩いていた。
ここで少し進路を西に向け、しばらく歩くと突如草むらが現れた。
草むらを書き分け進むと、砂漠を歩いているときより幾分か涼しかった。

草は尚一層生い茂ってきたがあるとき急に視界が開けると、そこには
小さなテントがいくつかと池があった。
池には雨が降り注いでいる。
池の真上にだけ雨雲があった。

ニコパイは、担いできたかにぱん。を池の淵まで運び水に浸すと、
かにぱん。は水を得た魚のように…いや、蟹のように見る見る元気を取り戻した。
梨姫がテントを巡り、南風を探してきた。


南風「あっ、ニコパイだ! 久しぶりー!」

ニコパイと南風は、再会を喜んだ。
南風は小柄な少年だったが、年齢的にはかなりの大人らしい。
エルフの性別があやふやなように、南風の種族は通常の人間の場合で言う子供の段階で
外見的な成長・変化が止まる。

そして、せらのパーティは自己紹介をした。

前菜「それで、こちらがその勇者パーティの4人なの。」
せら「あ、せらと申します。はじめまして。」
南風「なるほど、 使 え な い 勇 者 とは貴方だったのですね!」
せら「Σええっ」
南風「あ、ごめんなさい! 挨拶程度に貶される風習がある人に見えたので!
   かにぱん。船長はもう大丈夫そうかな」
こたね「もうだいぶ水吸って膨れ上がってる頃だと思います。」
南風「良かった、ゆっくり泳いでってね!」


かにぱん。は池で泳いで英気を養うと、何事もなかったかのようにピンピンして戻ってきた。
一行は一番大きなテントで南風に食事を振舞ってもらっていた。

かに「よぉ!南風! 久しぶり!!いい湯だったよ!」
南風「アレ別に24時間風呂とかじゃないですけど!」
かに「似たようなもんだよ! この島に来るときはいつも世話になっちゃうねー。」
南風「ううん、役に立てて嬉しいよ!」
かに「あ、せらおとはもう話したのか?」
南風「ああ、うん、あの 使 え な い 人でしょ?」
かに「うん、そっか。」
せら「せらお!? というか、使えないの部分流した…!」
かに「ばっか、お前、男の名前は お で終わるもんだろが、普通」
せら「ええ!? それ、ものすごい偏見に満ち満ちているよ! ニコパイどうなるの!?」
かに「んー。だっしゅに、オメがんに、汽車!」
せら「おで終わる人皆無じゃんすか…!」
かに「こまけぇこたぁいいんだよっ!!」
せら「スクウェアエニックス!!!」

かに「あ、そうだ、せらお、南風はさーあの丸い人の島から、遠い昔にこの島に流されたんだ」
せら「えー、そうなんですかっ」
南風「うん、流刑的な何かでね!
   外の池を見たでしょ? 局地的に雨が降って池が形成されている。
   あれがボクの能力なんだ」
かに「南風は雨乞い師なんだよ。まぁ小さい頃はその能力を自分で操れなくて、
   元々水害に悩んでいたあの島では、呪われた子供扱いされて追放されたんだ。
   そんでこの島に流れ着いたんだが、水が重宝される大都市まぐなかるたでは、
   神の子がやってきたと崇められたもんさ。」
南風「けれど、そのまぐなかるたも、ボクの生まれ故郷の王族が滅ぼしてしまったから…
   なんとかギリギリ、まぐなかるたの人たちがボクを逃がしてくれたおかげで、
   こうして生きているけれど…
   ボクを追放した国への復讐どころか、迎え入れて、自分の命も顧みず助けてくれた
   この国の人々への恩返しもできないままだよ。
   まぐなかるたはもう完全に廃墟だ…。
   元々この島にまぐなかるたの国民以外に定住者はいないに等しかった。
   今だって、ボクが作ったこのオアシスが、人に見つかることは滅多ないからね。
   ニコパイや旅芸人たちが時々ここを通りかかるよ。ボクはずっと一人でここに
   暮らしている。」
かに「元々住み難い気候の島だからなぁ。」
南風「しかし、気候に悩まされ移住してきたあの島の人々、結局こちらの気候にも
   適応できなかったみたいだし、まさかボクの能力がこんな形で開花しているとは
   知らないまま滅んで行ったんだろうな…」
かに「因果応報かねぇ」
シヴァ谷「我々が魔力を授かって生まれ、そこに属性という自然の力との相性がある以上
     自然界とは切っても切り離せないはずですし、その強大な自然の力に
     歯向かったりして、寄り添う生き方を選べないのであれば、
     自然淘汰されてしまうということの表れなのかもしれませんね。」
かに「俺の場合は水属性の魔力を使って水を使った攻撃や防御魔法を繰り出せるわけだけど、
   ある程度近くに水がなければ魔力の源も絶たれてさっきみたいに弱ってしまう。
   南風の場合はちょっとそれとは違ってね。遠くから水を呼び寄せて、雨にして
   降らせることができる。」
南風「ただし、降らせるということしかできないから魔法攻撃や防御等には使いにくいんだ」
かに「操るにも、お互い自在じゃないのさ。」
南風「勇者せらは何の能力が使えるの?」
せら「僕は、無属性だっていわれました。」
南風「何それ何もできないってこと?」
かに「そうだな。」
南風「うわ!つかえねえ!」


オアシスの夜は更けて行った。

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今日の登場人物

南風(なむふぉん):任意に雨を降らせる雨乞い師。見た目は少年だが年齢は大人。



文:(V)・∀・(V)
原案:蟹Projects

【蟹ProRPG】第7章『島が見えたぞー』

陽気な海賊ニコパイレーツたちの買出しがすべて終わると、せらのパーティも一緒に
船に乗り込んでいよいよ出航のときが近づいた。

桟橋には風伯だけが見送りに来た。

風伯「どやさんたちも行こうかとは話してたんですけど、
   寝坊ですかね〜。アフター5は皆かにみそ鍋でバイトですけど、
   そこまでの日中の時間は自由なわけなんで、どうしてるのかちょっとわからないんですが。」


船がいかりを揚げた時、せらは住み慣れた街に心の中で別れを告げた。
きっともう帰って来られないんだろうな、と思ったからだ。


海へ出る前に、こたねと前菜が船の中を案内してくれた。
広い船なので、せらたち4人が増えてもスペースに不足はなかった。

ニコパイレーツは7人、せらのパーティは4人。
初対面が多いので、改めて互いに自己紹介をした。
せらにとっては全員が昨日今日出逢った人だ…。
かにぱん。はぷちまりもに言葉を教えることに熱心なようだ。
汽車が変態用語を教え込もうとするので、必死にそれをやめさせようとしていた。

せら「ところで、梨姫しゃんって、なんの動物なんですか?」
かに「しらねぇ。」
せら「知らないんだ…」
かに「2年くらい前に雪が積もってる寒〜い島へ行ったんだよ。
   そんときにさ、毛皮にしようと思って捕まえた。」
梨姫「!!?」
かに「結局毛皮にはしなかったけどな。」
せら「そうなのか…」
梨姫「;;;;」
かに「嘘だけどな。」
梨姫「…!」
せら「ええーっ」
かに「なんか懐いて来たから拾って帰って来たってだけだよ。
   こいつには海の上は暑いかもしれないが。」
せら「それより今の一連の流れのせいで、寿命が縮まったっぽいですけど…」
かに「犬の一種じゃねぇかな?」
せら(話聞いてるのかな…!)


海に出ると、海獣と呼ばれる海にだけ生息するモンスターが時折甲板に上がってきた。
海洋生物に凶悪な外見と性格を付け足したような生き物たちだ。

せら「モンスターです! 皆さん、戦闘の準備を!!」
、「せらさん!」
せら「何!?」
、「海老と、バジルの、相性はやばい!!(良い意味で)」
せら「今はそれはどうでもいいよ!!」
、「どうでもいい、だと!?」
せら「あ、いや、そういうことじゃなくって!!」
海獣(…仲間割れ…?)

しかし、そのときニコパイレーツが船室から飛び出してきた。
てっきり一緒に戦うのかと思いきや、彼らはおもむろに歌い始めた。

すると、海獣たちは心が洗われて海へ帰って行った。


前菜「海の中は音が届きにくい世界でしょう? だから彼らは音楽を知らないのよ。」
オメがん「大抵は歌ってやればイチコロだ! 戦う必要はあまりないのさ。」
だっしゅ「勿論、それでダメなときは、徹底的にボコボコにしてやるがな! HAHAHA!」

かに「島が見えたぞー!!!!」

見張り台からかにぱん。が叫んだ。

こたね「近いとはいえ、海の気候は変わりやすいわ。ここまで晴天でほんとよかった。」
前菜「目的地まで、あと15分というところね。」
汽車「んじゃ、ちょっくら速度を上げるぜ!」
ぷちまりも「いやはや、いい天気ですなっ」


ほどなくしてせらの目にも島の形がはっきりと見えてきた。
それは丸いドーム状の島だった。

前菜「ドームに見えるけど、実際はカプセル、球体に近いわね。
   海面の下にあと半分が沈んでいるのを想像してみたらいいわ。」

せらたちは丸い島に着いた。
港に着くと、島の人々が迎えてくれたが、それは丸くて小さくて青紫で頭のてっぺんから
一本だけ長い毛の生えた人々だった。
よくよく見ないと見分けがつかないが、顔の表情に少し個性があるように見えた。
しかし見分けるのはかなり難しい。

かに「久しぶりー! 新しい勇者らしいぞ!! なんか面白そうなパーティだったから
   連れてきちゃったよ! 昨日マリオ王国で結成されたらしい」
丸い人A「こんなにすんなりここにたどり着いちゃうなんて初めてじゃないかな。
     かにぱん。さんが率先して連れてくるのも珍しいね〜。」
かに「なんか見るからにダメそうだったもんで!!あはは!!」
丸い人A「それはそれで切り捨ててきそうだけども」

せら「あ、はじめまして。せらと申します。」
丸い人A「あ、はじめまして。丸い人です〜。」
せら「丸い人さんですか。ふつつかものですがヨロシクお願いします。」
丸い人A「丸い人の中でも少し角ばっているボクがこの島の長老です〜。
     わからないことは、なんでもどうぞボクに聞いてください。」
せら「ありがとうございます。」

丸い人B「あ、丸い人です〜。はじめまして。」
せら「あ、はじめましてー。せらと申します。」
丸い人B「丸い人はあまり個体を意識しないので、名前がなくてごめんなさい。」

丸い人はぺこりと頭を下げてお辞儀した。

せら「うーん、じゃあたとえば”この丸い人さんじゃなくてこの丸い人さんに用がある”
   というときはどう呼べばいいんだろう…」
丸い人B「用件を先に言っていただくのがいいですね!
     教えて!丸い人、とか、ご飯作って!丸い人、とか。」
せら「なるほど、からだをなおすどせいさん感覚ですね。」
丸い人B「多分それだね〜。」
丸い人C「何も言わずに”丸い人〜!”って呼んでしまうと…」

そのとき彼らは港で話していたが丸い人の家々が立ち並ぶ方向から
丸い人の大群がぞろぞろとやってきた。

丸い人C「こうなります〜。」

せらの足元では大量の丸い人たちが、何の用だろう?という眼差しで
せらや丸い人Cを見ていた。

せら「よくわかりました。」
丸い長老「用件を先に言ってもらえれば、それを聞いた丸い人の思考を通じて
     最も適した丸い人が用件をこなしに来てくれるよ〜。
     ボクたちの思考は一つに繋がっているんです。だから個体を名前で意識しないんだね〜。」
かに「とりあえず長老の家にお邪魔しようぜ!」
丸い長老「そうだね〜。魔王のことが知りたいと思うし、ひとまずそれについてお話ししよう〜。」
ぷちまりも「いやはや、いい天気ですなっ」

せらたち11人は、長老宅へ向かった。
とはいえ、小さな丸い人たちの家に普通の人間はしゃがんだところで入れそうにない。
長老は、家の前の広場でせらたちに少し待つように言った。

長老は家の中で何かのスイッチを押したらしく、大小2つの団子が重なったような長老の家が
人間の入れるサイズにむくむくと膨らんだ。

せらたちは中へ招き入れられダイニングの丸いクッションソファーに腰掛けた。

丸い長老「実は、マリ王や魔王は、この通信機を使ってアクセスできる架空の集会所のようなところで
     時折会話をしているんだ。魔王も勇者と同じく世界中の王の中から選出され、それ以外の
     王は自分の国の国民の中からその魔王を退治する勇者を選出しなければいけないルール。
     退治といっても殺して来いってことではないよ。国際交流の一つだから〜。」
せら「国際交流なのか…」
丸い長老「それで、王様たちの架空の集会所を覗ける専用通信機がこれだね〜。
     ボクは王様ではないんだけど…どうしてこれがここにあるかというと、
     実は、この島にも昔王国があったんだけど、王族たちは度重なる高波の被害に苦しんで
     島を出て行っちゃったの。その頃この島にはドームがなかったから。
     ボクたちは当時から一緒に住ませてもらっていたけど、元々ここにあった王国が
     なくなるときに通信機を授かって、そのあとにドームを作る技術を開発して島を
     球体の中にすっぽり包み込むことで高波の被害をほぼなくすことに成功したんだ〜。」
せら「なるほど。」
丸い長老「この島にあった王国の王族はここから南西の砂漠の島に移住して、
     どうやらそこに元々あった王国を乗っ取ってしまったみたい…。
     結局食料難に遭って国は続かなかったそうだけどね〜。砂漠の島には今、国はないよ。」
シヴァ谷「もしかして、”幻の大都市まぐなかるた”と関係が…?」
丸い長老「おおっ、ご存知だった!
     まぐなかるたは、砂漠の島に元々あった大帝国なんだ〜。
     そしてそのまぐなかるたを乗っ取ったのが、元この島にいた王国の最後の王族たちですね〜。」
シヴァ谷「なるほど…。そんなことが。まぐなかるたは巨大な砂嵐で城や城下町ごと埋まったものと
     考えられていて、私もてっきりその説が有力だと思っていました。」
前菜「実際に城も城下町も砂に埋もれていたわ。けれどそれが原因で滅んだのではなく、
   帝国が滅んだことで管理が行き届かなくなって長い年月を経て埋もれていった、という
   順序のようね。」
シヴァ谷「もしこれからまぐなかるた遺跡へ行く必要があるのであれば、私の能力で
     砂を取り除くことは可能です。」
せら「ふむむ。。」

丸い長老「遠〜〜い昔むかしのお話でした〜。
     今では国際交流も進んで、定期的に魔王選出と勇者派遣をすることで
     各国は絆を深めているみたいだね〜。
     それぞれの国王は自分の国の勇者に魔王の場所のヒントをちょっとだけ出したり、
     船を貸したりすることが許されているけど、噂によるとマリ王はせらさんに
     あまり援助をしなかったみたいだね〜。
     昨日”その方が面白いじゃん!”みたいな発言を見かけた気がするし〜。」
せら「国際交流…」
丸い長老「じゃあ、この通信機を見て〜。魔王に選出されたものは”魔王専用アカウント”を
     引き継ぐから…”魔王”という名前で発言しているのが、現在の魔王だよ〜。」


せらは、通信機を受け取るとまず画面を見た。
チャットのように文字が並んでいる。

丸い長老「昨日から今日にかけてマリ王が魔王に場所を尋ねていたと思う〜。
     魔王は城にいる…としか書いていなかったから、元々の自分の国の城にいる、
     ということなのだと思うよ〜。」

せらは、十字ボタンを操作して発言の履歴を遡った。

せら「そうみたいですね…。ノンケなう☆ってなんだろう…。」
前菜「それは…良い漢(いいかん)王国の挨拶ね。」
せら「E缶!?」
前菜「カンはカンでも、オトコのほうよ。男だらけの国があるのよ。
   正確には…精神的に男女の差のようなものはあれど、外見はみんな”いい男”なの。」
せら「そ、そうなんだ…」
丸い長老「ということは、今の魔王は良い漢王国の国王が兼任しているってことになりそうだね〜。」
、「行ってみる価値はあるだろう。その良い漢王国とやらに。」
せら「そうだね。。」

丸い長老「良い漢王国の王様かー。確か今の王様は…冥属性の魔力の持ち主じゃなかったかな〜。」
シヴァ谷「冥…!!」
丸い長老「あらゆる属性への耐性が強いよ。良い漢王国に直行するよりは時間を食ってしまうけど、
     まぐなかるたへ寄るのはどうかな〜?」
、「なぜだ?」
丸い長老「実は、まぐなかるたの最後の英雄がまだ帝国の遺跡内に封印されていると聞くよ。
     もし封印を解いて協力を願えば、回り道をした分は魔王との戦闘で余裕で
     取り返せると思うよ。」
、「なるほど…。」
シヴァ谷「ここから南西へ、か…距離にもよりますが、ニコパイレーツが連れて行ってくれるのであれば…」
かに「そりゃ船のない勇者ご一行を連れてくって行ったんだから、魔王の国までは連れて行く
   つもりが最初からあるよ! それにまぐなかるたに寄るなら俺も古い友人に挨拶がしたい!」
、「なら、決まりだな。」

せらたちは、まぐなかるたへ寄り砂漠の遺跡の中から過去の英雄の力を解放することを目指すこととなった。

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今日の登場人物

丸い人 丸い人の村に住んでいる小さい人々。丸い。せらに協力的。



文:(V)・∀・(V)
原案:蟹Projects

【蟹ProRPG】第6章『魔王とはなんだったのか』

地下から少女が悲しくすすり泣く声が聞こえる。
大小さまざまなモンスターたちがウロつく、ひんやりとした城内。


魔王「…暇だなぁ…」

玉座にて。

魔王は暇を持て余して退屈そうだ。

魔王「そうだ!! 勇者が来たときに備えて練習しなきゃ!!」

魔王はすっくと立ち上がると、真剣な顔つきで3歩歩み出ると演技の練習を始めた。


魔王「ふははははははは!!!!! よく来たな、小賢しい勇者どもよ!!
   このワタシに、勝てるなどと思い上がりも甚だしいわ!!!
   見せてくれよう…ワタシの…本当の
……ゲホゲホ!!!」

魔王は言い終わる前にむせ返った。

魔王「だめだ…こんなにドスを利かせていたらすぐにNP(のどぱゎゎ:発声力)が尽きてしまう…。
   もっと手加減しながら…、そうだなぁ、強く喋ることより低い声を出すことを
   優先しようかな。
   そんなこんなで、今日の練習終わりっ☆」

一人、自分に言い聞かせるかのごとく呟くと、彼は再び玉座へ戻る。
そして懐から小型の通信機のようなものを取り出し、カチカチとボタンを押した。


魔王「ノ、ン、ケな う ☆ で、ポチっと。リプあるかなー。」


マリオ王の発言  @魔王:ツイートしてんじゃねえよ
魔王いさじの発言 @マリ王:あ、マリオさん。最近どうですか。
マリオ王の発言  @魔王:暇ー
魔王いさじの発言 @マリ王:ワタシもです。
マリオ王の発言  @魔王:で、今どこ?
魔王いさじの発言 @マリ王:城です。食事でも行きますか?
マリオ王の発言  @魔王:えー、さっきご飯食っちゃったから、また今度で


魔王いさじは、ここまでのやり取りを終えるとふぅ、とため息をついて、背もたれにゆったりともたれかかった。

いさじ「早く勇者来ないかなー… 待ちくたびれちゃったな…
    そうだ、くろみつ姫に三味線を弾いてもらおうっと。」

いさじは、地下へ降りる階段をやや急ぎ足で駆け下りた。
すすり泣く少女の声はやみ、三味線の音が響いていた。

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今日の登場人物

いさじ 冥府の王。冥属性。
くろみつ姫 誘拐されたらしく魔王の城の地下に幽閉されている。不思議な三味線を弾く。



文:(V)・∀・(V)
原案:蟹Projects

【蟹ProRPG】第5章『島を出る』

前回までのあらすじ。
海老のことになると見境がなくなる天むすをうっかり怒らせた海老嫌いのせら。
居酒屋かにみそ鍋のバイト衆が力づくで騒ぎの収拾にあたり、
せらと天むすは、不本意ながらパーティ編成をするハメになった。


そして――

みそ「じゃあ、そういうことで頑張ってね」

かにみそはにっこりと微笑んだが、せらは怯えていた。
昨晩の出来事で、天むすが降らせた隕石によりかにみそ鍋の建物には損傷が残り、
その賠償責任はせらと天むすにあるとされた。

二人はすでにパーティ契約を結んだことになっていたし、かにみそは加えて
‥径粟でキレると我を忘れる天むすの見張り役としてのシヴァ谷(地属性)
■裡丕辰里廚舛泙蠅
をパーティメンバーに抜擢し、4人の連携で店の修理代を稼ぎがてら旅に出るよう指示した。

せら(みそさん、今、目が笑ってなかったなぁ…)


せら「ぷちまりもさん、はじめまして、せらと申します。よろしくお願いします!」
ぷちまりも「ここは、大衆居酒屋かにみそ鍋です。荒くれ者のたまり場ですなっ!」
せら「え、えーと…ぷちまりもさんは、どういう能力を使う人ですか」
ぷちまりも「ここは、大衆居酒屋かにみそ鍋です。荒くれ者のたまり場ですなっ!」
せら「…」

、「まりもさんはNPCだって言っただろ? ノンプレイヤーキャラクターだよ、
  人格とかはない。まぁ、育成型AIが組まれているらしいから一緒に旅をするうちに
  少しは学習をするのかもしれないが、今は人間的な会話は諦めろ。」
せら「そ、そうか… 僕もBOTとか言われてるから、逆にうまくかみ合うかと思ったけど…」
シヴァ谷「ちなみに、今せらさんがしていた質問の答えを私が代わりにするとすれば、
     ぷちまりもさんは魔法属性を持ちません。彼はNPCで、生身の人間とは違いますから
     魔力を生まれ持っていません。その分物理攻撃や物理防御にかなり特化しています。」
せら「なるほどぉ…。見るからに強そうですしね。どこが”ぷち”で”まりも”なのだろう…」
ぷちまりも「ここは、大衆居酒屋かにみそ鍋です。荒くれ者のたまり場ですなっ!」
シヴァ谷「こういったNPCは量産されて国の要人のSPとして配備されたりしています。
     ただ、勇者のパーティに加わるというのは前代未聞かもしれませんね。」
せら「そうなんだ。。」
シヴァ谷「無属性の勇者にNPCのパーティメンバー。
     一体どうなることやら。私は楽しみですけどね!」

、「ところで、どうするんだ? これから先。まず魔王がどこに行けばいるのかとか、
  倒すために何か必要なものがないかとか、そういうことがわからないと
  出発もできないじゃないか」
シヴァ谷「そうですね、魔王の所在地は代々変わりますからその都度リサーチが必要ですし、
     勿論対策についても同様…。マリ王が魔王のことはよくわからないと仰っていたと
     せらさんが言っていましたよね? しかし、通常勇者を選抜する国王は
     魔王のことも少なからず知っているはずなのです。もう一度マリ王のところへ行ってみましょう。
     せらさんがパーティを組んだことで、何か新しい情報がもたらされるかもわかりません。」

4人はマリ王の城へやってきた。

ぷちまりも「ここは、マリオ王の城ですなっ!」
せら(もしかしてぷちまりもさんって道しるべに使えるんじゃ…)

マリ王「あ、せらさんじゃん。何してるの?」

応接間でせらパーティが待たされていると、王室と逆の方向からマリ王がやってきた。
その後ろにはぷちまりもさんが、いや、ぷちまりもさんと全く同じ外見のNPCが侍っている。
これがおそらくSP用NPCなのであろう。

せら「あ、マリオさん、僕一応パーティ組んだからね、魔王っていうのがどこに行けば退治できるのか
   詳しく聞けたら聞こうと思って…じゃないとどこへ行けばいいのか」
マリ王「ええ!? 本当にパーティ組んだんだ!? あはははは!! あはははははは! お腹痛い!!」
せら「今、そんなに面白いとこ!?」
マリ王「魔王は少なくともこの島にはいないから島からとりあえず出なよ。」
せら「なにその追放宣言っぽいの!」
マリ王「どうせこの島にはこの国しかないんだし、魔王が近くにいないことは確かだよ。
    魔王っていうのはもっと遠いところにいるものなんだ。」
せら「そうなんだ。ところでマリオさん、僕はあとどのくらいの経験値で次のレベルにあがるの?」
マリ王「はぁ? 知らないよそんなの。なんで僕に聞くんだよ。そもそもせらさん、レベルとか上がるの?」
せら「ええっ!? あがんないの!? 王様ってそういうの知ってるんじゃないの?」
マリ王「えー、知らない。あがんないんじゃない?」

SP「陛下、昼食が冷めます」
マリ王「あ、そうか。もう行くよ、せらさん。」
せら「あ! まりもさんがしゃべった! すごい!!」
マリ王「え? ああ、このSPはちゃんと調教が済んでるからね。
    せらさんもパーティメンバーのぷちまりもさんをちゃんと育てなよ。じゃあね。
    え、船とか用意してないから、テキトーにやって。」

マリ王は王室へ戻って行った。


せら「魔王が遠くにいる、ということしかわからなかった…」

せらの頭上に「ガーーン」という文字が見えるようだった。

、「とりあえず島を出て情報収集しかなさそうだなぁ。」
シヴァ谷「まぁそういうのは得意分野なので、なんとかしましょう。」
ぷちまりも「ここは、マリオ王の城ですなっ!」


この島は外周をぐるっと森に囲まれた暖かい小さな島国で、島の中心にマリ王の城、その周辺に城下町、
その外側は小さな集落がいくつかあるもののほとんどが森林で、その更に外側は海だ。
島の南側に一つだけ港があった。

せら一行は港へ行き船を捜すことにした。
港の近くには、漁業や造船などをを生業にする人々の集落があった。


せら(このあたりにはあまり来たことがなかったなあ…いままで縁がなかった)

桟橋近くで周囲を窺っていると、ひときわ大きな船からぞろぞろと人が降りてきた。
しかしその船は漁船でも客船でもなさそうだ。

「海賊がきたぞー!!!」

それを見た漁師が互いに声を掛け合って警戒を促し始めた。
よく見れば船にはドクロの…いや、蟹のマークの旗が掲げられていた。

せら「か、海賊? あの人たちが!? 先頭は女の人だよ!?
   それに、旗には蟹の絵が… 蟹漁船じゃないの!?」
シヴァ谷「海賊は何をしでかすかわかりませんよ、戦闘の心積もりを!」
、「このパーティでの初の戦闘が海賊相手になるとはねぇ…!」

海賊船長「なんなの、お前たち。どいてくれない? ちょっと食料調達に来ただけなんだから。」
せら「ご、強奪とかするつもりですか!」
海賊船長「強奪? 何言ってるんだ?」

せらたちの後ろから漁港の人たちが集まってきた。
せらは、自分より漁港の漁師たちの方が体力的に有利な気がしたが、なるべくなら
こんなところで人々に血を流して欲しくはなかったので、可能な限り踏ん張ってみようと思った。

しかし――

漁師「今朝獲れたマグロですがどうでしょう!」
漁師「珍しく蟹が獲れたのでこれはと思って確保しておきました!」

漁師たちは目にも留まらぬ速さで、桟橋の近くに小さな市場を作った。

漁師「おお、旅の人たち、この海賊の人らはニコパイレーツといって、ここらへんの海の
   治安を守ってくれてる。時々食料を買い込みにこの島へ上陸するんだ。
   そんときには、たっくさん買ってってくれるからよう、俺たちも新鮮な魚や干物を
   めいっぱい用意して、ほら! こんな風にじっくり見ていってもらうのさー」

せらはあっけにとられた。

シヴァ谷「どうやら平和的な海賊のようですね。」

天むすは抜きかけていた剣をカチャリと鞘に収めた。

海賊船長「俺はかにぱん。っていうんだ。ニコパイレーツの船長を務めている。
     お前たちは…はぁ〜ん、見た感じ、勇者ご一行様といったところか?
     今までに見てきたのとはだいぶワケが違ってそうだが。」
シヴァ谷「そうですね。私も自分でパーティにいながらにしてアレですが、
     今までに見てきた勇者ご一行様とはちょっと異なる要素がいくつか…。」

かにぱん。と名乗る船長は、どう見ても女性なのだが、口調はまるで男だった。

かに「おーい、だっしゅー!」
だっしゅ「おーなになにー? 面白い話ー?」

かにぱん。がだっしゅという男を呼ぶと、筋肉の美しい男が目を輝かせながらこちらへやってきた。

かに「新しい勇者様らしいぞ。」
だっしゅ「へー! 今度は剣士かい。」

かにぱん。は天むすを指差していた。
天むすが焦って手と首を忙しく横に振りながら否定した。

、「いや、僕はっ…一度は目指したこともありますが…今回はあくまでパーティメンバーの一員。
  勇者は、こっちの…」
せら「あ、僕、デス。。」

かに・だっしゅ「へ?」

かに「え、勇者こっちなの?」
シヴァ谷「そっちなんです。」
だっしゅ「こっちなのか…」
せら「あ、こっちでスミマセン…」
かに「そりゃさぞかし…何かふか〜〜いワケがあるんだろうな…」
せら「あ、ハイ。まぁ…。」


そのとき、漁師たちと談笑していた他の海賊メンバーたちが呼ぶ声がした。

海賊団員A「船長ー! 海老安いってー! 買っとくー?」
かにぱん。「買っといてー!!」
海賊団員A「あいあーい」
、(海老だと…!!?)

かに「今のは航海士のこたねっていうんだ。こいつは、副船長のだっしゅ。
   あっちにいる女性が前菜っていう考古学者で、情報通。
   その足元のがペットの梨姫しゃん。えーと…ああ、こたねちんの横で食材抱えてんのが
   コックのオメがんだな。船大工の汽車ってやつもいるんだが、多分今造船所のほうへ行ってる。」
せら「ほう。」
かに「で、今回の勇者ご一行様はどういったパーティメンバーで?」


せらはたどたどしい口調でこれまでの経緯を説明した。

かに「そうかー。ならさーとりあえずうちの船に乗ってみなよ! 楽しいしさ!!
   魔王のことに詳しい種族が暮らしてる島へ連れてってやるよ!!
   そいつらに聞けば、魔王の牙城がどこなのかーとか、これだけは持っていくべき!とか、
   教えてくれっから!」
せら「えー、ほんとにー!」
かに「ほんとほんと!! 多分あいつらこの星の生き物じゃないんだろうなー。
   センサーからして違ってる… まぁとにかく、そこに行ってみれば、次にどうするかもわかるよ!」
せら「やったー」
かに「その代わり…もし海上で別の船に会ったときには、捕虜のフリをしてもらうぜ」
せら「え・・・」


せら一行は、ひとまず親切な海賊の船に乗せてもらうことになった。


----------

今日の登場人物

ぷちまりも 魔力・魔術とは無縁。物理属性。NPCなので応答が一辺倒。パーティメンバー。

かにぱん。 世界の海をまたにかけるニコパイレーツの船長 水属性
だっしゅ ニコパイレーツの副船長
こたね ニコパイレーツの航海士
汽車 ニコパイレーツの船大工 無双力(むそりき)の持ち主
オメがん ニコパイレーツのコック 
前菜 ニコパイレーツの考古学者にして諜報担当 
梨姫 ニコパイレーツのペット 



文:(V)・∀・(V)
原案:蟹Projects

【蟹ProRPG】第4章『てすと』

せらの装備。
白と青のセーラー服。縦笛。白衣。あと、筆ペン。

せらは道具屋を出ると”かにみそ鍋”に戻った。
今日は扉を開けるごとに勇気が必要になる。
かにみそ鍋の扉が先ほどより更に重く感じられた。


みそ「あら、おかえりなさい。…随分と趣味的な装備を…」
せら「いや、これは…僕の趣味ではないです…
   様々な理由からこれしかないと言われました」
みそ「えんどぅさんのお店へ行ったのね。物は確かだから安心して使えるわ。」
せら「そ、そうですか。」

みそ「それで、パーティメンバーなんだけど…」

かにみそが名簿を開いた。
名簿には付箋がたくさん貼ってあった。

みそ「一応ピックアップはしたものの、あなたの属性がわからないと最終的な相性が
   判別できないかな〜というところよ。」
せら「あの…さっきは聞きそびれちゃったんですけど、ぞくせいってなんですか?」
みそ「そうね、自然界にある火や水や、そういったものに元々あるチカラをちょっと借りて
   自分の魔力で増幅させて攻撃や防御、回復に用いるための”カテゴリ分け”のようなものよ。
   どんな人でも微力ながら魔力は持っていて、それを発揮するのにもっとも適している
   チカラの種類は何なのか、ということね」
せら「あらかじめ決まっているものなのですか」
みそ「そうね、大抵は遺伝のように生まれ持ってくるものみたい。家系や種族によって
   特化した属性があったりするくらいだし。
   あなたの属性を知るために少しテストをしないといけないわね。
   一番奥のテーブル席に腰掛けて待っててくれる?」
せら「あ、ハイ。」


店内は入って正面にカウンター、左に2人掛けのテーブルが二つ、
右のほうにはテーブル席が多数設けられており、せらは言われたとおりテーブル席の間を
おそるおそる縫うようにして歩いていき、一番奥の誰も掛けていないテーブルにたどり着いた。

せら(なんか、視線がイタイ。。)


青年「メンバー探しですか?」

礼儀正しそうな青年が話しかけてきた。

せら「あ、不本意ながら・・・」
青年「不本意・・? 旅に出たくもないのにパーティメンバーを募集しているのかい?」
せら「えーとまぁ・・・巻き込まれるような形でして。。」
青年「そうか! さっき噂になってた、”勇者せら”ってもしかして…!」

青年はひらいめいた!とばかりに手を打ち、目を輝かせながら覗き込んできた。

せら「あ、もう、名前まで広まってるんですね…」
青年「僕はえびちゅ! 他に天むす、とか呼ばれてる。
   マリ王の咄嗟の思いつきで勇者に選ばれてしまったんだって?」
せら「そ…んな感じですね。」
、「そうか。勇者を目指して自己研鑽に日々励む若者も少なくはないし、
  勇者と共に魔王を倒しに行きたいと思っている旅の者も世界中にいる。
  いい仲間が見つかるといいけどね。」
せら「あ、ありがとうございます。」

天むすはなぜか上機嫌になってお酒が進み始めたようだ。

、「そうだ、エビ、食べる?」

天むすは、自分が座っていたテーブルから小皿を持ってきた。
そこには、いわゆる日本の寿司ネタにあるような茹でたエビが綺麗に並べられていた。

、「スシとかいう調理方法で、こういう風にするらしいんだ。みそさんがハポン文化に詳しいからね。
  このお店ではこういうのが特別食べられる。」
せら「あ、えーと、僕エビギライなんで…その…。遠慮シマス。」


それまで楽しげだった天むすの表情が急にこわばり、しゅんとなり、その次には怒りに満ちたものに
変わった。


、「俺のエビが、食えないだと…?」
せら「え、あ、いや、そういうことではなくて、エビ全般が、あ、でもエビチリだったら」
、「俺がエビ大好き、エビ主食、エビ家紋を掲げるえびちゅ家の剣士だと、
  知ってか知らずか…いずれにしても、俺が差し出したエビを食えないなんてやつが
  この世にいていいわけがない…」
せら「そんな…」

天むすの耳にせらの言葉は届いていないようだった。


店の外から突如、地鳴りのような音が響いてきた。
何かが近くに落下したらしい。

店内がざわつく。

厨房からどやが走ってきた。

どや「おい、まさか…!」

小石が屋根を突き破って店内の床にめり込んだ。
どうやら天むすの怒りで彼の能力が暴走しているようだ。
天属性の彼は隕石を操ることができるらしく、周囲の客たちは呆れたり焦ったり
各自のリアクションを取りながら天むすから距離を置いた。

近づいてきたのは、厨房のバイトたちとシヴァ谷だった。


まぐ「天さん落ち着けよ、エビくらいで」
、「エビくらいって言うな…!」
まぐ「あぁ、うん、悪かった。今まさに俺は神経を逆撫でした!」

風伯は彼の自慢の巨大鉄扇を振りかざして厚い鋼鉄のバリアを、屋根の上に張った。
おかげで店内に小隕石が降り注いでくることはなくなったが、バリアにそれが
ぶつかる激しい衝撃音は響いてきた。

どや「まったく、だからお前は俺からちゃおずって呼ばれるんだよ」

どやは余裕の態度だ。

朧月「…君は人を怒らせるのが得意なのか? もしくは趣味か?」

朧月はせらに問うた。
せらは必死で首を横に振った。


シヴァ谷は静観している。


どや「まぁこいつはエビのことになるとなぁ、もう、一回コテンパンにするしかないんだよ、ホント。
   わかってるんだよ、あーめんどくせーめんどくせー。」

どやはそういいつつもなぜか嬉しそうに指をパキパキと鳴らしている。
天むすはせらの方から、どやのほうへと向き直った。
体中から「私はいま怒っています」というオーラを発している。

朧月の足元からピキピキと音を立てながら氷が広がりそれは店内にドームを作った。
ドームの中には6人。

怒り心頭の天むす。
そしてそれをおとなしくさせるためと思われる店員3人、どや、まぐ、朧月。
天むすに同じく客のはずで、天むすとせらのやり取りについてはおそらく聞いていなかったであろう
シヴァ谷。
大変なことになってしまった、と震えるせら。

どやが指をパチンと鳴らすとそれを合図に、どや、まぐ、朧月、天むすの4人は
激しい攻防戦を繰り広げ始めた。
シヴァ谷は、時折地属性の能力で天むすの攻撃をかきけした。
せらは「なるほどこれが属性か」と無意識に観察もしていたが、いつとばっちりを食うかわからない状態だ。
戦い方を全く知らない彼はただ見ていることしかできなかった。

天むすは怒りに我を忘れているため冷静さを欠いており、彼の召喚する隕石の類は
すべて風伯の作った鋼鉄の結界に完全に阻まれ氷のドームはおろか、店の屋根にさえ到達していないが
そのようなことにはお構いなしに剣術でも攻撃を繰り出す。
どや、まぐ、朧月の3人はどうやら魔法攻撃や、魔法防御がメインのようで、
天むすの素早い剣戟への耐性はいまいちのようだが、確実に天むすの体力を奪っていくことに
成功しているようだ。
天むすは隙を見てせらへも攻撃を仕掛けようとしたが、その攻撃は直前で別の誰かによって
キャンセルされたり、かき消されたりした。

せらはうろたえるしかなかったがそのとき、どや、まぐ、朧月がなにやら3人がかりの大技を
繰り出そうとしているのがわかった。
天むすはかなり傷ついていてそれを避ける余力はなかったように見えた。
しかし、彼はこのときを予想していたかのように、残しておいた力でその魔法攻撃を避けた。
そのときちょうど背後にせらがいることに関して彼は完全に失念していたし、
何について怒っていたかを考えれば庇うつもりなど毛頭なかった訳で、
せらはその攻撃をもろに食らった!


しかし、せらはダメージを受けなかった。

装備している白衣とセーラー服のせいなのだろうか。
炎と磁力、雷と土、氷と月、という、2種×3人分の魔法攻撃は、せらに1ダメージも
与えることはできなかった。

最もうろたえたのは、その攻撃を放った当の3人である。

その瞬間、避けはしたものの体力は残っていない天むすが気を失い、
ドサリと倒れこみ、どや、まぐ、朧月はそれを見ると、すぐにそれが演技ではないと悟ったのか
構えの体勢を解いた。

朧月が氷のドームを消し去ると、まぐとどやが天むすを担いで店の外へ出た。

朧月がせらの傍に寄ってきた。

朧月「順序はめちゃくちゃになったけど、テスト終了。
   君、無属性、みたいだね。無属性の勇者は、俺の知る限り、史上初なんじゃないかな。」

せらは、その言葉をうまく自分の中で解釈する集中力も途切れるほどに精神力をすり減らしていたので
朧月が言い終わるのが早いか、その場に倒れこんでしまった。



翌朝目覚めると、せらは宿屋のベッドにいた。
隣のベッドには天むすが寝ている。
寝ているというよりは、瀕死の様子だった。

せらは幸い身体へのダメージはなかったので、部屋を出るとすぐ目の前の階段を下りて
宿屋の受付カウンターへ行った。


宿屋「おぉ〜!お目覚めですか!!」

若い男性が長い金髪の髪をうっとうしそうにかきあげながらカウンターの奥から顔を覗かせた。

宿屋「この宿屋の経営と神父を兼任している ぽあろ でっす!
   昨晩はお楽しみでしたね☆」

せらは昨晩の夢を思い出そうとしたが珍しく記憶の欠片さえ掴み取ることはできなかった。

せら「あ、あの、僕と一緒、というか僕より先?に担ぎ込まれていた人なんですけど…」
ぽあろ「天むすさんね! うーん、かなり危険な状態だね…」
せら「そう、なんですか…」
ぽあろ「よみがえらせますか?」
せら「え? できるんですか」
ぽあろ「神父兼任ですから!!」

ぽあろはキラキラと音がなりそうなドヤ顔で微笑んだ。

せら「じゃ、じゃあ…えーと、それいくらですか」
ぽあろ「天むすさんは27レベルだから27000マイリスです!」
せら「ええーっ!」


せら(やっぱり結構高いなぁ… でも、背に腹はかえられないよね。
   あんなに大怪我したのも僕が怒らせちゃったからなんだし。)

ぽあろ「どうしますか?」
せら「お願いシマス!」


せらが30000マイリスをカウンターの皿に置きながらそういうと、ぽあろは突如華麗に舞い始め
キラキラと光を放った。
眩しくてせらが目を細めながら見ているとその輝きはやがておさまり、額にうっすらと汗を
浮かべたぽあろが息を切らせていた。

ぽあろ「ふぅ…。 覚悟、完了!!!!!」
せら「えええー覚悟しただけ!? 今の、ただの覚悟の舞!?」
ぽあろ「冗談ですよっ☆ 天むすさんなら2階で全回復しているはずです。
    ところで…あなたと天むすさんはパーティメンバーでなければ、よみがえらせることは
    できないので、僕が今の能力を使う際についでにパーティ構成を強制的に
    行っておきました。」
せら「は、はぁ…。」
ぽあろ「解除はかーなーり面倒な手続きがいるので、諦めて一緒に冒険の旅に出ちゃったら
    いいと思いますよ!
    あ、ちなみに」

そういってぽあろは、ビラを手渡してきた。
ぽあろ自身が描いた自画像がドデカくフルカラーでプリントされており、
「お得!! よみがえりの舞 キラキラなしで90%OFF!!」
の文字が踊っている。


ぽあろ「キラキラエフェクトをなしにすると、90%OFFっていうサービスもやってますんで!」
せら「え!? 90%OFFって、さっきのパターンだと2700マイリスでやってくれたってこと!?」
ぽあろ「はい〜☆」
せら「…そんなに安くして、よみがえらせる効果に何か悪影響が出るとか、ないんですか」
ぽあろ「ご安心ください! キラキラしようとするまいと、しっかりよみがえらせます!
    お値段据え置きで同様の効果です!!!」
せら「そんな…2700マイリスのほうで良かったのに…据え置いてないし!!」
ぽあろ「初回特典でキラキラエフェクト付にして差し上げましたのに!
    これ、喜ばれるんですよ〜?僕に。 滅多に注文がないのでなかなか見せる機会がなくて…」
せら「知らないよ!」


せらは、2階へ駆け上がった。
ドアを開けるとちょうど天むすが半身起き上がったところであった。

せら「あ、天むすさん! 昨日は…ごめ」
、「ん…? あ、せらさん…。俺は一体なんでこんなとこに? 宿屋??」

その様子から察するに、どうやら天むすに昨日の騒動の記憶はないらしい。

せら「あ、うん… 昨日ね、かにみそさんのお店で…色々あって、僕たち運ばれたんだよ」
、「そうだったのか。俺大怪我したみたいだなあ…服がボロボロだ。
  まさかせらさんが、助けてくれたの?」
せら「いや…僕は…天むすさんに迷惑かけちゃった側だよ…」
、「そう、なの?」
せら「うん、昨日…天むすさんがエビを薦めてくれてね…それで…僕」
、「わかった」

天むすはせらの言葉を遮った。
その口調は決して優しくはなかった。

、「俺、こういうこと初めてじゃないから、つまり何があったのかはわかったよ。」
せら「うん…」

せらは涙ぐんでいた。

、「それ以上言わなくていい。また繰り返しになるかもしれないだろ?
  それに、せらさんは勇者として、この町を…いや国を、きっとすぐに出て行かなきゃならない。
  もう、きっと関わらない、だから、すまないんだけど、何も言わないで、
  そして俺にもう話しかけないで」
せら「えーと…それなんだけど…僕たち、もう、パーティメンバーみたいなんだ…」
、「え…?」


天むすはすべてを察したようだった。

今までにもこのようなことは何度かあったが、彼をよみがえらせる契約を交わすのはいつも家族だった。
血縁はパーティ構成メンバー以外でも「よみがえりの舞」を依頼できるので、
普段彼が、エビの件で猛り狂って魔法攻撃による制圧を受け瀕死になると、
いつも家族が宿屋に呼び出されるのだった。

しかし今日という今日だけは勝手が違った。
家族が来るより先にせらが27000マイリス支払って、天むすをよみがえらせてしまった。
そしてそれにはパーティ構成が必要だということに天むすは思い当たったのだ。

余談だが、よみがえりの舞は既に死んでいる者や、寿命を迎える寸前の者には効果を表さない。
魔法攻撃を受け身体と魔力が弱っている状態の「瀕死」の者を全回復させ救うものである。


、「パーティの解除をするには、超膨大な量の書類をみそさんに提出しなければいけない…!
  くそっ! なんてことだ! 俺は、いやだぞ! 協力しないぞ!!
  エビが嫌いなせらさんなんかに、絶対ついていくもんかー!!!!」
せら「僕、エビチリなら食べられるよ…」
、「……!?
  うるへー! エビチリ”なら”じゃねえー! 贅沢いうな!!」
せら「ご、ごめなさいっ!」

-----------

今日の登場人物

えびちゅ/天むす 天属性の剣士。えびが嫌いなせらに対して非協力的。パーティメンバー。



文:(V)・∀・(V)
原案:蟹Projects

【蟹ProRPG】第3章『どうぐやとぶきぼうぐや』

厨房からは主にまぐのけたたましい声が響き続けていた。
せらはそわそわがおさまらず、お腹が痛くなりそうだ。

せら「あの、僕ちょっと先に道具屋とか、見てきてもいいですか?」
みそ「そう。わかったわ。人材を何人かピックアップしておくから。」
せら「アリガトウゴザイマス!」

せらはそそくさと”かにみそ鍋”を後にした。
店の喧騒から離れると、勇者という肩書きからも解放されたような気持ちが湧いてきたが、
それは錯覚であることは火を見るよりも明らかだと思ったし、そんな揺れる自分の感情と
現実には余計に眩暈がする思いだった。

せら(なんで僕がこんな目に遭っているんだろう?マリオさんと幼馴染だったから…?)


回復アイテムはおそらく装備品よりは安価なはずだ、と考えたせらは装備を整えた上で
道具屋を見てみようと、まず武器・防具屋へ向かった。
そして余ったマイリスで回復アイテムを揃えればいい。


店員「いらっしゃいませー!!」

店員は、じんだいに着せた作りかけの服にまちばりを刺しながら応対した。
性別があやふやな感じはどうやらエルフ族のようである。
エルフ族は手先が器用なため、武器と防具の店をチェーン展開しているのだ。

店員「店主のえんどぅです! どういったものをお求めですか?」
せら「あ、どうも。。えーと…動きやすくて防御力がそれなりに高い防具と、
   あまり重くない武器ください。」
えんどぅ「ふむふむ、かしこまりました!こちらなどいかがですか?」
せら「えっ、これ…スカートですけど。。」
えんどぅ「単なるメイド服に見えますよねー! これ魔法防御力がすごく高くて、
     軽いしオススメですよ!」
せら「僕、それ着たことありますけど…あまり動きやすい印象はないなあ…」
えんどぅ「その辺は、このえんどぅが、色々工夫を凝らしていますから、
     そんじょそこらのメイド服と一緒にしてもらっては困りますね!」

えんどぅはくすくす笑いながら、いかにそのメイド服が機動性に優れているか説明した。
せらは、いくら機動性に優れていても外見的にもうちょっと何かないのか、と
店内をキョロキョロ窺った。

せら「えーと…予算が、武器と防具合計で50000マイリス上限なんですけど…」

せらは予算内に収まる組み合わせの中から選ぼうと、えんどぅに相談してみることにした。
しかし、返ってきた答えとしては、
1、メイド服+小銃
もしくは
2、セーラー服+ダガー
の二択、というものだった…。

せら「そんな。。。」


せらは悩みに悩んだ末、前者を選ぶことにした。一旦は…。
そのときの選択理由は、近距離戦を避けたいの一点に尽きた。


えんどぅ「えーと、おそらくお客様はそれが似合わないと思うのですが、
     こちらで装備していかれますか?」
せら「ええーっ! 似合わないと思うのにどうしてそんなに熱心に薦めたの!?」
えんどぅ「”似合うか似合わないか”とパラメータの変化は別問題なので!」
せら「僕のやったゲームでは、パラメータが変化しないことと似合わないことは同義だったよ!?」
えんどぅ「そんな別次元のお話をされましても・・・」

結局せらは、予算オーバーになることを覚悟の上で
セーラー服+縦笛型小型銃+白衣を買った。

白衣をセーラー服の上に重ね着することで、なんとか誤魔化せるんじゃないかな、と思ったからだ。
店を出る、という何気ない動作にも一握りの決心が必要になったが、
防御力のためだ、しょうがないことなんだ、と自分を納得させ、せらは店の扉を開け外に出た。

えんどぅ「ありがとうございましたー!」



次に、せらは”やくそう”などの回復アイテムを買い溜めするために道具屋へ向かった。

店員「いらっしゃいませー!」

カウンターで若い女性が笑いかけてくれたので、せらは直接聞いてみることにした。


せら「やくそうとか、ありますか。あ、戦闘で傷ついたときに回復できるものであれば
   やくそうじゃなくてもよくて…ハンバーガーとか…宝玉とか…」
店員「ないですよー!」
せら「ええっ」

店員の左胸にピンで留められているネームプレートには「ひろむ」と書いてあった。


ひろむ「お客さん、うちは薬屋でもなければ、ハンバーガーショップでもないんですよ。
    道・具・屋ですから! 薬草とか自分で採集してください。」
せら「あ、ご、ごめなさいっ。うーんと、じゃあお店間違えちゃったなあ。。」
ひろむ「折角だからうちの自慢の、道具を見ていってくださいよ。
    何 も 買 わ な い で 帰 れ る と 思 っ て る ん で す か ?」
せら「ひい。。」

店内は、扉をくぐって正面がレジカウンター。
左右の壁には棚が配置されており、どうやら文房具を多く扱っているように見受けられた。
室内中央に小さなテーブルもあり、【安売り】や【特集!】などのポップが踊っていた。


ひろむ「今日、筆ペン安いですよ!」
せら「え、興味ある・・・」
ひろむ「文字を書きますか? 絵を描きますか?」
せら「どちらもかくけど、一応肩書きは・・・あ、まぁ・・・絵描きです」

せらは、今日自分の肩書きに「勇者」が追加された件に触れるべきか迷ったが
今は黙っておくことにした。

ひろむ「じゃあこちらの筆ペンおすすめですよ! 10000マイリスしますけど、
    これでも値下げしてあるんです!!安いんですよ!!」
せら「へ、へぇ・・・そうなんだ・・」

せら(筆ペンに今10000マイリス払う余裕は正直ないよなあ。。
   ペンは剣よりなんとかと言うけどもね!)


ひろむ「ち・な・み・に この定規!かわいいでしょ!!?
    今月はものさし月間ってことで特集組んでるんですよ!
    2000マイリス均一!
    ものさしがあれば、直線も書けるし、長さも測れちゃうんですよ!?すごくないですか!」
せら「うわあ。。便利だなあ。。昔ものさしってアイテムが出てくるRPGあったなあ。」
ひろむ「絵描きさんならものさしは何かと要りようだし、結構カッターの歯で削れて
    消耗したりしますからねー。2本くらい買っちゃいません!?」
せら「あ、でもぼく・・・」
ひろむ「じゃあ…こっち! 見てくださいこの分度器!!
    模様つき雲形定規もかわいいけど、分度器みたいに角度は測れませんからね!」

朧月「それ、一個ください」


ひろむが商品解説に夢中になって、せらがその勢いに気圧されていると、
いつの間にか背後には朧月が立っていた。

せら(あ、さっきの…。ろうげつさん、だっけ? 分度器、買うんだ。)


ひろむ「ありがとうございますー! 3000マイリスになりますっ」
朧月「んーーちょっと財政的に厳しいけど、必要なものだからなぁ。
   はい、3000マイリス」
ひろむ「丁度戴きます。こちら、商品と、当店の最新カタログになります。
    ありがとうございました!」

せら「あ、あの。。朧月、さん?」
朧月「あぁさっきの子だよね。そんなに分度器が珍しい?」
せら「あ、いや、分度器、一体何に使うんですか?」


一瞬、空気がピリっとしたのをせらは肌で感じたがすでに手遅れだった…。

朧月「俺、月の魔術使うからさ、角度とか満ち欠けって大事な要素なんだよね。
   今までに買った分度器の数は数え切れないよ。中でも特に大事にしているものだってある。」
せら「そ、そうだったんですか。無知でごめんなさい。」
朧月「そんなことも知らないのに、どうして勇者になんて選ばれたんだい?」
せら「うぐぅ。。」


朧月は、せらをもう一度じっと見つめると黙って店を後にした。
せらはとても悪いことをしてしまった、と思ったし、このあと”かにみそ鍋”へ戻るのは
大層気が引けてしまったが、朧月の後に続くしかなかった。
ただ、店を出る前に筆ペンは一本買っておいた。

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今日の登場人物

ひろむ 手作り文房具を扱う道具屋の店員。
えんどぅ 武器防具屋のデザイナー。機動性を兼ね備えたメイド服などを作る。



文:(V)・∀・(V)
原案:蟹Projects
かうんたぁ
かにぱん。とは

(V)・∀・(V)

ネトラジDJ・かにぱん。と申します。
以後、お聞き知り置きを…
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