ティム・バートンとジョニー・デップのゴールデンコンビが送る、ストップモーションアニメ
「コープスブライド」をようやく見ました。
ティム・バートンのコープスブライド(字幕)

この「ゴールデンコンビ」は「シザーハンズ」からのファンです。
当時小学5年生でしたが、「ホームアローン」との2本立てで観ました。
記録に残る映画「ホームアローン」と、記憶に残る映画「シザーハンズ」という
とてもわかりやすい対比を目の当たりにしましたw

さて、コープスブライドについては、ネタバレも若干含みつつ、追記に書いていきます。




ティム・バートンが映画で描きたいことのひとつに、「生と死」というのは必ずあると思います。
けれど、死ぬことは怖いことではないというメッセージにのせてそれを描いている、
いや、むしろそれこそが伝えたいことなのかもしれませんが、いずれにしても、
死者や異世界の奇妙な生きものたちを、現実の人間として描かれるキャラクターよりも
生き生きとさせているパターンが多く見られます。

それは今回もそうで、物語の舞台は、「生者の世界」と「死者の世界」のふたつに分かれており、
前者の方が、色相も彩度もど〜〜んよりとしています。
「死者の世界」の方がカラフルなのです。
死者の肌の色は水色に統一されていて、皮膚のないものは骨の姿で動き回っていますが、
生きている人間は、土気色で生気が感じられず、また表情も険悪だったりします。
死者の方が、生きていることを謳歌しているようにすら感じられます。死んでますが。
死者の世界の、ベッド、食事、楽器、家具、町並みなどが、例えばディズニーランドの
アトラクションの一部のようにカラフルで、鮮やかで、ポップです。
けれど、生きている人間たちの世界にあるそれらのものは、にび色で、動きがなく、
鋭かったり、暖かみが感じられなかったりします。
そういう視覚表現からも、死ぬことをむやみに恐れることは滑稽であるというような
メッセージがあるように感じられます。
生きている人より死んでいる人の方が生き生きしてるなんて、生き物として悔しくないの!? みたいな。

それに、聴覚のほうへも音楽で訴えてくるものがあります。
今回はミュージカル調のシーンも多いのですが、キャラクターが歌ったり踊ったりしている部分以外でも
音が綺麗で魅力的でした。
前から他の作品についての記事でも言っていますが、ターゲットをどちらかといえば子供に絞っている作品が
ミュージカル調になるのは、その方が子供にとっては受け取りやすく、親しみやすいからであって
話の筋だけを追いたい人には「なんで歌う必要があるんだ!?」となるかもしれません。
けれど、これは「絵本映画」というジャンルだと私は解釈しているので、
子供のために歌の掛け合いや、話の展開を一旦ストップさせてしまうレベルでの音楽シーンが挿入されているのだと思います。
尚、劇伴は、こちらもティム・バートンとのセットでおなじみの「ダニーエルフマン」ですから、
私のように「シザーハンズ」前後からティム・バートン映画をいくつか見ていると、音を聞いただけで
なんだか懐かしくなるはずです。


今作の主人公「ビクター」は、「死体の花嫁(コープスブライド)」に誤ってプロポーズしてしまい、
死者の国へ連れ去られてしまいます。
ビクターは結婚式を間近に控えており、それは互いの親同士の政略結婚という形ではありましたが
ビクター自身も、相手のビクトリアも、自分たちの結婚には夢を持っていたのです。
だからビクターは結婚式を成功させたかった。
そこで、森に分け入って誓いの練習をしていたところ、「死体の花嫁」の薬指に、
それとは知らずに指輪をはめてしまったわけです。

しかしなぜそんな森の中に、花嫁の死体が転がっていたのか。
彼女は、結婚詐欺に遭って「かけおち」の待ち合わせ場所となったその森の中で
婚約者本人によって殺され、金品と命を奪われてしまったのです。
それから、ずっと、本当に自分を愛してくれる人を土の中で待ち続けていたのでした。
そして、ビクターの「誓いの練習」を受け入れ、彼を死者の国へ連れ去ったというわけです。


お話のプロットは大変わかりやすいものなので、あの人がこうで、こうなってあーやって終わるんだろうな、
と思ったとおりに展開しますから、大どんでん返しを期待する人には物足りないかもしれませんが、
ティム・バートン独特の、絵本のようなアニメ映画というジャンルにおいては、安心のクオリティという感じです。
映画の冒頭で、ビクターがガラスに閉じ込めていた蝶を外に放す描写がありますが、
「死体の花嫁」エミリーがこの世と生への未練、過去から解放されて「成仏」する様と重なるようにできています。
エミリーの姿は、無数の蝶となって飛び去っていくので、とてもわかりやすい演出です。
そういうところからも、やはりティム・バートンが「絵本」を意識している感じがしてきます。
子供たちが見ても、目で見て、見たままに受け取れる隠喩のようなものというか。

また悪役(ヒール)もわかりやすいですよね。
見たまま悪そうなやつが悪いし、ずるそうなやつはずるそうな見た目だし、
そういう悪党や小悪党によって善人が蹂躙されるものの、最後には正義が善き人の味方をする。
こういう展開は、人間の歴史の中で長い間、絵本によって子供たちに伝えられてきました。
それを映像化するとこうなるので、ティム・バートンのアニメ映画は、内容も演出もストーリーも、
「動く絵本だなぁ」と感じます。

「フランケンウィニー」もまだ見ていませんが、ニコニコには今のところなかったので別の機会にします。