ある小学校で、学校帰りの児童が行方不明になる事件が多発していた。
どうやら調べていくと、巨大なモンスターが子供を連れ去ったり、その特殊な力で砂に変えてしまったりしているようだ。
ある日モンスターから犯行予告が学校に寄せられ、その日は下校禁止となってしまった。
子供はみんな学校に泊り込み。
先生も迎撃体制を整えている。

そんな中、あるアウトドア研究家の男性が学校へやってきて、
「そのモンスターが、うちの娘 まゆみ かもしれないんです」
というのだ。
彼はアウトドア関係の著作を何冊も出している有名な人らしい。

その娘さんの資料を見せてもらうと、色の白いぽちゃぽちゃっとしたおとなしそうな女の子だ。
私と同い年くらいか。
なるほど色白で「繭美」という名前も頷ける。

しかしそのモンスターが、このまゆみちゃんの成れの果てであるという証拠だげがない。
父親は状況証拠をいくつも提示してくるが、決め手には欠ける。

空はもう暗くなりつつある。
そのときその大きなモンスターがついに学校へやってきた!
口から吐き出す水泡のようなものに飲み込まれると、一瞬で人間が砂になった。
このモンスターがなぜこんなことをするのかはわからないが、今日は児童を沢山殺したり
連れ去ったりすると予告している。

私にはなぜかそのとき、まゆみちゃんが昔から病弱で、肌に発疹ができたりするたび周囲の同級生から気持ち悪がられたり、
避けられたり、いじめられたりした過去があり、そのことがキッカケで
モンスターになり子供たちに「仕返し」をしているんだということがわかってしまった。
それからもう何年も経っているから、まゆみちゃんが人間のままだったらすでに成人している頃ではないだろうか。
でもきっとまゆみちゃんは、小学生の頃のみじめな気持ちにとりつかれたままだから、あんなモンスターになっているのだ。
そのまゆみちゃんに語り掛けないといけないのではないだろうか。

私はモンスターに向かって廊下を走った。
モンスターは恐ろしい声で
「動くなと言ってるだろう!」
と水泡を吐き出してくるのだが、なんとかそれをよけた!
そして腹の下あたりからとびついて

「まゆみちゃん!!!」

と呼んでみたところ、モンスターが硬直した。


「まゆみちゃんは、わるくないよ! だって私は、まゆみちゃんと遊びたいもん!」

モンスターがまゆみちゃんじゃなかったら、間違いなくこのあと私は殺されるのだが、私は、
これがまゆみちゃんであることをなぜか確信していて、疑っていない。
しかし正直怖さもあった。小学生だしね。
それで泣きながら必死にまゆみちゃんに、まゆみちゃんは悪くないんだからこんなことはやめて!と頼んだ。

夢中になって泣きながら叫んでいて、気がつくとモンスターはいなくなっていて私の腕の中に
プラモの箱のようなものが抱えられていた。
まゆみちゃんは罪を犯したことには代わりないので、人間にすぐに戻ることはできないんだと思った。
このプラモ状態から何か条件を満たしていかないと人間には戻れないという雰囲気。
でも、私は箱に向かってまだ「まゆみちゃん!」と泣き叫んでいた。


自分の涙がだらだら流れるくすぐったさで、目が覚めた。