せらたち11人は、その日は丸い人の村で休ませてもらい
翌朝まぐなかるたへ向けて出航した。

直線距離にしてマリオ王国〜丸い人の島以上の距離があることと、海の潮流の関係で
到達までには数日を要した。
海賊たちはというと…常に歌っていた。


大遺跡、まぐなかるた――

都市としては既に滅んでいるため、港町というものはない。
日に焼けてところどころ穴の開いた桟橋が一本突き出しているだけだ。

そして、見渡す限りの砂地である。

こたね「ここからは炎天下をしばらく歩かないといけないから、各自熱中症対策をしっかりね」
各自「はーい」

特にこの乾燥した気候に弱いのは、水属性のかにぱん。であった。

かに「俺のことはいいから…お前らは先へ進め!!…ガクッ」
だっしゅ「お前ただそういう言い回ししてみたかっただけだろ!」
前菜「でも本当に具合悪そうよ…、早くなんとかしないと」
かに「どっちにしろ会おうと思ってたんだし、南風のところで休むか…。
   まぐなかるたへ先に行くつもりだったが…この状態では…もちそうにない」

一行は予定を変更して、かにぱん。の旧知の友である南風がテントを張るオアシスへ寄ることにした。
ニコパイが持っている特殊な方位磁針を用いなければ、まぐなかるたへ歩いて行く間に
砂漠で道に迷うことは確実だったので、せらパーティだけが先に行くわけにはいかなかったし
ここまで旅を共にしてくれている海賊たちから、方位磁針だけを借りて別行動をとるという選択肢は
せらの脳内には含まれていなかった。

せらたちは、この島の北の船着場で船を降り南東に向かって歩いていた。
ここで少し進路を西に向け、しばらく歩くと突如草むらが現れた。
草むらを書き分け進むと、砂漠を歩いているときより幾分か涼しかった。

草は尚一層生い茂ってきたがあるとき急に視界が開けると、そこには
小さなテントがいくつかと池があった。
池には雨が降り注いでいる。
池の真上にだけ雨雲があった。

ニコパイは、担いできたかにぱん。を池の淵まで運び水に浸すと、
かにぱん。は水を得た魚のように…いや、蟹のように見る見る元気を取り戻した。
梨姫がテントを巡り、南風を探してきた。


南風「あっ、ニコパイだ! 久しぶりー!」

ニコパイと南風は、再会を喜んだ。
南風は小柄な少年だったが、年齢的にはかなりの大人らしい。
エルフの性別があやふやなように、南風の種族は通常の人間の場合で言う子供の段階で
外見的な成長・変化が止まる。

そして、せらのパーティは自己紹介をした。

前菜「それで、こちらがその勇者パーティの4人なの。」
せら「あ、せらと申します。はじめまして。」
南風「なるほど、 使 え な い 勇 者 とは貴方だったのですね!」
せら「Σええっ」
南風「あ、ごめんなさい! 挨拶程度に貶される風習がある人に見えたので!
   かにぱん。船長はもう大丈夫そうかな」
こたね「もうだいぶ水吸って膨れ上がってる頃だと思います。」
南風「良かった、ゆっくり泳いでってね!」


かにぱん。は池で泳いで英気を養うと、何事もなかったかのようにピンピンして戻ってきた。
一行は一番大きなテントで南風に食事を振舞ってもらっていた。

かに「よぉ!南風! 久しぶり!!いい湯だったよ!」
南風「アレ別に24時間風呂とかじゃないですけど!」
かに「似たようなもんだよ! この島に来るときはいつも世話になっちゃうねー。」
南風「ううん、役に立てて嬉しいよ!」
かに「あ、せらおとはもう話したのか?」
南風「ああ、うん、あの 使 え な い 人でしょ?」
かに「うん、そっか。」
せら「せらお!? というか、使えないの部分流した…!」
かに「ばっか、お前、男の名前は お で終わるもんだろが、普通」
せら「ええ!? それ、ものすごい偏見に満ち満ちているよ! ニコパイどうなるの!?」
かに「んー。だっしゅに、オメがんに、汽車!」
せら「おで終わる人皆無じゃんすか…!」
かに「こまけぇこたぁいいんだよっ!!」
せら「スクウェアエニックス!!!」

かに「あ、そうだ、せらお、南風はさーあの丸い人の島から、遠い昔にこの島に流されたんだ」
せら「えー、そうなんですかっ」
南風「うん、流刑的な何かでね!
   外の池を見たでしょ? 局地的に雨が降って池が形成されている。
   あれがボクの能力なんだ」
かに「南風は雨乞い師なんだよ。まぁ小さい頃はその能力を自分で操れなくて、
   元々水害に悩んでいたあの島では、呪われた子供扱いされて追放されたんだ。
   そんでこの島に流れ着いたんだが、水が重宝される大都市まぐなかるたでは、
   神の子がやってきたと崇められたもんさ。」
南風「けれど、そのまぐなかるたも、ボクの生まれ故郷の王族が滅ぼしてしまったから…
   なんとかギリギリ、まぐなかるたの人たちがボクを逃がしてくれたおかげで、
   こうして生きているけれど…
   ボクを追放した国への復讐どころか、迎え入れて、自分の命も顧みず助けてくれた
   この国の人々への恩返しもできないままだよ。
   まぐなかるたはもう完全に廃墟だ…。
   元々この島にまぐなかるたの国民以外に定住者はいないに等しかった。
   今だって、ボクが作ったこのオアシスが、人に見つかることは滅多ないからね。
   ニコパイや旅芸人たちが時々ここを通りかかるよ。ボクはずっと一人でここに
   暮らしている。」
かに「元々住み難い気候の島だからなぁ。」
南風「しかし、気候に悩まされ移住してきたあの島の人々、結局こちらの気候にも
   適応できなかったみたいだし、まさかボクの能力がこんな形で開花しているとは
   知らないまま滅んで行ったんだろうな…」
かに「因果応報かねぇ」
シヴァ谷「我々が魔力を授かって生まれ、そこに属性という自然の力との相性がある以上
     自然界とは切っても切り離せないはずですし、その強大な自然の力に
     歯向かったりして、寄り添う生き方を選べないのであれば、
     自然淘汰されてしまうということの表れなのかもしれませんね。」
かに「俺の場合は水属性の魔力を使って水を使った攻撃や防御魔法を繰り出せるわけだけど、
   ある程度近くに水がなければ魔力の源も絶たれてさっきみたいに弱ってしまう。
   南風の場合はちょっとそれとは違ってね。遠くから水を呼び寄せて、雨にして
   降らせることができる。」
南風「ただし、降らせるということしかできないから魔法攻撃や防御等には使いにくいんだ」
かに「操るにも、お互い自在じゃないのさ。」
南風「勇者せらは何の能力が使えるの?」
せら「僕は、無属性だっていわれました。」
南風「何それ何もできないってこと?」
かに「そうだな。」
南風「うわ!つかえねえ!」


オアシスの夜は更けて行った。

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今日の登場人物

南風(なむふぉん):任意に雨を降らせる雨乞い師。見た目は少年だが年齢は大人。



文:(V)・∀・(V)
原案:蟹Projects