陽気な海賊ニコパイレーツたちの買出しがすべて終わると、せらのパーティも一緒に
船に乗り込んでいよいよ出航のときが近づいた。

桟橋には風伯だけが見送りに来た。

風伯「どやさんたちも行こうかとは話してたんですけど、
   寝坊ですかね〜。アフター5は皆かにみそ鍋でバイトですけど、
   そこまでの日中の時間は自由なわけなんで、どうしてるのかちょっとわからないんですが。」


船がいかりを揚げた時、せらは住み慣れた街に心の中で別れを告げた。
きっともう帰って来られないんだろうな、と思ったからだ。


海へ出る前に、こたねと前菜が船の中を案内してくれた。
広い船なので、せらたち4人が増えてもスペースに不足はなかった。

ニコパイレーツは7人、せらのパーティは4人。
初対面が多いので、改めて互いに自己紹介をした。
せらにとっては全員が昨日今日出逢った人だ…。
かにぱん。はぷちまりもに言葉を教えることに熱心なようだ。
汽車が変態用語を教え込もうとするので、必死にそれをやめさせようとしていた。

せら「ところで、梨姫しゃんって、なんの動物なんですか?」
かに「しらねぇ。」
せら「知らないんだ…」
かに「2年くらい前に雪が積もってる寒〜い島へ行ったんだよ。
   そんときにさ、毛皮にしようと思って捕まえた。」
梨姫「!!?」
かに「結局毛皮にはしなかったけどな。」
せら「そうなのか…」
梨姫「;;;;」
かに「嘘だけどな。」
梨姫「…!」
せら「ええーっ」
かに「なんか懐いて来たから拾って帰って来たってだけだよ。
   こいつには海の上は暑いかもしれないが。」
せら「それより今の一連の流れのせいで、寿命が縮まったっぽいですけど…」
かに「犬の一種じゃねぇかな?」
せら(話聞いてるのかな…!)


海に出ると、海獣と呼ばれる海にだけ生息するモンスターが時折甲板に上がってきた。
海洋生物に凶悪な外見と性格を付け足したような生き物たちだ。

せら「モンスターです! 皆さん、戦闘の準備を!!」
、「せらさん!」
せら「何!?」
、「海老と、バジルの、相性はやばい!!(良い意味で)」
せら「今はそれはどうでもいいよ!!」
、「どうでもいい、だと!?」
せら「あ、いや、そういうことじゃなくって!!」
海獣(…仲間割れ…?)

しかし、そのときニコパイレーツが船室から飛び出してきた。
てっきり一緒に戦うのかと思いきや、彼らはおもむろに歌い始めた。

すると、海獣たちは心が洗われて海へ帰って行った。


前菜「海の中は音が届きにくい世界でしょう? だから彼らは音楽を知らないのよ。」
オメがん「大抵は歌ってやればイチコロだ! 戦う必要はあまりないのさ。」
だっしゅ「勿論、それでダメなときは、徹底的にボコボコにしてやるがな! HAHAHA!」

かに「島が見えたぞー!!!!」

見張り台からかにぱん。が叫んだ。

こたね「近いとはいえ、海の気候は変わりやすいわ。ここまで晴天でほんとよかった。」
前菜「目的地まで、あと15分というところね。」
汽車「んじゃ、ちょっくら速度を上げるぜ!」
ぷちまりも「いやはや、いい天気ですなっ」


ほどなくしてせらの目にも島の形がはっきりと見えてきた。
それは丸いドーム状の島だった。

前菜「ドームに見えるけど、実際はカプセル、球体に近いわね。
   海面の下にあと半分が沈んでいるのを想像してみたらいいわ。」

せらたちは丸い島に着いた。
港に着くと、島の人々が迎えてくれたが、それは丸くて小さくて青紫で頭のてっぺんから
一本だけ長い毛の生えた人々だった。
よくよく見ないと見分けがつかないが、顔の表情に少し個性があるように見えた。
しかし見分けるのはかなり難しい。

かに「久しぶりー! 新しい勇者らしいぞ!! なんか面白そうなパーティだったから
   連れてきちゃったよ! 昨日マリオ王国で結成されたらしい」
丸い人A「こんなにすんなりここにたどり着いちゃうなんて初めてじゃないかな。
     かにぱん。さんが率先して連れてくるのも珍しいね〜。」
かに「なんか見るからにダメそうだったもんで!!あはは!!」
丸い人A「それはそれで切り捨ててきそうだけども」

せら「あ、はじめまして。せらと申します。」
丸い人A「あ、はじめまして。丸い人です〜。」
せら「丸い人さんですか。ふつつかものですがヨロシクお願いします。」
丸い人A「丸い人の中でも少し角ばっているボクがこの島の長老です〜。
     わからないことは、なんでもどうぞボクに聞いてください。」
せら「ありがとうございます。」

丸い人B「あ、丸い人です〜。はじめまして。」
せら「あ、はじめましてー。せらと申します。」
丸い人B「丸い人はあまり個体を意識しないので、名前がなくてごめんなさい。」

丸い人はぺこりと頭を下げてお辞儀した。

せら「うーん、じゃあたとえば”この丸い人さんじゃなくてこの丸い人さんに用がある”
   というときはどう呼べばいいんだろう…」
丸い人B「用件を先に言っていただくのがいいですね!
     教えて!丸い人、とか、ご飯作って!丸い人、とか。」
せら「なるほど、からだをなおすどせいさん感覚ですね。」
丸い人B「多分それだね〜。」
丸い人C「何も言わずに”丸い人〜!”って呼んでしまうと…」

そのとき彼らは港で話していたが丸い人の家々が立ち並ぶ方向から
丸い人の大群がぞろぞろとやってきた。

丸い人C「こうなります〜。」

せらの足元では大量の丸い人たちが、何の用だろう?という眼差しで
せらや丸い人Cを見ていた。

せら「よくわかりました。」
丸い長老「用件を先に言ってもらえれば、それを聞いた丸い人の思考を通じて
     最も適した丸い人が用件をこなしに来てくれるよ〜。
     ボクたちの思考は一つに繋がっているんです。だから個体を名前で意識しないんだね〜。」
かに「とりあえず長老の家にお邪魔しようぜ!」
丸い長老「そうだね〜。魔王のことが知りたいと思うし、ひとまずそれについてお話ししよう〜。」
ぷちまりも「いやはや、いい天気ですなっ」

せらたち11人は、長老宅へ向かった。
とはいえ、小さな丸い人たちの家に普通の人間はしゃがんだところで入れそうにない。
長老は、家の前の広場でせらたちに少し待つように言った。

長老は家の中で何かのスイッチを押したらしく、大小2つの団子が重なったような長老の家が
人間の入れるサイズにむくむくと膨らんだ。

せらたちは中へ招き入れられダイニングの丸いクッションソファーに腰掛けた。

丸い長老「実は、マリ王や魔王は、この通信機を使ってアクセスできる架空の集会所のようなところで
     時折会話をしているんだ。魔王も勇者と同じく世界中の王の中から選出され、それ以外の
     王は自分の国の国民の中からその魔王を退治する勇者を選出しなければいけないルール。
     退治といっても殺して来いってことではないよ。国際交流の一つだから〜。」
せら「国際交流なのか…」
丸い長老「それで、王様たちの架空の集会所を覗ける専用通信機がこれだね〜。
     ボクは王様ではないんだけど…どうしてこれがここにあるかというと、
     実は、この島にも昔王国があったんだけど、王族たちは度重なる高波の被害に苦しんで
     島を出て行っちゃったの。その頃この島にはドームがなかったから。
     ボクたちは当時から一緒に住ませてもらっていたけど、元々ここにあった王国が
     なくなるときに通信機を授かって、そのあとにドームを作る技術を開発して島を
     球体の中にすっぽり包み込むことで高波の被害をほぼなくすことに成功したんだ〜。」
せら「なるほど。」
丸い長老「この島にあった王国の王族はここから南西の砂漠の島に移住して、
     どうやらそこに元々あった王国を乗っ取ってしまったみたい…。
     結局食料難に遭って国は続かなかったそうだけどね〜。砂漠の島には今、国はないよ。」
シヴァ谷「もしかして、”幻の大都市まぐなかるた”と関係が…?」
丸い長老「おおっ、ご存知だった!
     まぐなかるたは、砂漠の島に元々あった大帝国なんだ〜。
     そしてそのまぐなかるたを乗っ取ったのが、元この島にいた王国の最後の王族たちですね〜。」
シヴァ谷「なるほど…。そんなことが。まぐなかるたは巨大な砂嵐で城や城下町ごと埋まったものと
     考えられていて、私もてっきりその説が有力だと思っていました。」
前菜「実際に城も城下町も砂に埋もれていたわ。けれどそれが原因で滅んだのではなく、
   帝国が滅んだことで管理が行き届かなくなって長い年月を経て埋もれていった、という
   順序のようね。」
シヴァ谷「もしこれからまぐなかるた遺跡へ行く必要があるのであれば、私の能力で
     砂を取り除くことは可能です。」
せら「ふむむ。。」

丸い長老「遠〜〜い昔むかしのお話でした〜。
     今では国際交流も進んで、定期的に魔王選出と勇者派遣をすることで
     各国は絆を深めているみたいだね〜。
     それぞれの国王は自分の国の勇者に魔王の場所のヒントをちょっとだけ出したり、
     船を貸したりすることが許されているけど、噂によるとマリ王はせらさんに
     あまり援助をしなかったみたいだね〜。
     昨日”その方が面白いじゃん!”みたいな発言を見かけた気がするし〜。」
せら「国際交流…」
丸い長老「じゃあ、この通信機を見て〜。魔王に選出されたものは”魔王専用アカウント”を
     引き継ぐから…”魔王”という名前で発言しているのが、現在の魔王だよ〜。」


せらは、通信機を受け取るとまず画面を見た。
チャットのように文字が並んでいる。

丸い長老「昨日から今日にかけてマリ王が魔王に場所を尋ねていたと思う〜。
     魔王は城にいる…としか書いていなかったから、元々の自分の国の城にいる、
     ということなのだと思うよ〜。」

せらは、十字ボタンを操作して発言の履歴を遡った。

せら「そうみたいですね…。ノンケなう☆ってなんだろう…。」
前菜「それは…良い漢(いいかん)王国の挨拶ね。」
せら「E缶!?」
前菜「カンはカンでも、オトコのほうよ。男だらけの国があるのよ。
   正確には…精神的に男女の差のようなものはあれど、外見はみんな”いい男”なの。」
せら「そ、そうなんだ…」
丸い長老「ということは、今の魔王は良い漢王国の国王が兼任しているってことになりそうだね〜。」
、「行ってみる価値はあるだろう。その良い漢王国とやらに。」
せら「そうだね。。」

丸い長老「良い漢王国の王様かー。確か今の王様は…冥属性の魔力の持ち主じゃなかったかな〜。」
シヴァ谷「冥…!!」
丸い長老「あらゆる属性への耐性が強いよ。良い漢王国に直行するよりは時間を食ってしまうけど、
     まぐなかるたへ寄るのはどうかな〜?」
、「なぜだ?」
丸い長老「実は、まぐなかるたの最後の英雄がまだ帝国の遺跡内に封印されていると聞くよ。
     もし封印を解いて協力を願えば、回り道をした分は魔王との戦闘で余裕で
     取り返せると思うよ。」
、「なるほど…。」
シヴァ谷「ここから南西へ、か…距離にもよりますが、ニコパイレーツが連れて行ってくれるのであれば…」
かに「そりゃ船のない勇者ご一行を連れてくって行ったんだから、魔王の国までは連れて行く
   つもりが最初からあるよ! それにまぐなかるたに寄るなら俺も古い友人に挨拶がしたい!」
、「なら、決まりだな。」

せらたちは、まぐなかるたへ寄り砂漠の遺跡の中から過去の英雄の力を解放することを目指すこととなった。

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今日の登場人物

丸い人 丸い人の村に住んでいる小さい人々。丸い。せらに協力的。



文:(V)・∀・(V)
原案:蟹Projects