前回までのあらすじ。
海老のことになると見境がなくなる天むすをうっかり怒らせた海老嫌いのせら。
居酒屋かにみそ鍋のバイト衆が力づくで騒ぎの収拾にあたり、
せらと天むすは、不本意ながらパーティ編成をするハメになった。


そして――

みそ「じゃあ、そういうことで頑張ってね」

かにみそはにっこりと微笑んだが、せらは怯えていた。
昨晩の出来事で、天むすが降らせた隕石によりかにみそ鍋の建物には損傷が残り、
その賠償責任はせらと天むすにあるとされた。

二人はすでにパーティ契約を結んだことになっていたし、かにみそは加えて
‥径粟でキレると我を忘れる天むすの見張り役としてのシヴァ谷(地属性)
■裡丕辰里廚舛泙蠅
をパーティメンバーに抜擢し、4人の連携で店の修理代を稼ぎがてら旅に出るよう指示した。

せら(みそさん、今、目が笑ってなかったなぁ…)


せら「ぷちまりもさん、はじめまして、せらと申します。よろしくお願いします!」
ぷちまりも「ここは、大衆居酒屋かにみそ鍋です。荒くれ者のたまり場ですなっ!」
せら「え、えーと…ぷちまりもさんは、どういう能力を使う人ですか」
ぷちまりも「ここは、大衆居酒屋かにみそ鍋です。荒くれ者のたまり場ですなっ!」
せら「…」

、「まりもさんはNPCだって言っただろ? ノンプレイヤーキャラクターだよ、
  人格とかはない。まぁ、育成型AIが組まれているらしいから一緒に旅をするうちに
  少しは学習をするのかもしれないが、今は人間的な会話は諦めろ。」
せら「そ、そうか… 僕もBOTとか言われてるから、逆にうまくかみ合うかと思ったけど…」
シヴァ谷「ちなみに、今せらさんがしていた質問の答えを私が代わりにするとすれば、
     ぷちまりもさんは魔法属性を持ちません。彼はNPCで、生身の人間とは違いますから
     魔力を生まれ持っていません。その分物理攻撃や物理防御にかなり特化しています。」
せら「なるほどぉ…。見るからに強そうですしね。どこが”ぷち”で”まりも”なのだろう…」
ぷちまりも「ここは、大衆居酒屋かにみそ鍋です。荒くれ者のたまり場ですなっ!」
シヴァ谷「こういったNPCは量産されて国の要人のSPとして配備されたりしています。
     ただ、勇者のパーティに加わるというのは前代未聞かもしれませんね。」
せら「そうなんだ。。」
シヴァ谷「無属性の勇者にNPCのパーティメンバー。
     一体どうなることやら。私は楽しみですけどね!」

、「ところで、どうするんだ? これから先。まず魔王がどこに行けばいるのかとか、
  倒すために何か必要なものがないかとか、そういうことがわからないと
  出発もできないじゃないか」
シヴァ谷「そうですね、魔王の所在地は代々変わりますからその都度リサーチが必要ですし、
     勿論対策についても同様…。マリ王が魔王のことはよくわからないと仰っていたと
     せらさんが言っていましたよね? しかし、通常勇者を選抜する国王は
     魔王のことも少なからず知っているはずなのです。もう一度マリ王のところへ行ってみましょう。
     せらさんがパーティを組んだことで、何か新しい情報がもたらされるかもわかりません。」

4人はマリ王の城へやってきた。

ぷちまりも「ここは、マリオ王の城ですなっ!」
せら(もしかしてぷちまりもさんって道しるべに使えるんじゃ…)

マリ王「あ、せらさんじゃん。何してるの?」

応接間でせらパーティが待たされていると、王室と逆の方向からマリ王がやってきた。
その後ろにはぷちまりもさんが、いや、ぷちまりもさんと全く同じ外見のNPCが侍っている。
これがおそらくSP用NPCなのであろう。

せら「あ、マリオさん、僕一応パーティ組んだからね、魔王っていうのがどこに行けば退治できるのか
   詳しく聞けたら聞こうと思って…じゃないとどこへ行けばいいのか」
マリ王「ええ!? 本当にパーティ組んだんだ!? あはははは!! あはははははは! お腹痛い!!」
せら「今、そんなに面白いとこ!?」
マリ王「魔王は少なくともこの島にはいないから島からとりあえず出なよ。」
せら「なにその追放宣言っぽいの!」
マリ王「どうせこの島にはこの国しかないんだし、魔王が近くにいないことは確かだよ。
    魔王っていうのはもっと遠いところにいるものなんだ。」
せら「そうなんだ。ところでマリオさん、僕はあとどのくらいの経験値で次のレベルにあがるの?」
マリ王「はぁ? 知らないよそんなの。なんで僕に聞くんだよ。そもそもせらさん、レベルとか上がるの?」
せら「ええっ!? あがんないの!? 王様ってそういうの知ってるんじゃないの?」
マリ王「えー、知らない。あがんないんじゃない?」

SP「陛下、昼食が冷めます」
マリ王「あ、そうか。もう行くよ、せらさん。」
せら「あ! まりもさんがしゃべった! すごい!!」
マリ王「え? ああ、このSPはちゃんと調教が済んでるからね。
    せらさんもパーティメンバーのぷちまりもさんをちゃんと育てなよ。じゃあね。
    え、船とか用意してないから、テキトーにやって。」

マリ王は王室へ戻って行った。


せら「魔王が遠くにいる、ということしかわからなかった…」

せらの頭上に「ガーーン」という文字が見えるようだった。

、「とりあえず島を出て情報収集しかなさそうだなぁ。」
シヴァ谷「まぁそういうのは得意分野なので、なんとかしましょう。」
ぷちまりも「ここは、マリオ王の城ですなっ!」


この島は外周をぐるっと森に囲まれた暖かい小さな島国で、島の中心にマリ王の城、その周辺に城下町、
その外側は小さな集落がいくつかあるもののほとんどが森林で、その更に外側は海だ。
島の南側に一つだけ港があった。

せら一行は港へ行き船を捜すことにした。
港の近くには、漁業や造船などをを生業にする人々の集落があった。


せら(このあたりにはあまり来たことがなかったなあ…いままで縁がなかった)

桟橋近くで周囲を窺っていると、ひときわ大きな船からぞろぞろと人が降りてきた。
しかしその船は漁船でも客船でもなさそうだ。

「海賊がきたぞー!!!」

それを見た漁師が互いに声を掛け合って警戒を促し始めた。
よく見れば船にはドクロの…いや、蟹のマークの旗が掲げられていた。

せら「か、海賊? あの人たちが!? 先頭は女の人だよ!?
   それに、旗には蟹の絵が… 蟹漁船じゃないの!?」
シヴァ谷「海賊は何をしでかすかわかりませんよ、戦闘の心積もりを!」
、「このパーティでの初の戦闘が海賊相手になるとはねぇ…!」

海賊船長「なんなの、お前たち。どいてくれない? ちょっと食料調達に来ただけなんだから。」
せら「ご、強奪とかするつもりですか!」
海賊船長「強奪? 何言ってるんだ?」

せらたちの後ろから漁港の人たちが集まってきた。
せらは、自分より漁港の漁師たちの方が体力的に有利な気がしたが、なるべくなら
こんなところで人々に血を流して欲しくはなかったので、可能な限り踏ん張ってみようと思った。

しかし――

漁師「今朝獲れたマグロですがどうでしょう!」
漁師「珍しく蟹が獲れたのでこれはと思って確保しておきました!」

漁師たちは目にも留まらぬ速さで、桟橋の近くに小さな市場を作った。

漁師「おお、旅の人たち、この海賊の人らはニコパイレーツといって、ここらへんの海の
   治安を守ってくれてる。時々食料を買い込みにこの島へ上陸するんだ。
   そんときには、たっくさん買ってってくれるからよう、俺たちも新鮮な魚や干物を
   めいっぱい用意して、ほら! こんな風にじっくり見ていってもらうのさー」

せらはあっけにとられた。

シヴァ谷「どうやら平和的な海賊のようですね。」

天むすは抜きかけていた剣をカチャリと鞘に収めた。

海賊船長「俺はかにぱん。っていうんだ。ニコパイレーツの船長を務めている。
     お前たちは…はぁ〜ん、見た感じ、勇者ご一行様といったところか?
     今までに見てきたのとはだいぶワケが違ってそうだが。」
シヴァ谷「そうですね。私も自分でパーティにいながらにしてアレですが、
     今までに見てきた勇者ご一行様とはちょっと異なる要素がいくつか…。」

かにぱん。と名乗る船長は、どう見ても女性なのだが、口調はまるで男だった。

かに「おーい、だっしゅー!」
だっしゅ「おーなになにー? 面白い話ー?」

かにぱん。がだっしゅという男を呼ぶと、筋肉の美しい男が目を輝かせながらこちらへやってきた。

かに「新しい勇者様らしいぞ。」
だっしゅ「へー! 今度は剣士かい。」

かにぱん。は天むすを指差していた。
天むすが焦って手と首を忙しく横に振りながら否定した。

、「いや、僕はっ…一度は目指したこともありますが…今回はあくまでパーティメンバーの一員。
  勇者は、こっちの…」
せら「あ、僕、デス。。」

かに・だっしゅ「へ?」

かに「え、勇者こっちなの?」
シヴァ谷「そっちなんです。」
だっしゅ「こっちなのか…」
せら「あ、こっちでスミマセン…」
かに「そりゃさぞかし…何かふか〜〜いワケがあるんだろうな…」
せら「あ、ハイ。まぁ…。」


そのとき、漁師たちと談笑していた他の海賊メンバーたちが呼ぶ声がした。

海賊団員A「船長ー! 海老安いってー! 買っとくー?」
かにぱん。「買っといてー!!」
海賊団員A「あいあーい」
、(海老だと…!!?)

かに「今のは航海士のこたねっていうんだ。こいつは、副船長のだっしゅ。
   あっちにいる女性が前菜っていう考古学者で、情報通。
   その足元のがペットの梨姫しゃん。えーと…ああ、こたねちんの横で食材抱えてんのが
   コックのオメがんだな。船大工の汽車ってやつもいるんだが、多分今造船所のほうへ行ってる。」
せら「ほう。」
かに「で、今回の勇者ご一行様はどういったパーティメンバーで?」


せらはたどたどしい口調でこれまでの経緯を説明した。

かに「そうかー。ならさーとりあえずうちの船に乗ってみなよ! 楽しいしさ!!
   魔王のことに詳しい種族が暮らしてる島へ連れてってやるよ!!
   そいつらに聞けば、魔王の牙城がどこなのかーとか、これだけは持っていくべき!とか、
   教えてくれっから!」
せら「えー、ほんとにー!」
かに「ほんとほんと!! 多分あいつらこの星の生き物じゃないんだろうなー。
   センサーからして違ってる… まぁとにかく、そこに行ってみれば、次にどうするかもわかるよ!」
せら「やったー」
かに「その代わり…もし海上で別の船に会ったときには、捕虜のフリをしてもらうぜ」
せら「え・・・」


せら一行は、ひとまず親切な海賊の船に乗せてもらうことになった。


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今日の登場人物

ぷちまりも 魔力・魔術とは無縁。物理属性。NPCなので応答が一辺倒。パーティメンバー。

かにぱん。 世界の海をまたにかけるニコパイレーツの船長 水属性
だっしゅ ニコパイレーツの副船長
こたね ニコパイレーツの航海士
汽車 ニコパイレーツの船大工 無双力(むそりき)の持ち主
オメがん ニコパイレーツのコック 
前菜 ニコパイレーツの考古学者にして諜報担当 
梨姫 ニコパイレーツのペット 



文:(V)・∀・(V)
原案:蟹Projects